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_____息を飲んだ。
絹糸のように艶のある漆黒の髪と伏せられた長い睫毛を靡かせながら 煙草を吹かす彼女を見て、
僕はこのまま死んでしまってもいいんじゃないかと思った。
が、薄着で夜風を浴びる彼女を置いては逝けない。
「🌸さん、そんな薄着じゃ風邪、ひきますよ。」
『悟?大丈夫だよ、ちょっとだけだし。』
「ダメです、🌸さんが風邪ひいたら僕が困るの。」
『えー…じゃあラスト1本だけ!ね?』
「じゃあせめてこれ着て。」
そう言って僕は羽織っていたカーディガンを彼女の肩に掛ける。
『それじゃ悟が風邪引いちゃうよ』
「大丈夫、僕、最強だから。」
『その自信どこから来るの。』
そう言って天真爛漫な笑みを頬に浮べる彼女は
儚げで、今にも消えてしまいそう…そんな雰囲気を纏っていた。
自分がいつからこの言葉を呟くようになったのかは、よく覚えていない。
それでも彼女を見ていると「護ってあげたい」と思うのだろうか、
自然と口からこぼれている。
『悟が、本当に最強だったらいいのにね。』
「なんで?」
『ううん、なんでもないよ。』
そう言った彼女は少し曇った顔を隠すかのように
鈍色の空に白い煙を吹き出した。
「🌸さんって…なんで煙草吸い始めたの?
昔は吸ってなかったよね。」
『んー、そうね、なんでだろ?つい出来心で、かな。』
「程々にしてね?」
『悟はこの口とキスするの、嫌?』
「嫌、じゃないけど心配。」
『大丈夫、私、最強だから。』
「なにそれ。」
自分の口癖を真似、悪戯に微笑む彼女の煙草を強引に奪い、
そっとキスを落とす。
『積極的ぃ〜!』
「僕、相当🌸さんに惚れ込んでるからね。」
「それ終わったら部屋戻ってきなよ?僕先に戻るけど。」
『はいはい、分かってるよ。』
「僕も煙草吸おうかな〜。」
そう呟きながら僕はベランダを出た。
去り際、彼女が何か言ってたような気がしたが、
朝方、仕事に走るトラックの音にかき消されて何も聞こえなかった。
『それはダメだよ、絶対に。』
『…あんたと添い遂げる為に吸ってんだから。』