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久しぶりに話をする機会のあった山倉さんに──
『橋本さんにはたぶん親しくしている男性が1人や2人はいるかなと思うけど……』
と言われ
『流石に2人はいないけど──。 まぁその、山倉さんだからお話しますけど、時々デート
したりする相手はいます』
と自分は答えた。
一番重要なこと──その相手が既婚者であることは話をしていない。
だから彼女は、よもや私の付き合っている相手が既婚者だなんて夢にも
考えていないだろう。
私の付き合っている相手は奥田貴史といって、10才も年齢差のある既婚者である。
振り返れば、彼と交際を始めてから5年弱の歳月が流れている。
奥田は付き合い始めてから少し経つと『妻とは離婚するつもりだから』と言った。
そして、逢瀬の度に君とのことは真剣なのだと愛を語った。
逢う度に『君とのことは真剣だ。すごく好きなんだ』と言ってくれて、こちらから
見ていても彼が自分に惚れていて真剣な恋をしているのが伝わってきて……。
彼の自分に対する熱が半端ないのが手に取るようにわかった。
大人の紳士的な振る舞いで自分を痺れさせ、それと共に自然に口をついて出てくる
かのように『可愛いだとかすごく大事に思ってる』だとか、耳障りが良くて心地よい
言葉をシャワーのように浴びせかけてくれる。
これまで自分にそのような愛の言葉を次々と囁いてくれる男などいなかった。
それでもう、自分は夢心地だった。
付き合うようになって2年目になった頃から奥田がやたらと『いつか俺たち結婚
しよう』と口に出すようになり、それはもう情熱的に熱い熱い言葉とお泊りの
オンパレードで私は毎日夢心地で薔薇色の世界に住んでいた。
自分は初めての大人の恋に痺れ、酔い、何も見えていない
状態だった。
これまで自分から結婚してほしいなんて言ったことはなかった。
だってこれほど好かれているのだから必ず先で結婚できるものと思って
いたから。
だからこれまで一途に彼を信じて──
結婚を夢見て──
耐えてその日を待った。
だが、付き合い始めて5年目を迎える今、彼は離婚していない。
最近では流石に、奥田はただ己に酔いしれているだけの自己中な男なのでは?
と徐々に不信感を抱くようになっていた。
これまでの彼の言い訳を鑑みると、おそらく奥さんには離婚の『り』の字も
言い出していないのかもしれないという疑惑に駆られる。
『真剣交際』を売りのように愛を囁かれていい気になり、女の一番輝いている
星キラリ

2,012
ムメイ
661
まなこ〜友
476
年月を既婚者の中年男に身も心も捧げてきたが……。
そのことにある日、ほんとにパッと霧が晴れるように気付いた。
自分で『眠れる森』からはい出さなければと思えたのは、ひとえに己の年齢だった。
そう、私は三十路前に──
突然霧が晴れるように現実にちゃんと向き合えるようになったのだ。
そして、それにも増してそんな自分の後押しをしてくれるような出来事が
起きた。
山倉女史が自分に婚活パーティーの話を持ってきてくれたのだ。
彼女に誘われたとき、表向きは「行ってもいいですけど……」といった体で、
必死さは見せなかった。
けれど内心では、この婚活パーティーで絶対にいい男性を見つけてやる
──そう決めていた。
◇ ◇ ◇ ◇
――――
このようにして、山倉美並と橋本蓉子ふたりの思惑を乗せて、そして何より
奥田文世の思惑を乗せて、婚活パーティーが進められていくのであった。 ―――――――――――――――――――
コメント
1件
うわ、蓉子さん……5年も待って、ようやく目が覚めたんですね。奥田さんの「真剣」って言葉、彼女に対しては単なる口先だけの自己陶酔だったんだなと感じました。山倉さんが婚活パーティーに誘ってくれたタイミングも絶妙で、ここから新しい展開が始まる予感がしてドキドキします。地の文で永堀文世の名前が出てきたのも気になりますね…!