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責任
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黄 _ 、
高校二年生の冬のある日、学校があったその日の放課後、俺は恋人に呼び出された 。
珍しいなとほんの少しの疑問が湧いたがあまり気にも留めなかった 。
17時になって教室に生徒は恋人と俺以外誰もいなかった 。
冬であるからかその時間には空に紺の暗闇が落ちてきていて 、窓からさしてくる微かな太陽光の下に彼は静かに佇んでいた 。
俺を見る桜色の目は濁っていて、光は灯っていなかった 。
その姿に何処となく違和感を感じた 。
黄『 らんらん ? どしたん ? 』
俺が問い掛けてもなにも反応がなく 、近付いても微動だにしなかった 。
先程まで感じていた違和感が明確なものになっていく 。
桃『 妊娠した 。 』
突然放たれたその言葉に俺は酷く動揺した。
混乱と焦り 、自責の念などが俺の頭の中に混在し 、今の彼に何を言えばいいのかわからなくなった 。
中絶は苦しいと聞く 、それを軽々しく言っていいものか 、それとも謝罪?それこそ相手の怒りを駆り立てるだけだ 。
黄( あれ 、今 、俺 、自分 の こと 考えてる ? )
そのことに気付いてしまった 。
俺は今 、自分が責められるのが怖く思っている 。
自分勝手で、相手のことを何も考えていない 。
それに気付いた瞬間 、言葉がでなくなってしまった 。
どんな顔をしていたのかわからない 、でも俺は酷い顔をしていたのだろう 。
桃『 もういいよ 、大丈夫 。 』
黄『 え っ 。 』
桃『 みこと は みこと の 人生 を 生きて 、これは 俺 の 責任だよ 。 』
黄『 そんなことない っ ! 』
手を握ったが、その手は振り解かれてしまった 。
その時の彼の顔は今でも鮮明に思い出せる。
でも思い出したくない 、苦しくなってしまうから 。
桃『 ごめん 、ッ 。 』
彼は逃げるようにその場を去ってしまった
俺は呆然と立ち尽くすことしかできなかった 。
ここで追い掛けていたら 、まだ変えられることがあったかもしれないのに 。
翌日から彼は学校に来なくなった 。
数日後彼は学校を自主退学した 。
連絡先も絶たれてしまい 、家に行っても相手にしてくれなかった 。
俺はバイト代をはたいて月に数万円程彼宛に送った 。
これで許されるとは思っていないが 、しないよりかはした方が彼の為になるだろう 。
_
25歳の冬 、その頃には就職もして 、英語が得意だったから外資系の会社に勤めた 。
俺は今でも彼にお金を送っている 。
就職に成功したため 、今では月に十何万円程度だ 。
それで彼が少しでも助かっているのなら本望だ 。
黄『 疲れた … 、 』
仕事帰り、いつも通る公園に立ち寄った。
子供達は既に家に帰った頃だろうか 、あの時と同じく紺色の暗闇が二月の空に広がっていっている 。
ブランコに腰掛け 、足を揺らしてブランコを動かす 。
息を吐くと水蒸気が冷やされ 、霧が出来た 。
黄『 寒いな 。 』
_『 俺 も だよ 。 』
突然幼い声が俺の耳に入ってきて 、驚いて勢いに任せそちらの方向に顔を向けた 。
そこに居たのは黒のマフラーをつけて 、同じく黒の手袋を付けている手で木の枝を持っている少年だった 。
その枝で地面に絵を描いていた少年は俺に似た顔立ちをしていた 。
黄『 僕 、家 帰らないん ? 』
_『 お母さん 怒らせちゃった 。 』
黄『 なんで ? 』
_『 宿題やらず に 絵 描いてるから 』
黄『 うん 、それはやらんといけんね 』
_『 … ごもっとも 。 』
しゃがんでいた少年は足の間に顔を入れて 、少し目を逸らす素振りをする少年 。
俺もそんなことがあったなと思い出しに耽った 。
それから黙って手を動かしていた少年の目線の先を見てみると見知った顔が地面に描かれていた 。
彼だ 。
子供の絵であっても特徴はちゃんと掴んでいる 。
何より 、色がなくても分かる 、耳飾り 。
黄『 これ 、誰なの ? 』
_『 … 母さん 。 』
黄『 耳飾り 、あんまみないね 。 』
_『 俺 が 産まれた時 から 付けてたって聞いたの 。 』
黄『 … そうなんやね 。 』
忘れる筈がない、不器用ではあるが似合うデザインを考えて時間を掛けて作った耳飾り。
彼にあげたら心の底から喜んでくれたということ、誰よりも綺麗な笑顔をしてそんな姿を見て俺は顔を紅潮させてしまった。
そのことを揶揄われた、今でも思い出せる程記憶に刻まれていた。
黄『 … お父さん は ? 』
_『 え 、 』
知らない人間に家族構成を聞かれると流石の子供でも違和感を覚えるだろう。
案の定、少年はわかりやすく顔を顰めた。
_『 … その前 に お兄さん の 名前 とか 、教えてよ 。他 に なにしてるとか 。 』
黄『 ぇっと 、俺 は 誠皇 命 。一応 今 25歳 、外国 とか の 仕事してるんよ 、今 は 仕事帰り 。歩く の 疲れちゃったから 此処 で 休憩中 。 』
翠『 … すごぃね 、… 俺 は 桜甘 桜智 。7歳 。 』
黄『 よろしくね 、すち … くん ? 』
翠『 こちらこそ 、みことさん 。 』
ぺこりと頭を下げて真紅の瞳を揺らし、頬を少々赤らめ俺に向けて微笑んでくれた。
俺はその微笑みに見覚えがあった。
桜甘 蘭 、彼だ 。
苗字も仕草も顔以外の全てが似ている。
顔は、俺とそっくりだ。
_『 すち ! 』
脳内にこびり付いていたあの声が響いた。
走ったのか、息遣いが荒く、目の前の少年の名を呼んでいた。
丁度八年前のこの日、俺の前から走り去っていった彼が目の前にいた。
あの時と殆ど変わらない姿、窶れても、かといって活発そうでもない。
なにも変わっていないその姿、今でも大好きで思い出さなかったことなどない、彼。
黄『 らんらん ? 』
桃『 みこと … 。 』
桜色の瞳が俺を映し出した。
翠『 … お母さん ? この人 っ 、 』
桃『 行くよ 、夜ご飯出来てるから 』
すちくんの腕を引っ張って早々と彼はその場を去ろうとした。
黄『 らんらん ! 』
黄『 … あの時 、ごめん 。 』
一瞬足を止めた彼だったが、すぐに気を取り直して足を進めた。
でも、少し安心したかもしれない。
彼は左手に何も付けていなかった。指輪も、なにも。
右手には俺が彼の誕生日にあげた婚約指輪がまだはまっていた。
見覚えのある、彼の瞳と同じ色の宝石が埋め込まれた婚約指輪。
沢山バイトを頑張って、貯めたお金を予算に彼が喜んでくれたら嬉しいなどと軽はずみに考えていた。
高価な物は買えなかったけどいつかもっとお金が貯まったら透き通った誰が見たって綺麗なダイヤモンドが付いた指輪を渡したかった。
もうそれだって叶わない夢物語であるにも関わらず、
黄( 俺 、まだ 諦めてなかったんや ぁ … 。 )
黄「 情けないな 。 」
頭を掻き毟ってあの頃より大きくなった手で顔を覆う。
後悔をしても無駄だということなんて理解している筈なのに、
彼を苦しめた以上、俺は彼を愛すことは許されないのに
黄『 まだ 好きやな ぁ … 。 』
そんな届かない言葉を地面に向かって吐いた。
_
桃 _ 、
久しぶりにみことと会った。
八年前の冬、すちを身籠って一ヶ月程して隠し通せないと確信し、俺はみことに打ち明けた。
みことは顔を歪めた。
そりゃそうだ、こんなこと言われたら心底嫌な気持ちになるだろう。
でも 、
桃( そんな顔 しなくてもいいじゃん … 。 )
俺はまだ子供だった。
子供心にそう思った。
でも俺は身籠ったこの命を捨てようとは思わない。
みことと離れても、この子を産んでちゃんと育てる。
俺のそんな身勝手な思いをみことに押し付ける訳にはいかない。
みことにはみことの人生を生きて欲しい。
桃『 ごめん 、ッ 。 』
その言葉しか残せなかった。
本当に俺は自分勝手だ。
_
数ヶ月後 、俺はすちを産んだ。
早産で男性出産であったから、難産になった。
でもちゃんと産まれてきてくれた。
俺の腕の中ですやすやと天使のように眠っていた。
その男の子に俺は『 すち 』と名付けた。
俺の苗字から少し取って、俺と違い賢い子に育ってほしい。
ちゃんとした人生を送ってほしい。
_『 みことくん は どうするの ? 』
_『 お金 、毎月 送ってくれてるわよ 』
桃『 … いいよ 、迷惑かけちゃう 。 』
桃『 お金 の 仕送り 、もう大丈夫って 伝えといてよ 』
桃『 俺 は 大丈夫だから 。 』
母さんには心配をかけた。
とても申し訳なく感じた。
姉さんにも手伝って貰って慌しかったが楽しく子育てをすることができた。
我儘を言えばその場にみことがいて欲しかった。
でもみことにはそれはきっと迷惑だ。
_『 らん 、みことくん まだ 送ってきてくれてるよ 』
桃『 良いって 何回 も 言ったんだけどな … 。 』
姉さんにそう言われ、苦笑いでそう答えた。
みことからのお金は使わず貯め続けているが、お言葉に甘えて少しは使ってみようかな、と思うようになってきた。
桃『 すち ! ちょっと っ 、絵 描かないで 宿題やりなさい! 』
7歳になったすちに今日もまた怒鳴ってしまった。
俺は絵を描いていることを責めてるんじゃない、宿題をしないことに責めているんだ。
だけど子供には絵を否定されたと感じられたのだろうか、すちはそのまま外に出てしまった。
日が落ち始めていたから俺は必死になってすちを探した。
そして見つけた。
すちはみことと居た。
黄『 らんらん ? 』
桃『 みこと っ 、? 』
見覚えのある黄金の瞳だった。
翠『 … お母さん ? この人 っ 、 』
桃『 行くよ 、夜ご飯出来てるから 』
なにも言えなくて俺は早々とその場から走り去ろうとした。
黄『 らんらん ! 』
黄『 … あの時 、ごめん 。 』
後ろでそんな言葉が聞こえた。
なにもいえなかった。
_
翠『 お母さん ? どうしたの 。 』
桃「 ごめんなさ ぃ 、ごめんなさ ぃ … 」
家に帰ってきた途端俺は玄関で蹲み込んで顔を隠した。
桃( 言わせちゃった。あの言葉。みことはなにも悪くないのに。 )
翠『 あの人 、お父さんなの? 』
桃『 ごめん 、ごめんね すち 。 』
翠『 お父さん なら 、また 会いたい … 。 』
桃『 それは … 、 』
すちには申し訳ないと思っている。
産まれた時から父親が居なくて母親の元で育てられる。
父親のことは事故で死んだと嘘を吐いた。
すちは今日それが嘘であったと知った。
母親に今まで嘘を吐かれていたことを、
でも
桃『 できない … 。 』
みことに迷惑はかけられない。
_
翠 _ .
お父さんは生きていたと知った翌日。
俺はいつも通り親戚のお兄さんの家に不法侵入した。
お兄さんは呆れながらも俺に温かい緑茶を差し出した。
_『 どしたん 。 』
翠『 、なっちゃん … 。 』
赫『 なつお兄さん と 呼べ 。 』
翠『 無理 。 』
赫『 最近 の 餓鬼って いうのは 生意気 だな 。 』
翠『 いて っ 。 』
俺がいつもの生意気な態度を取ったら長い指でデコピンをしてきた。
翠『 … お父さん と 会った 。 』
赫『 … … 。 』
その言葉を発したらなっちゃんは動きを止めた。
思わず視線を上げてなっちゃんの顔を見た。
少し怪訝そうな表情を浮かべて唇を噛んでいる。
理由はわかる。
翠『 なっちゃん は お母さん が 好きだもんね 。 』
翠『 嫉妬 ? 』
赫『 ちげ ぇ よ 。 』
わかりやすく機嫌を悪くさせたなっちゃん。
子供の俺よりもわかりやすいってどうなんだと思う。
翠『 … 俺 、お父さん に 似てる ? 』
赫『 あ − 、顔 が 父さん似 だな 。 』
翠『 そっか 。 』
翠『 お父さん と お母さん が 仲直り したら どう思う ? 』
赫『 らん が 幸せ に なるんなら いんじゃね 。 』
翠『 そう … 。 』
不器用 な 人 なんだろうな 。
ほんと に 俺 の 周り は みんな 不器用 だ
_
翠『 友達 と 遊んでくるね ! 』
桃『 うん 、いってらっしゃい 。 』
翠『 行ってきます ! 』
今日 も 俺 は そう嘘 を 吐いて 公園 へ 向かう 。
もう一度 あの人 に 会える こと を 願いながら 地面 に 絵 を 描く 。
あの人 と 似ている 顔立ち 、でも 俺 は まだ 本人 から 聞き取れていない 。
翠「 あの人 が お父さん か 。 」
ボソッと 呟く 。
黄『 そうだよ 。 』
目 の 前 から 突然 声 が 聞こえて 驚いて 腰 を 打った 。
黄『 あ 、ごめん ! 痛かったやんね 、怪我 とか しとらん ? 』
翠『 してない … 。 』
黄『 なら良かった 。( 微笑 』
その微笑みを見て、俺はあることを思い出した。
_
一年程まえのことだが、今でも鮮明に思い出せる。
翠『 お母さん は 好きなたいぷ とか あるの ? 』
沈黙を破って、俺はその疑問を口にした。
お母さんは一瞬放心状態になったけどすぐに強張っていた病気を戻して、水滴が残る皿を拭き始めた。
桃『 やけ に 突然 、ていうか タイプ とか どこ で 聞いたの 、最近 の 小学生 は ませてるね 。 』
お母さんはわかりやすく話を逸らした。
そのことに俺は少し腹を立てた。
翠『 なっちゃんから 、話 逸らさないで 、俺 答え が 聞きたいんだけど 。 』
桃『 なつ かよ … 、まあ いいよ 。 』
おっきな溜め息を吐いてから仕方がないように母さんは了承してくれた。
俺は嬉しくなって持っていたゲーム機を置いて台所にいる母さんのもとへ駆け寄った。
翠『 なっちゃん みたいな 人 が たいぷ ? 』
桃『 確か に あの性格 は 好きだよ 、でも ぉ … 。 』
翠『 でも ? 』
母さんは言葉を紡ぐ前に手を拭いてからしゃがんで俺と目線を合わせるようにする。
桃『 おっちょこちょい で 心配性 とか も 好きだな 。なんていうの ? 天然 って感じで 。( 笑 』
目尻を下げて、でも少し悲しそうに言った。
翠『 そうなんだ 。 』
その言葉はなぜか俺の脳に刻み込まれたんだ。
_
この人のことを言っていたのかと今となっては当然のように理解できる。
黄『 ぁぅ え っ 、ごめんな ぁ ! 別 に 付け入る気 とか は ないんよ ! 誤解せんといてや ぁ っ !! 』
あたふた と 少し涙目 に なりながら その人 は 言った 。
おっちょこちょい 、心配性 … 。
お母さん も 諦めきれてないんだ 。
翠『 わかってるよ 、そんなこと しそうじゃないし 。 』
黄『 今 の 子 って すごいんやな ぁ … 、ませとる 。 』
お母さん と 言うこと も 似ている 。
気 が 合いそう 。
翠『 家 来て 。 』
黄『 ん ぇ !? 申し訳ないやん ! 突然 やったら 可哀想 やし 。 』
翠『 息子 の 我儘 聞いてくれないんだ 。( 涙目 』
黄『 は ぇ え ぇ … 、わかったよ ぉ … 。 』
翠『 よし 行くよ ~ 。 』
黄『 ぅえ っ 、さっきまで 泣きそうやったやん ! 最近 の 子 は そういう教育 受けとるんか !? 』
口煩い の も 問題 かも 。
_
黄 視点 、
おそらく 俺 の 息子 で ある すちくん が 家 に 来て欲しい と 言い出した 。
俺 は 正直 行きたくなかった 、らんらん を また 傷付けてしまうかもしれない 。
今度こそ 全部 失望 されてしまうかもしれない 。
だから 不安 だ 。
黄『 大丈夫 なん … ? 』
翠『 わかんない 、でも 話し合わなきゃ 解決 しないよ 。先生 が 言ってた 。 』
黄『 大人より 考え 真面 やん 。 』
俺 より も 大人っぽい 、俺 みたいな 自分勝手 で 人 の こと を 考えられない 奴 やない 。
この子 は 、らんらん に 育てられたから 、こんな に まとも に 育ったんだ 。
黄『 君 は 偉いね 、俺 より も ずっと 大人 や 。 』
翠『 ありがと … 。 』
黄( かわ ぇ ぇ な ぁ … 。 )
俺 は 子供 が 好きやから 、すちくん も 好き 。
らんらん の 子供 っていう 理由 も 勿論 あるんやろうけど 。
らんらん と 育てたかったな 。
翠『 着いたよ 。 』
黄『 ここって 、 』
_
黄『 此処 まだ 空き地 なんや 。 』
桃『 駅近 だし 色々 便利 なのにね 』
桃『 此処 に でっか ぃ 家 建ててみたいね 。 』
黄『 そやね 、お金 めっちゃ かかるやろうけどな ぁ 。 』
桃『 そりゃ ロ – ン よ 。 』
黄『 現実的 な … 。 』
_
覚えてる 。
そんな 他愛 の ない 言葉 を 交わした 。
俺 は やはり まだ 引き摺っているんだろうか 。
忘れられないんだ 。
翠『 ただいま ぁ 。 』
黄『 失礼 、します … 。 』
桃『 おかえ 、り … ? 』
桃『 は ? 』
リビング から 出て来た で あろう らんらん を 目 に した 。
らんらん は ついさっき まで 家事 を していたのか 指先 が ほんのり と 赤くなっていた 。
らんらん は 目 を 丸くさせて 俺 を 視界 に 収めた 。
明らか に 動揺 していた 様子 だった 。
翠『 俺 が 連れて来たの 、話 、しなきゃいけないでしょ ? 』
桃『 … ぁ 、ありがと 、すち は 自分 の 部屋 に 行っておいてくれる ? 』
翠『 わかった 。 』
すちくん は らんらん に 近付き 事情 を 説明した 。
らんらん は 戸惑いながら も すちくん に 指示 を 出した 。
それに すちくん は 快く承諾した 。
桃『 みこと は こっち に 来てくれる ? 』
黄『 ぁ 、うん … 。 』
らんらん は 俺 の 目 を しっかり と 見て リビング へと 案内してくれた 。
一つしかない ソファ に 俺 を 座らせて 暖かいお茶 を 差し出してくれた 。
らんらん は 少し距離 を 置いて ソファ に 座った 。
黄『 あの っ 、らんらん … 。ごめん … なさ ぃ 。 』
黄『 あの時 、責任 取れんくて 、らんらん に 一人 で 無理させちゃって … 。本当 に 御免なさい … 。 』
黄『 俺 、あの時 自分 の こと ばっか 考えてた 。らんらん の こと なんて 二の次 で 、本当 に 苦しかった と 思う 。 』
黄『 押し付けだと思う と 思う 、自己満足 やって 思うかも 、やけど 、これだけ は 言いたいんよ 。 』
黄『 ごめん … 。 』
らんらん の 顔 を 見ること が できなかった 。
どう思われるか 、どう感じるのか 、それを 俺 は 予想 なんて できるはずも なかった 。
申し訳なさしかなかった 。
桃『 いいよ 、もういい 。 』
らんらん は そう言って 重苦しそう に 言葉 を 紡いだ 。
桃『 呆れてるって訳じゃない 、みこと は 絶対 に 裏切らないって知ってた 。 』
桃『 子供心 に 俺 が 身勝手 に みこと の こと 、突き放して 、自分 の 意思 で あの子 を 産んだ 。 』
桃『 中絶 だって あの時点 では 出来た 。勿論 あの子 を 産んで から も 後悔 だって 沢山 あった 。 』
桃『 この八年 で 俺 も みこと も 色んなこと が あった 。でも あの時 から の 意思 は 変わんない 。 』
桃『 これ以上 迷惑 かけたくない 、だから 関わらないで欲しい 。もう 、忘れて欲しい 。 』
らんらん は 途切れ途切れ に そう言い切った 。
知ってた 、期待 したって 無駄 だ なんて そんなこと 知ってる 。
もう 俺 は 子供 じゃないんだから 。
諦めよう。
黄『 … らんらん 、泣いとるよ ? 』
黄『 なんで ? 』
俺 が らんらん の 頬 を 両手 で 優しく 持ち上げる と らんらん は 止める訳 でも なく 俺 の 腕 に 手 を 乗せた 。
俯いていた 顔 を 見た瞬間 に 俺 は 目 を 見開いた 。
悔しそうな苦しそうな表情 で 俺 を 見ていた 。
桃『 … 俺 、この八年 みこと の こと 忘れよう と した っ … 、もう 終わり に したかった … 。 』
らんらん は 大粒 の 涙 で 頬 を 濡らした
桃『 でも この街 、歩く度 に みこと の こと 思い出す っ … 、ずっと 、ずっと 一緒 だったから … 。 』
瞳 の 中 は 歪んでいたけど 、ただ 一点 を 見つめている 。
桃『 記憶 の 中 に ッ “! いつも お前 が いる ッ ! ゛』
怒り と 悲しみ に 満ちた 悲痛 で 弱々しい叫び だ 。
桃『 忘れたいのに 、っ … も ぅ 思い出さないように し よ ぉ って 誓った のに … !゛ 』
でも その叫び には まだ 微か な 希望 が 見えた 。
桃『 なんで っ … ゛、なんで ぇ … ッ ! ” 』
俺 は 涙 に 揺れた 桜色 の 瞳 を 捉えてしまった 。
大粒 の 真珠 の 流れ を 止める こと なんて 不可能 だ 。
黄『 ごめん … 、ごめんね … 、 』
涙 が 滲む 、らんらん の 大きな嗚咽 に 紛れて 俺 も 静かに でも 確かに 悲しみ や 悔しみ を 噛み締める 。
今 だけ は 抱き締める と いう 行為 を 許して欲しい 。
そうしない と 、いけない気 が した 。
リビング には 嗚咽 と らんらん が 俺 の 胸板 を 弱々しく 殴る 音 が こだました 。
人目 も 気 に せず に 泣きじゃくった らんらん を 俺 は 、ただ 抱き締めること しか 出来なかった 。
_
黄『 ごめんね 、らんらん 。( 撫 』
桃『 撫でないで 。 』
黄『 ぅ え っ 、ごめん … 。 』
らんらん は 泣き止んだかと思えば 俺 避けた 。
目尻 を こすって 俺 の こと を 見ようとしない 。
こうなるだろうと は 思っていたけど やはり 避けられる と なる と 少しばかり 悲しいものだ 。
黄『 らんらん 、そんな 目 擦っとったら 腫れちゃうで 。 』
桃『 ごめん … 。 』
黄『 もう関わらない 、約束する 。今まで ごめんね 。 』
桃「 ぁ … 、 」
俺 は これ以上 らんらん を 傷付けないためにも 、この場 を 立ち去ること に した
らんらん の 心 を 抉っちゃいけない 。
俺 は もう らんらん の 前 から 現れないべきなんだ 。
桃『 待って ッ ッ ゛! 』
俺 が ソファ から 立ち上がって 、
らんらんの前 から 立ち去ろうとしたら 、
らんらん が 今まで に ない力 で 俺 の 手 を 握ってきた 。
俺 は その行動 が 理解できなかった 。
黄『 え … 。 』
桃『 もう少し 、もう少しだけで いい 、から 。 』
桃『 ちょっとだけ 、もうちょっとだけ 、側 に いてほしい 。 』
涙 が 溢れそうだった 。
どれだけ 俺 は 諦め が 悪いのだろうか 。
もう諦めない と いけないのに 。
どうしても 、諦めること が できない 。
黄『 … いいよ 、らんらん … 。 』
だから 、俺 は また 縋るように らんらん に 近付いた 。
黄『 … … 、 』
桃『 ぁ … 。 』
黄『 ええかな … ? 』
優しく 指 を 絡ませて じっと らんらん と 目 を 合わせる 。
了承 を 求める と らんらん は 少し時間 を あけてから 、コクン と 首 を 縦 に 振った
身体 を 近寄せて 、背中 に 腕 を 回す 。
黄『 らんらん 。 』
黄『 ずっと … 、好きだったよ 。 』
桃『 … ぅ 、… 。 』
今でも 誰より も 愛してる くせ に 嘘 を 吐く 。
見えない枷 が これ以上 増えてしまわないように 。
桃『 俺 は … 。 』
桃『 好きだよ 。… 今でも 、 』
黄『 … 駄目やって 、… 。 』
黄『 諦められんくなってまうやんか … 。 』
お互い に 見つめあう 。
少し 、視界 が 歪んで らんらん の 顔 を ちゃんと 見ること が できない 。
黄『 好き … 、大好き 、… っ 。 』
黄『 愛してる … … 。 』
桃『 … 俺 も … 。 』
また 涙 を 流した 。
今回 は 二人 で 。
前 みたい に 、いや 、これから は 三人 で
幸せ に なるんだね 。
_
翠『 悔しいの ? 』
赫『 … んや 、らん が 幸せ だったらいい 。 』
翠『 … ぶきよ − 。 』
赫『 黙れ クソ餓鬼 。 』
翠『 んふ ふ … 、そ − なのかもね 。 』
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RUU
705
1,311
コメント
1件
8年の時を経て、すちくんという懸け橋ができたんですね…。らんらんが「なんで…!」と叫ぶところ、あの苦しさが痛いほど伝わってきました。最後のすちくんとなっちゃんのやり取りにほっこりしつつ、三人で幸せになってほしいと心から思いました。続きが気になります。