⚠病み注意
・メリーバッドエンド
幼い頃からずっと
俺の先を行く兄貴が嫌いだった。
俺よりも頭が良くて、俺よりも足が速くて、俺よりも人に好かれて、俺よりも人に愛されて。
そんな兄貴に愛情を注がれるのが嫌だった。構わないで欲しかった。周囲の人と同じように、俺を見捨てて欲しかった。
兄貴には好きな人がいるらしい。きっと兄貴なら告白すれば即OKだろう。いつも、夜になると俺の部屋にノックもせずに入って来たと思えば、そいつの惚気話を始めるのが日常。
笑顔が可愛くて、素直で、たまに天然で、強くて、でも守ってあげたくなるような子らしい。
幸せそうな顔をして語ってくる兄貴に対して俺はなんと言えばいい?兄貴ならきっと付き合えるから頑張れ、なんて思ってもいない応援の気持ちを伝えれば満足?
そんな最低な考えしか浮かばない自分がまた嫌で、俺は顔を机に伏せてこれ以上聞く気は無いという意志を見せる。
だって、引きつった笑顔なんて兄貴も見てて耐えられないだろ。…本当は自分が見られたくないだけなのにな。
兄貴は、眠たかったよな…、と呟いて俺に毛布をかけた後静かに扉を閉めて出ていった。
こうやって都合の良い解釈をしたり、善人ぶった気遣いをしてきたりする所も大っ嫌い。
俺の今までの幸せは全て兄貴に奪われてきた。それなのにまだ俺以上の幸せを求めるだなんて傲慢なんじゃないのか?
兄貴がそうしてきたように、俺も兄貴の幸せを奪い取りたい。それが俺の幸せになるから。
だから、兄貴の好きな人と言う存在が邪魔で邪魔で仕方なかった。
竜胆「兄貴」
俺は、珍しく自分から声をかけた。兄貴は自分の事を呼んでもらえたのが余程嬉しかったのか、ニマニマと気色の悪い笑顔をして腕を広げている。
竜胆「好きな人教えて」
俺はその事について知りたいだけ。名前を聞いたらすぐにこの場を離れてそいつの捜索を始め、殺すか俺が先に奪い取るかしようと思っていた。
でも、兄貴の口から出た名前は
蘭「…竜胆」
竜胆「…は?俺?」
一瞬、疑った。
でも兄貴の好きは多分本気なのだろうとすぐに分かった。今までずっと見続けてきたから、分かる。
男同士の、それも兄弟を好きになるなんておかしい。
だけど、俺の中にはそんな戸惑いも否定する気持ちも生まれなかった。だって、
兄貴は俺の事が好き
だったらさ、
“俺が”死ねば兄貴の幸せは崩れる…
そうでしょ?
バンッ…
竜胆「………は、?」
痛みがないと思って目を開けば、俺が自分に向けて撃った弾が兄貴の頭を貫いているのが見えた。
兄貴が俺を庇ったのだろう。
竜胆「何…してんだよ…?」
突然の出来事に、頭が真っ白になる。声も震えてしまって、上手く言葉を発する事も出来ない。
蘭「竜胆…怪我、無い?笑」
竜胆「…やめろって、最後まで…偽善者ぶってんじゃねぇよッ…!!!」
はー、はー、と浅い呼吸を繰り返している兄貴の頬を、涙が伝う。
蘭「なあ、竜胆… 」
蘭「大切な、弟を先に…死なせるわけ…ねぇだろ?」
竜胆「…!」
蘭「兄ちゃんはいつでも、弟を…守るもんだ。だから、な、?」
そう言って俺の顔に手を当ててニコッと笑い、
蘭「泣くな…竜胆…」
竜胆「っ…!」
ぽたぽたと俺から零れる涙が兄貴の顔を濡らす。ゆっくりと手が下に下がり、段々と兄貴から身体の体温が抜けていった。
竜胆「い…嫌だ、嫌だっ!!俺を置いてかないで…!!」
大嫌いだった。善人ぶった態度も、構ってくるのも、俺の先を行くのも。
大嫌いなはずだったのに…。
竜胆「兄ちゃん…俺も、好きだ…好きだったんだ…」
今まで俺を見てくれた人は兄貴しかいなかったから。兄貴だけが俺の救いだったから。俺は兄貴に好きな人が出来たと聞いて無意識に嫉妬してしまったのだろう。
俺の事だけ、見て欲しかったんだ…
俺はそっと口付けを落とし、兄貴の手に握られた銃口を自分の心臓に向け、引き金を引いた。
ドクドクと血が流れる。痛みなんて、無かった。
兄貴を横に寝かせ、その腕の中にもぞもぞと入って抱きつく。
竜胆「ずっと、ずっと一緒にいようね」
この日俺は、世界一の幸せ者になれた気がした。
息抜きに蘭竜の死ネタを書かせていただきました☺️
春蘭、今結構続き迷ってるのでもう少し待って下さると…💦
この蘭竜は春蘭の前菜のようなものだと思ってもらえれば!幸いです!!
コメント
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物語が、すっごい綺麗、