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僕が席に座ると、桃田さんは僕に向き直って深呼吸をした。
「…あのね。今から私が言うこと、誰にも言わないでくれる…?」
普段とは全然雰囲気の違う桃田さんに、僕は少し緊張しながら頷いた。
「……、実は私、中学生の時いじめられていたの」
「……え?」
”いじめ”…って言った?…桃田さんが…?
「私の下の名前、『うに』っていうでしょ。すごく珍しい名前だよね」
桃田さんが弱々しい笑顔で言う。
「その名前がきっかけで、クラスの男子達から、からかわれるようになったの」
僕はただ黙って、桃田さんの話の続きを待った。
「殴ったりとかはされなかったんだけど…笑われたり、物を捨てられたり、落書きされたり…酷かったの」
桃田さんの目が少し潤む。
(そんなに酷い奴がいたなんて…許せない…)
「それで私、高校生になって変わろうと思ったの。明るく過ごしていたら、いじめられないと思って」
だからいつも、桃田さんは明るく笑顔でいたんだ…。
なにか言ってあげたいけど、言葉が浮かばない。
「…ごめんね、こんな話聞かせて」
「ぜ、全然…!…でも、桃田さんは偉いね。立ち直る桃田さんを、その…すごく尊敬する。僕だったら、無理だから…」
僕が言うと、桃田さんは少し目を見開いて、はにかんだ。
「桧山くんって前から思ってたけど、やっぱり素敵な人だね」
「…え!?」
す、素敵…?僕が?
顔が赤くなったのが自分でも分かった。
……そういえば。
「桃田さんは、えっと、何で僕に過去のことを話してくれたの…?」
「え?」
桃田さんは立ち上がって、僕に向き直った。
「そんなの決まってるよ」
「え」
「桧山くんだから」
僕だから…?
「桧山くんだから、話したいと思ったんだよ」
「!」
穏やかな目で僕を見つめる桃田さん。
……僕、…桃田さんのことが好きだ。