恋人に急に会いたくなった、自分は行動にすぐ移せるタイプ、今日だってそうだった。
独断の気持ちだけで頬を引きしめ、辺りをうかがい、そうしてうろうろと歩いていけば、目的の人物はすぐに見つけることができた。
「あ、ひば、久しぶり!!」
――ただし、見知らぬ男、ううん明那さんに声をかけられている、というオプションつきだが。
途端、楽しかった気持ちが萎んでいく。それどころか自分でも恐ろしいほどの不愉快な気持ちが胸に溜まっていって、気持ちが悪かった。
咄嗟に隠れた壁の影から、俺はこっそりと様子をうかがう。本当は飛び出して「俺のものだ」と主張したいところだけど、仕事の話かもしれないし、雲雀に迷惑がかかるのは避けたい。
それに、己はそんなに心の狭い男ではないのだ。
「うん、まぁ元気っすかね?…ていうか、明那さんこそ、最近調子いいみたいじゃないっすか!」
「あはは、ひばほどじゃないけどね〜。バンドでもライブでも引っ張りだこじゃん!!」
「まぁ!!俺、人気者ですから!!笑」
先輩に褒められて、雲雀は満更でもなさそうだ。自慢げに笑う顔は、可愛い。しかしそれを向けられているのが自分ではないことに、苛々した。
「よっ、さっすが人気者」
「へへっ俺ですからね!!!!」
腕を組んで、小首を傾げて。自信満々にそう言い放つ顔は、俺の大好きな恋人の姿だ。雲雀は、調子に乗っている時が一番輝いている。自分を認めている笑顔は、最高に綺麗だった。
「……はは、まぁ俺も、ひばのそういうところ好きだけどね笑」
無意識だろうか、手が雲雀の頬に触れる。それからそこにかかった柔らかな髪を指でよけて、彼らの距離がぐっと近づいた。
「……それは…どうも…、?」
雲雀が少しだけ眉を寄せる。明那さんはそんなこと気づかないように、さらに顔を近づけた。
「……ていうかひば、めっちゃ着込んでるよね。ちょっと暑くない? どっか涼しいところ行こうよ」
それから、雲雀の首に伸びる指先。ハイネックの襟をなぞって、そこに指先が埋まるのに、カッと目の前が真っ赤に染まった。
――ああこれはだめだ。
「…ひばり」
「ぅおっ」
俺はバッと壁の影から飛び出すと、雲雀の体に思い切り抱きついた。
「もう全然見つからないと思ったらここにいたんだ…」
「え、せ、せらお……?」
突然抱きつかれて、雲雀は目を丸くさせる。明那さんも、もちろんこの状況についていけないようだ。
「え、……えーと?」
「あ、話し中だった?あは、すいません。こいつはこれから俺と仕事なんで」
ぎゅうと抱き寄せてこれでもかとくっついた。それから彼を見下し、笑顔でそう言い放つ。
コメント
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更新ありがとうございます ✧ ‧̫ ✧ ほんとにいつも神作すぎて助かってます … 🎵⭐
投稿ありがとうごさいますー! 20サイ組大好きでめちゃめちゃ嬉しいです😭😘💕 最後の🎻が🌶に嫉妬して見下している姿が身長差がありすぎてめちゃ想像余裕🥲 いつも楽しく見させていただいております~🌠🙏 これからも応援させて下さい😭