恋をしたのは何年ぶりだろうか。
夏の蒸し暑さも去り、涼やかな風が吹き始めた頃。
僕は何年ぶりかの恋をした。
相手は臨時教師の恵比寿先生。
好きなところ?
まずは顔。それから品行方正なところ。あと声もいいし。身長が低いの、かわいい。あとは──
「晴明君どうしたん?ニヤニヤしとるけど」
「え!? してた!?」
「しとった」
いきなり凜太郎君にそう指摘されて、驚くと同時に焦る。
「あー、今度もらうセーラー服のこと考えてたんだよねー」
「……そうなんや」
誤魔化せた……のだろうか。
───もしここでカミングアウトしていたとしたら、凜太郎君はどんな反応をしただろうか。
これは、誰にも言ったことのない、僕の秘密。
僕、ゲイなんだと思うんだよね。
ゲイっていうのは、男なのに、男が好きな人のこと。
別に悪いことではないんだけど、カミングアウトする気には未だになれない。
みんなはこの秘密を知ったら、どう思うかな。
僕を避ける人は、もっと増えるかもしれないな。
みんなに嫌われるかもしれない。
表向きでは認めてくれても、裏では嫌味を言っているかもしれない。
もし完全に認めてくれたとしても、───
……いや、考えるのはやめよう。
カミングアウトしなければ、この平和な日常が変わることはないのだから。
失恋して、また失恋して……──。
同性に恋をし、その度に平和な日常を優先し、諦める。そして相手は、何処かの誰かさんと幸せになる。
もう、失恋にも慣れてしまったな(まだ2回ほどだけれど)。
ちなみに、人は一生で3回失恋すると言われているらしい。それならば、次の次の恋は実るのか? ……そんなわけないよね。
“普通”だったらよかったのに。
もしくは、胸を張ってカミングアウトできるくらいの度胸があればよかったのに。
そう思わずにはいられない。
変わりたいと感じずにはいられないんだよね。
「──先生?聞いてる?」
「わっ!? え、……えっと……?」
覗き込むような、やや下の方からの視線。
その視線は、恵比寿先生のものだった。これまでで1番近くで、恵比寿先生の顔を見ている気がする。
心臓の音、恵比寿先生に聞こえていないだろうか。顔は赤くなっていないだろうか。
「ご、ごめん……考え事して……て──」
「安倍先生、最近そういうの多いよ」
ああ、怒らせたかな……。
先程までは火照ていた体は、恵比寿先生の言葉で急速に冷えていく。
僕の恋煩いは、“変”だというだけではなく、人に迷惑をかけるものでもあるらしい。
この恋もさっさと諦めなければ。やめなければ。
恵比寿先生と目が合う。
それだけで、胸の奥で何かがまた動き出しそうに──
……ダメだ。
ここで踏み出したら……
迷惑だ。
“変”だ。
嫌われる。
先程までネガティブなことを考えていたからか、その瞳の赤さは信号機の赤を連想させた。
──“とまれ”
こんにちは、作者の浮舟です。
まずは、phase2も読んでくださりありがとうございました。今回は晴明視点でした。これ、晴恵比?恵比晴?一応タグは恵比晴だけど……。
てかBLって難しい。下手すぎて萎えそう。いつも通り展開唐突だし。
初恋未経験の人間なので、そもそも恋をするってどんな感じなのか、全く分からないんですよね。「何で書こうと思ったんだ!」と、過去の自分を恨んでいます。
最初は前回と同じで空白の大きさを3・2関連にしていたのですが、スカスカに見えたのでやめました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
それからコメント、凄く嬉しいです!気軽に送ってください!ちなみに初タメOKですが、タメでコメントされたらタメで返します。
コメント
4件
覗き込んでるんですか…恵比寿が…考えただけでも尊いんですけど…まぁそんなことは置いといて…最高すぎる…晴明くんの恋が祈ることを願う…あと恵比寿が晴明のことをどう思ってるかで…変わる…(◜¬◝ )
最高すぎる👍🏻 ̖́-︎ のぞき込むえびちゃん想像したらほんとかわいいと思うし悩んでる晴明くんもいいっ