これは、とある少女のお話。
ふぁ~。
あくび出ちゃった。でも、もうちょいで授業終わるから、我慢我慢。そう自分に言い聞かせる。
と、体操着のポケットに入っている、「持ってきてはいけないもの」が、ブーブー振動した。
えー、今か。今は私の大好きな先生、野坂先生の、社会の授業中だ。あんまり席をはずしたくないんだけど、しょーがない。私は先生のところへ行って、「お腹が痛いからトイレへ」という手口で教室を離れる。近くの調理室に入って、ポケットに入っている振動の正体ー--スマホを手に取り、電話に出る。この時点で私は、本性の私と入れ替わる。
「もしもーし、原田さん?今、野坂先生の授業中だったんだけど。どしたの?」
「任務よ。ーって、今のあなたじゃ行ってくれそうにないわね。30分で帰ってこられるけど。」
「ムリ。あと10分で4限終わるから、昼休み中でもいいんなら。」
「今すぐよ。応援だからね。」
「応援だったら、あけみさんに頼んでよ。私から連絡しとくから。じゃーね。」
私から一方的に電話を切る。次はあけみさんに連絡っと。あけみさんも原田さんも私の先輩。私はあけみさんのこと好きなんだけど、今回ばかりはしょうがない。
「あ、もしもしあけみさん。」
「なに。今授業中。」
「すみません。代わりに任務行ってきて欲しいんですけど…」
「分かった。原田さんに聞くね。」
「ありがとうございます!すみません。」
ブツリ。と、あけみさんの方が電話を切った。声だけでもかわいいな。っあ、授業戻らないと。
このやり取りが(いつもはあけみさんに任せたりはしないけど。)月に2、3回あるから、クラスの人や先生たちには私がお腹弱いみたいに思われちゃってるんだよね。なんか複雑。
席に戻って授業をうけて、給食を食べ終わった。あけみさんに電話しよ。さっきは迷惑かけたから。
「もしもしあけみさん。さっきの、大丈夫でしたか?」
「うん、まあね。ちょろかったよ。貸し2だからね。」
「分かってますって。無事で良かったです。」
「私を誰だと思ってんのさ。そう簡単にはやられないよ。」
「じゃ、また稽古で。」
私が切って電話は終了。次は国語だ。だるいなー。
そう思いながら本性の自分を奥にしまいこんで、偽の自分を引っ張り出す。友達とたわいもない話をして、予鈴がなる。席について、授業を受ける。つまんねー。こういう時に、恨みを持ったヤツが押し寄せてきてー、とかあったら面白そう。そんなことを考えていたら、階段の方から足音が聞こえてきた。私の席は廊下側だから、よく聞こえるけど、おかしいよね。
「はぁ、ゆるさねー。待ってろよ…」
ドス、ドスと乱暴に階段を上る音。あれま。想像が現実に?すごいな自分。そんなことを思いながら、原田さんに、「やベーヤツ到来」とLIMEを送る。原さんとの通話も、いつでもで出来る。今日、というか毎日銃とナイフは持ち歩いているから大丈夫。早く来いよ。私の遊び相手。そして階段からの足音が消えた。先生の反応をみてみると、一瞬で青ざめたような顔をする。それに気がついたクラスメイトたちは「先生どうしたのー?」と声をかけている。遊び相手はもう私を見つけたかな?そう考えていると、先生の声が聞こえた。
「…っ!みんな、逃げて!!」
だけど、訳の分からないクラスメイトたちは顔を見合わせている。ま、そーなるわな。数人が遊び相手の存在に気づいたみたい。顔が青ざめている。ってことは、刃物か銃をもっているのかな?
「マジでヤバイよ!逃げるぞ!!」
遊び相手の存在に気づいたクラスメイトが声をあげて周りの席の子を立たせる。そろそろ私の出番か。ハァー、とため息を漏らしながら席を立つ。隣の子が私を不思議そうに見つめる。私は後ろを振り向き、こういった。
「こんにちは。私と遊ぶ?」
私の顔をみた遊び相手は銃を構える。あ、やっぱ銃持ってたか。全身黒の20代位の男。遊びがいがありそう。そう思っていたら、クラス中が悲鳴を上げパニックになった。
「みんなー、落ち着けー。」
私は声をかけるけど、耳に入ってないみたい。
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