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───選ばなかった選択の世界線───
剣は 、振り下ろされなかった 。
処刑台に集まった群衆のざわめきの中で 、
翡翠の王子は 、最後の一歩を踏み出さなかった 。
命令は明確だったはず 。
この琥珀の王子を殺せば 、戦争は終わる 。
自分は英雄になり 、国は救われる 。
それでも 。
「… やめだ」
誰に聞かせるでもなくそう呟いた瞬間 、
世界が一度止まったように感じられた 。
琥珀の王子は 、ゆっくりと目を上げる 。
そこにあったのは 、昨夜抱きしめてくれた人の顔だった 。
英雄の顔でも 、処刑人の顔でもない 。
ただ 、ひとりの人間の顔 。
「ぇ 、?」
言葉を探す前に 、手を引かれた 。
剣が落ちる音 。
怒号 。
混乱 。
けれど翡翠の王子は振り返らない 。
琥珀の王子の手だけを強く握り 、走る 。
城を抜け 、国境を越え 、
夜が明けるころには二人は名もなき森にいた 。
息を切らしながら立ち止まり 、
ようやく 、互いを見る 。
「… いいのですか」
琥珀の王子が 、先に言った 。
責める声ではない 。
それでも 、震えていた 。
「英雄にならなくて」
「王位を捨てて」
「あなたの国を ____」
翡翠の王子は首を振る 。
「救われる世界のために 、君を殺すなら」
「そんな世界はいらない」
琥珀の王子は一瞬言葉を失い 、
それから 、静かに笑った 。
「… ずるいですね」
「俺は 、あなたが英雄になる覚悟をしていたのに」
「それが 、選ばなかった選択だ」
翡翠の王子はそう言って 、
そっと琥珀の王子の額に触れる 。
「王子じゃない」
「英雄でもない」
「それでも 、生きていいか ?」
琥珀の王子は 、ゆっくりとうなずいた 。
「… 一緒なら」
その瞬間 、
初めて “未来” という言葉が 、
二人の間に生まれた 。
世界は 、すぐには変わらなかった 。
戦争は別の形で終わり 、
英雄は別の名で語られ 、
歴史書に彼らの名は残らない 。
小さな村で傷を癒す魔法を使う青年と 、
剣を置いた元王子が暮らしているだけだ 。
朝は同じ食卓を囲み 、
夜は同じ灯りの下で眠る 。
言葉にしなくても 、
指先が触れ合うだけで分かる距離 。
それはもう 、
戦友でも 、敵国の王子でも 、逃亡者同士でもなかった 。
それでも夜になると 、
同じベッドで 、同じ温度を分け合う 。
「後悔は ?」
ある夜 、琥珀の王子が聞いた 。
翡翠の王子は少し考え 、首を横に振る 。
「罰は受けている」
「王であったはずの人生を 、失った」
それから 、琥珀の王子を抱き寄せる 。
「でも」
「君を失う罰よりは 、ずっと軽い」
琥珀の王子は 、
翡翠の王子の胸元に顔を埋めて笑った 。
英雄にならなかった人生 。
救われきらない世界 。
それでも 、選んだ温もり 。
世界がそれを許さなくても 、
二人は確かに 、同じ夜を生きている 。
それを愛と呼ばずに何と呼ぶのか 、
二人はまだ知らない 。
___ これは 、
誰にも称えられなかった 、
確かなハッピーエンド 。
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どうでしたでしょうか !
前回1000♡有難う御座いました 🥹🙏🏻💖
初めてのノベル作品でしたが気に入ってくれた人がいてよかったです !
では 、また別の作品で 〜 !👋🏻✨️
コメント
10件
どんな感じてハピエンなるんだろうってめっちゃワクワクしててめっちゃ神な作品出てきてビックリしました!!他の作品も大好きで何回も読ませてもらってます︎💕これからも無理のない範囲で頑張ってください!長文失礼しました
ええもう最高です 😭😭 ハッピーエンドも 良すぎる … !! 完結お疲れ様です ! 新しい作品も楽しみにしてます ✨
めったんめったんに良すぎましたぁぁ!感動すぎます! 書いて下さり本当にありがとうございます!これからの作品も楽しみ待ってます!