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何も思いつかない
前までは五月蝿い程に頭の中を
たくさんの文字が渦巻いていたと言うのに
私は小説家になるのが夢だった
大人になり、その夢は叶った
叶えた
初めは良かった
景色を見る度に色々な物語が浮かび
自由に言葉を綴る事が出来た
憧憬の想いを寄せたあの人に少しでも近付きたくて
色んな場所を巡り
言葉を紡いできた
この世界は素晴らしい景色で溢れている
この世にある単語では言い表すことなど出来ない程に綺麗で風光明媚だ
いつまでも、絶える事無くこの美景が続けばいいと願う
こう思ってしまう程美しかった
心など簡単に奪われてしまう程
それなのに、今や景色を見ただけでは言葉が浮かばない
どうしてしまったと言うのだ
なぜ
いや分かりきっている
分かっていながらも自問自答など我ながら悪趣味だ
どれ程自嘲しようと何も変わりはしない
私が犯した罪とやらは余程重いらしい
私は小説家になる事が夢だった
文才溢れる秀逸な人材の揃っている現在、目に留まる事無く埋もれてしまう私の作品
例え世界に見られずともごく少数の人は見てくれていた
私の作品を楽しみにしていると言ってくれた
だから私は書かなければいけない
何よりも私が作りたいのだ、物語を
だから記憶があるうちに書いてしまわねば
小説家は頭が大事だ
言葉を創る、言葉を知る、言葉を表す
それらも大切な事
けれど、それも正常な脳があってこそ
脳に後遺症を患った私にはさほど重要では無い
私が今1番大事にしている事は記憶
つまり覚えておくこと
後遺症を患ってしまったから何だと言うのだ
その事実に抗いこの世に1つの作品を生み出すことが私の仕事だ
担当の者にも長い間迷惑をかけた
だから少しの記憶しか覚えていられないこの脳をフルに動かして覚えられる範囲で覚えておく
メモに書き残すなり、ボイスレコーダーでも使って記録するなり手段はいくらでもある
私は諦めない
死んだ後も書いてやる
みなが望む清絶高妙な作品を