テラーノベル
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エーデルシュタイン王国の王都、城の近くにある近衛騎士団庁舎に向かうように言われた桜警視、日向警部補、大河内二佐、そしてタウロン大尉。
「ここで合っているのか?」
「俺たちが話を聞きたいのはエーデルシュタインの治安警察。近衛騎士団は畑違いだ」
「今検索しましたけど──」
日向は若者らしい。
「エーデルシュタイン王国は近衛騎士団が諜報活動もするようですよ」
その時、手が伸び、日向の肩をぐいと掴んだ。
「極秘事項を口にするな」
美青年の騎士はそう短く言うと、再び姿勢を正した。
「な、なんだお前!」
日向が喧嘩腰となるが。
「クラウスだ。騎士を務めている」
身長の高いクラウスはアイスブルーの眼で日向を見下ろす。
「レリア王女殿下が国王陛下の名代として謁見してくださる、案内する」
「あ、ちょっと!」
* *
エーデルシュタイン王国では民主主義による議会こそあるものの国王に行政権がある。
レリア王女はその国王の名代として公安特別捜査隊と謁見する。
先に客間に通され、着座して待つ桜、日向、大河内。
クラウスも客間にいる。無愛想な態度だ。
すると従者たちに動きがあり、レリア王女が入室する。
クラウスは恭しくこうべを垂れた。
桜警視、日向警部補、大河内二佐、立ち上がりお辞儀敬礼。
自己紹介を終えたのち、切り出したのはレリアだった。
「近衛騎士団のクラウスはこの件の担当者ですの」
桜警視は、なぜ騎士が公安事件に関わるのか疑問を抱いたが、先方が彼が担当者だと言うのなら仕方がない。その前提で話を進めることとした。
「我が日本で、エーデルシュタイン王国との首脳会談目前に、パルタ人の容疑者によるボウガンでの内閣総理大臣襲撃事件が発生しました。直前に総理移動ルートを変更したにも関わらず、です。当初は、エーデルシュタイン警察からの警護プラン漏洩を疑いましたが……」
「それは、エーデルシュタイン王国に対し無礼であろう」
クラウスが遮るが。
「最後まで聞いていただけますか?」
桜警視は意志の強い眼を向けた。
「クラウス」
レリアも制し、忠実なる騎士は口を噤んだ。
「総理暗殺未遂犯ザウルを日本の警察手帳を持った日本人の特殊部隊が襲撃。彼らの所持していたパラノイアAIと同規格の端末からオルフェウスという語が読み取れました」
オルフェウスの言葉を聞いた時、レリアは目を伏せ、クラウスは眉間に皺を寄せる。
エーデルシュタインはオルフェウスを知っている、と桜警視は確信する。
「パルタで我々公安特別捜査隊を襲撃した民間軍事会社PMCホライズンを国連が立ち入り調査した際にも、オルフェウスの語が施設内にありました」
桜警視は畳み掛ける。
「彼らは、オルフェウスを作戦名と言いました。私はこれをはぐらかしと考えています」
「何が言いたい」
クラウスは苛立つ。
「エーデルシュタインはオルフェウスと関わりがあり、警護プランの漏洩は、オルフェウスに関係する誰かが手引きしたのではないですか?」
レリア、クラウスが押し黙り、やがて口を開こうとした時、扉が開き、宰相マーゲル侯爵が慇懃に拍手する。
「ご高説恐れ入ります桜警視殿。ですが、そのような巷の噂を信じるとは、日本を守る公安捜査官も語るに落ちたものですな」
聞かれていた。盗聴か。
マーゲルは命じる。
「クラウス! 客人には城に泊まっていただくつもりだったが、王都のホテルを手配しなさい。くれぐれも丁重にな」
マーゲル侯爵のこの態度は桜警視の追及が図星であることを示していた。
「心得てございます」
「クラウス、客人のお世話を」
「かしこまりました」
* *
オルフェウスを追っていたのは公安警察だけではなかった。
しとしとと雨が降る、東京湾のさびれた工業地帯。
塀の高いスクラップヤードにて、コンテナを改造した何やら建物に屈強な男たちが出入りする。
部屋の中央にいる男は陸上自衛隊の迷彩服に、短く刈り上げられながらも洒落た髪型に髭面であった。
「中野陸将補」
それが彼の名であった。
「おう、座ってくれ」
中野は立ったまま報告しようとした部下を座らせる。
「日本の警視庁公安部、パルタ共和国内務省、エーデルシュタイン王国近衛騎士団で、それぞれオルフェウスと言う語がサイバー空間に頻出しています」
「よく知らせてくれた」
「恐れ入ります」
中野陸将補は窓もない部屋で、窓の外を見るように顔を上げた。
「こんな低気圧の日は、桜警視と大河内二佐に撃たれた古傷がうずく」
公安と中野陸将補とはただならぬ因縁があるようだ。
「中野陸将補が別班のオルフェウス事案責任者と知ったら、どんな反応をするでしょうね」
「全くだ」
彼らが属するのは──陸上自衛隊別班。
* *
大河内二佐はホテルに着くなり、桜警視をベッドに座らせた。
「桜警視、突っ走りすぎだ」
「どうしても聞かずにはいられなくて」
「まあ桜警視の勘はよく当たるけどよ」
「日向君に感化されたかな?」
「え俺っすか?」
桜警視は立ち上がり、日向の肩をポンポンと叩いた。
「期待してるよ」
夕陽がそびえる山脈を照らし、煉瓦造りの城を幻想的に染め上げた。
コメント
1件
第6話読み終えたよ。オルフェウスの正体に迫ろうとする桜警視たちと、それをはぐらかそうとするエーデルシュタイン側の駆け引きがいい緊張感だったね。特にレリア王女が「クラウス」って制する場面とか、マーゲル宰相が拍手しながら割り込んでくるトコは「おいおいケンカ売ってんのかよ!」って思わず声出たわ。最後の中野陸将補の伏線も熱いし、次話が待ち遠しい🔥