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1000人おめでとうございます!リクエストに答えていただいて嬉しいです!ありがとうございます🙇♀️

フォロワー1000人、おめでとうございます! 1年前くらいからずっと読ませていただいてました!✨ stgrでの実際のストーリーや、キャラクター性などを踏まえて細部までこだわられた、見事な作品でした!! 読ませていただき、本当にありがとうございます!これからも応援してます!
す、すごい…読み応えありまくりで感動しました😂
Reboot life for future
🍥瀬🦀及び🐙の一時キャラエンドに関して多分にネタバレと自己解釈を含みます。注意。うろ覚えな部分も多かったのでwikiを参照。
今回結構長いので頑張って。(一作にまとめたかったため話分けしていない)
名無しモブそこそこ居ます。出しゃばります。
あとものすごく読みにくいです。ごめんなさい。
出てくる人→🤖、🧚♂️、🟦、🐙、🦀、📡、(🛍)
「こら〜!重窃盗だぞ〜!!」
「お届けに来たんですよ!ウチの前に鍵もかけずに落ちてるもんだから!」
「えびすが強制瞑想したやつでしょー!ダメ!勝手に乗っちゃ!!」
駐車場に乗り入れたパトカーに乗っているのは警察官ではない。ジンジャーブレッドのお面に耳付きピンクのパーカー、言わずと知れた(警察、一部の救急隊にだが)クッキーピンクである。
さぶ郎が駐車場で署員達と談笑していたところにわざわざサイレンを鳴らしてやってきたのだ。
「いやいやいや届けに来たのに!窃盗になるんですかこれ!」
「届けてくれたのはありがとうだけど!勝手に乗るのはダメ!」
「んええ〜…まあ、分かりましたよ。今回はボクが折れますか。」
「最初から乗っちゃダメなの〜!」
もはや恒例とまで言われるほど常習化した「868のデイリー重窃盗」。さぶ郎はやれやれといったように肩を竦め、パトカーをガレージに仕舞う。
「クッキーピンクさん足は?」
「あー、まあ、無いんでパトカー貸してもらえると!」
「ダメ!貸さないよ!」
「ええ!じゃあボクその辺の車盗らなきゃいけなくなっちゃう…。」
「それもダメ!」
「どした〜?なんか揉めてる?」
くちゃもちゃに揉めている所に、もったいぶった上官の登場。鬼のヘルメット、青井らだおである。
「らだおせんせ〜!クッキーピンクがいじめる!」
「なにい〜!ウチのさぶ郎泣かしたんか!」
「泣かしてないですよ!ボクパトカー届けたのに歩いて帰れなんて言うんですよ!」
これみよがしにらだおの影に隠れてあかんべ(見えないが)するさぶ郎。苦笑いしてトピオは自身の主張を述べる。
「あ〜それはなぁ、こっちはどうしようもないな〜。」
「そんなあ!正義のために届けてあげたのに!」
「そもそも勝手に乗ったら駄目よ?まあ、レギオンに送るくらいならいいけど。どうする?」
譲歩した提案をするもトピオは渋る。だってそれじゃつまらない。遊びに来てるのに追い返されるような仕打ちは面白くないだろう。
「う〜ん…もう一歩!」
「ええ?w欲張りだな。じゃあ、車ある所まで送る!」
「まあまあまあ…というか、チェイスしたいんすよ!パトカー貸してくんないかなって!」
「ダメに決まってんでしょー。ほら乗って、送るから。」
「う〜……はあい。」
この人との口プは勝てない。そう判断したトピオが折れた。しょうがない、とでも言いたげに渋々らだおジャグラーに乗り込んだ。
「どこまで?」
「ん〜じゃあPYで。」
「はーい。」
「ジャグラーなんすね。」
「これね。さぶ郎カスタム。気に入ってずうっと乗ってるわ。」
「へえ〜。」
「興味ないだろw」
「あんまないっすw」「おいw」
「……先生って呼ばれてるんすね。」
「ん?ああそう。ヘリの先生なの。なんか慕ってもらってるね。」
「そうなんすね……。」
当たり障りのない会話。遠くもない距離、本署からPYまではものの数分で着いてしまう。
「はい、じゃあここでいい?」
「……あの!……や、なんでもないです。すみません。」
「……?どした?」
PYに着いて、らだおが声をかけてもトピオは動かなかった。ぎゅう、と膝の上で手を握りしめ、微かに震えている。
「え、泣いてる?」
「……ない、です。すみませ……ッ。」
「うわ〜、どしたの〜?大丈夫?俺なんかしちゃった?」
「ちが、ちがうんです…。すみません……。」
お面の隙間からほろほろと涙を流すトピオ。
いよいよらだおは困ってしまった。何か泣かせるような事をしただろうか。気付かぬうちに傷つけてしまったのだろうか。
泣き止む気配のないトピオに困窮したらだおはダメ元で保護者に連絡を入れてみる。かつての仲間、ケイン/オーに。
「……出てくれ〜、あ。【もしもし?】」
【もしもし?どうかしましたか?貴方から電話とは。】
「【いやあ、あのね。今PYの駐車場の所にいるんだけどね。お宅のトピオさんが泣いちゃってて。】」
【……はい?】
3コールの後電話に出た機械音はひたすらに困惑した。
高性能ロボットといえど瞬時に理解するのは難しいだろう。警察時代にも関わりの薄かった警官から電話が来て、なんなら少し警戒しながら出てみれば自組織の構成員が泣いている、と。理解しろという方が可哀想だ。
【えっと…ウチの、どなたと言いました?】
「【うん、トピオさん。フェアリー トピオ。】」
【ああ〜…では、すぐ向かいます。】
「【ごめんね〜ありがとう。】」
868の中でも赤ちゃんと称されるような人。正直者で案外タガの外れている彼なら、何かの拍子に泣き出してもおかしくは無い、と優秀なCPUが解を出し。
ケインは豪邸からPYへ、車を出すのだった。
ーーーーー
「すみません、遅れました。」
「あ、ケインくん来た。ありがとう〜。」
電話から数分、リボルーターでやって来たケインはドリフトを決め駐車する。
車を降りパトカーを覗けばなるほど、ウチの妖精がしくしくと悲しげに泣いていた。
「……何があったか聞いても?」
若干の圧を滲ませながら問う。目の前の男が人を泣かせるような人間とは思わないが、事実として可愛い構成員が泣いているのだ。事実確認は必須である。
「いやあ、彼ウチにパトカー届けに来てくれたんだけどね?足がないって言うからここまで送ってきたのよ。」
「はあ、いつものですね。」
「そう、で、車ん中でちょっと会話してて、着いたら急に。」
「なるほど……。」
自分の主にも似た温度の無い声は、確かに冷たく聞こえることもあるが、それだけで泣き出すほど彼は豆腐メンタルではないはずだ。
ならば会話の内容だろうか。
「車内では何を話しました?」
「えーっと、この車がさぶ郎にカスタムして貰ったんだ、て事と、あと先生って呼ばれてる事…くらいかな。慕われてんだよねーって。」
「…………なるほど。分かりました。」
ああ、とケインは腑に落ちる。トピオはきっと、思い出してしまったのだ。
「すみません、引き取りますね。」
「えっ。」
「ご迷惑おかけしました。」
ケインにも時たま突っ走る癖があった。トピオを引っ掴んで自分の車に詰め込み、らだおへの挨拶も早々に車を出す。
思い出したようにらだおに声をかける。
「あ、貴方のせいではないです。そこは勘違いなさらないでください。」
「あ、そうなの?じゃあ、まあいいか。」
そうしてその場は丸く収まって、二つの組織は別れたのだった。
ーーーーー
「着きましたよ。中に入りましょう。」
「……っす、ありがとうございます……。」
豪邸に帰ってきたケインとトピオ。途中からすすり泣く声が止んだので眠ってしまったかと思ったが、かろうじて起きていたようだ。
珍しく参っているな。と動かないトピオを見て思う。やれやれと抱き上げて車を仕舞い、さっさと豪邸へ入った。
「寂しくなってしまったんですか?」
「……ハイ。」
ケインの予想の通りだった。ソファに降ろし、並んで座る。今日は二人しか起きていない。
「…先生って、呼ばれてたんです。らだおさん。それで、思い出しちゃって……。」
「はい。」
「あ、俺もう先生に会えないのかな、って、思っちゃって、なんか、寂しくて……。」
「……はい。」
「いいな、って、思っちゃって、先生じゃない、あの人は、先生じゃないのに……。」
否定も肯定もせずに頷き続けるケイン。
背中をさすって話を聞く内、トピオの瞼は段々と下がっていく。これはもうすぐ寝てしまうな、と算段を付けたケインに、トピオは小さく呟いた。
「ケインせんぱい。」
「どうしましたか。」
「俺のわがまま聞いてくれますか。」
「……せんせいに会いたいです。」
泣き腫らした赤い目で訴えた。そのまま夢の中へ吸い込まれるトピオ。
ケインは静かに拳を握り込む。その願いを叶えてあげられたら。
静寂の中、バイブ音がケインを現実に引き戻す。トピオを起こさぬよう携帯を取り出せば、先程と同じ人物からの着信だった。
「【もしもし。】」
【あ、もしもしー。らだおですー。えっと、そっち大丈夫?】
「【ええ。今は疲れて寝てしまっています。】」
【あらま。……えっとね、プロファイルとか、色々見聞きして察した。お宅の……帰っちゃったの?】
ケインは驚いた。かねてから交流の深いえびすや皇帝ですら知らないだろう、レダーヨージローの帰国を憶測で当てる者がいるとは。
らだおは本署に戻ってから周りに聞き込みをし、その情報を警察プロファイルと示し合わせていた。そうして浮かび上がった、一年前から動きのないこの人物。フェアリー トピオに「先生」と慕われていた、一人の男。
「【……はい。】」
【なるほどね。合点がいったわ。…もう会えないの?】
「【恐らくは。】」
【そっか……。】
沈黙。
ケインは考えていた。ずっと考えていたことを、この何の関係もない警官に話しても良いものか、と。
それは組織の内部の話。868が最も取り扱いに慎重になる、「情報」。渡してしまうことになる。それでも、縋りたくなってしまった。
「【青井らだおさん。】」
【ん?】
「【貴方は店長に…レダーさんによく似ています。立ち振る舞いや、声もそうですけど、面倒見の良さなんかも。それでトピオさんは。】」
【………。】
「【手紙を書くと言っていたんです。】」
「【それが一向に届かない。】」
「【ただ書いていないだけならいいんです。】」
「【無事じゃ、ない可能性が、あるんです。】」
ずっと考えていた。メールじゃ駄目なんですか。と聞いて、手紙がいい!と言い切った彼が、一向に寄越さないそれに焦がれていた。最悪さえも考えてしまうほどに。
「【無理を承知でお願いします。】」
「【店長を探すのを、手伝っていただけませんか。】」
決死の頼み、願いだった。
完璧なロボットが、人に頼ってしまうほどに。疲弊していた。熱望していた。熱暴走していた。
【…………いいよ。】
彼に似た温度の無い声が、今は暖かく聞こえた。
ーーーーー
なにも簡単に了承した訳じゃない。らだおは簡単に犯罪者に加担するような人間ではない。
でも電話越しの機械音が、あまりにも人臭いような、切ないような声に聞こえて。
らだおは覚悟を決めた。
レダーヨージローの帰国を人知れず確信した時に、少し思ってはいたのだ。この人は何を思って仲間を置いていって、今何を思って何処にいるのだろうか、と。
「いっちょやりますかあ……。」
誰にも言わないつもりだ。これは個人で決めたこと。868のためにも、絶対外には漏らさない。
ケインに聞いた帰国先。ロスヨントス。
ここより遥かに治安が悪く、レダーはそこから逃げてきたらしい。警察としての心残りを晴らすために帰った、と。
仲間を捨ててまで、何を成すために。そこまで思って考えを改めた。違う、彼は仲間を捨ててなんかいない。巻き込みたくなかったんだ。そしてそれを引き止めなかった仲間も、同じ。
優しい、優しすぎる組織だ。なんで犯罪者してるんだろうとさえ思う。
プロファイルを見ていて気付いた事がある。
成瀬夕コ。彼女のデータがバグっていた。ドリーにそれとなく聞いてみれば、彼も気付いていたという。何者かによって書き換えられた可能性がある。
明らかに良くない組織による干渉。プロファイルの写真に写る横たわる人影、背景のグラフィティ。ケインに聞けば似たような落書きが868のアジトに一時期散見していたらしい。
そうだ、成瀬夕コの事ならば、弟である彼に聞けば。と成瀬力二の方に連絡を取ろうとしたのだが、繋がらない。まさか成瀬まで巻き込まれているというのか。
成瀬の目撃情報なら早いだろうと洗い出してみれば、味野くんに「世界救ってくる」と言い残してそれきり、一度も誰も見ていない。しかし成瀬の物と見られる白い気球が西へ向かったとの話もあった。
そして極めつけは、成瀬の携帯への送信履歴。市長を脅して街全体の携帯端末へのアクセス履歴を見せてもらった。(人助けだと言って言いくるめた。)膨大な量の中から見つけ出した成瀬の携帯の情報。文字化けしたメッセージが二件。両方とも、差出人は件の人物だった。
内容は、夕コから力二への別れの言葉の様なもの。そして夕コの消息が掴めなくなっていることと、レダーがそれを捜査していること。読めないところを補完して簡潔にまとめればそうなる。
そして姉思いの成瀬のこと。成瀬はきっと、夕コを救いに行った。
「ロスヨントス……。」
嫌な予感がする。
ーーーーー
「もう、もういっそ、行きませんか、ロスヨントス!」
らだおは数日かけて得た情報を纏めてケインの元へ提出した。警察からも行方不明者が出ていると付け加えて。
資料に目を通すロボットとピンク頭。段々としかめっ面になって行く様がその内容を物語っていた。
読み終えたトピオの一言目が、先のロスヨントスへ行かないかという提案だった。
「そんな無茶な…と言いたいとこだけど、割と俺も賛成なんだよね。ウチの奴が関わってそうな気ぃするし。」
「先生だけじゃなくて、夕コさんまで危ない目に遭ってるなんて、そんなの、ダメです!」
「ケインくん。」「ケイン先輩!」
資料を持ったまま俯き続けているケインに二人は詰め寄る。
片方は信頼する仲間の身を案じて、片方はただ会いたいと焦がれていた人が、危険にさらされているかもしれないと知った憤りで、静かに燃えていた。
ふー…っ、と溜息にも似たファンの音が鳴る。ケインは思案していた。今から乗り込んでこの少人数、向こうのギャングだか警察だかに太刀打ちできるのか。レダーの捜査の邪魔をする事にならないか。そもそも成瀬力二に連絡を送れるくらいならこちらにも連絡を…これは今はいい。
ケインは顔を上げる。
「行きましょう。ロスヨントス。」
救わねばならぬ者がいるのなら、止まることはない。後悔しないために。
ついでにレダーと夕コを連れ戻せたらいいな。と密かに考えていた。
ーーーーー
決行は深夜、向こうもこちらも街が寝静まる頃。らだおのヘリとケインのヘリ、二台に分けて向かう事になった。
泳いで二日以上かかるというがヘリなら遅くても次の日の夜には着く。闇に紛れるのは犯罪者の得意技だ。
「これは犯罪への加担じゃないから。行方不明者の捜索だからね。」
「物は言いようですね。」
「そのくらいでいいんだよ。」
国外逃亡、傍から見れば無断渡航だ。事実そうなのだけど。
トピオはありったけの銃弾をポケットに詰め込み、準備万端と腕を振り上げた。有事の際はこれで奴さんを蜂の巣だ。有事にしかならない気もする。
「行けますか?」
「はい!」「OK。」
「それでは、姐さんを助けに、店長に会いに、」
「成瀬の安否確認に、」
「行きましょう!」「やろーや、やろーや!」
灰色とピンクゴールドのフロガーが、夜闇に飛び立つ。向かうはロスヨントス彼の地。
必ず、良い結果を持ち帰らんとして、三人のヘリ使いは息巻いた。
ーーーーー
上空。約1500ft。
当たりは真っ暗、四方は海。ケインの計算ではもう30分もすれば陸地が見えてくる。
ロスサントス製のヘリには時々恐ろしさを覚える。1日飛んでも街の外ではガソリンが減らないのだ。どういう理屈で?とも思うが、理に触れるのはよしておこう。
予め繋いだ無線が光る。
【もうそろかな。】
「【ええ。おそらく。】」
【トピオくん寝てる?】
「【一時間前からぐっすりですね。】」
【はは、まあ、寝られる時に寝とくべきだね。】
「【そうですね。】」
らだおの方も眠気が来ているのだろうか、意味の無いような会話を交わす。無理もない。ずっと景色は海だけ、無線がなければ向こうは一人プロペラの音だけを聞くことになる。
ロボットの利点か、とも思う。そういえば、ヘリの燃料が減らないということは、ケインも燃料切れを起こさない、ということなのだろうか。
【あ!見えた!】
考え事から意識を引き上げ、ハンドルを握り直す。目のいいらだおに遅れること10秒、ケインにもロスヨントスの砂浜が写った。
「【着きますね。飛行場を探しましょう。】」
【俺先に見てくるよ。】
「【分かりました。くれぐれも気をつけて。】」
【うん。】
らだおのヘリが先を行く。反時計回りに砂浜と並走し、飛行場を探した。ロスサントスよりも小さいらしい島を四半周した所で、開けた土地を見つける。掠れたairlineの大看板、飛行場だ。
【ここだね。】
「【降りますか。】」
【敵は見たところ居なさそうだけど、どうだろ。】
「…ん、ケインせんぱい…?着きました?」
「もうすぐに着きますよ。念の為、装備を。」
「っ、はい。」
くるりと旋回してらだおのヘリが降りる。降り立った彼が手を振るのは、着陸しても問題ないという意味なのだろう。
音を立てないようにゆっくり、かつ目立たぬように迅速に着陸。後部座席のトピオは銃をリロードした。
「はー着いた着いた。」
「お疲れ様です。体の不調等はないですか?」
「ちょい眠いけど平気。まだいける。」
「俺も眠いです…。」
「トピオくんは寝てたんでしょ?w」
「そうすけど…うぅ〜ん、寝足りないっす。」
トピオは欠伸を噛み殺しながら目を擦る。
「可能なら休める場所が欲しいですね。今後のためにも。」
「そうね。とりあえず、宿かなんか探そっか。」
さく、さくと舗装のなされていない地面をひた歩く。噂に聞く通りというか、付近に人影はほとんどなく、心無きすらもいないだだっ広い土地。異様な雰囲気が漂っていた。
「ゴールデンタイムにしては人がいないな。デフォルトなんだろうけどちょっと不気味だわ。」
「なんかゾンビでも出てきそうです…。」
「わーやめてよ!そういうの俺無理なんだから!」
トピオが両腕を擦る。らだおが怯えて周りを見回す。ケインはそれに少しファンを回す。
車が通らなければ盗むことも出来ない。もちろん、協力を仰いでいる警察官の前でそんな事はしないつもりだが、やはり向こうに慣れているケイン達にとって、ロスヨントスの大地は異質だった。
ボロボロの高速道路を徒歩で渡る。街の中心に向かって約十五分、打って変わって今度はそこかしこに明かりが灯っている。眩しいくらいに。
「この辺り、宿くらいならありそうですね。」
「しっかし悪趣味な街だな。パブ…モーテル…バー…お、武器屋。」
「なんか、ボクたち見られてません?すごく視線が…。」
露出の激しい女性とその腰を抱く男性がこちらを睨んでいる。飲み屋らしき店先の男性もこちらを訝しげに見ている。
完全アウェイな雰囲気にトピオは縮こまってしまい、ケインの後ろに隠れるように寄り添った。
「あ、格好か。たしかにこれは怪しいよね。」
コツ、とらだおがケインの頭部を小突く。なるほど失念していた。歩くロボットとはそりゃあ凝視される。
「それ言うなららだおさんもヘルメット……。」
「まともな格好なのトピオくんだけじゃん。服屋探すか。」
「そうですね、コレのせいで宿が取れないと困りますし。」
手近な服屋に駆け込み、変装。
トピオは服の色合いを落ち着かせ、ポンポン付きのビーニーを被る。
らだおは灰色のタートルネックに黒のキャップ、黒マスク。青髪を隠す意図もある。
ケインは肌装甲になりジップ付きのパーカー。
らだおとケインは顔を見合せ、同時に首を傾げた。
「いや誰?w」「こちらの台詞です誰ですか。」
「二人ともかっこいいっす!これなら目立ちませんね!」
「どうも、っし、じゃー宿、俺名義でいい?」
「はい。あ、いえ、大事をとって偽名の方がいいかと。」
「あー、じゃラディでいいか。」
軽い打ち合わせをしてようやっと見つけた宿を取る。寂れてはいるが十分、男三人泊まれそうだ。暫く厄介になる、と伝えれば受付の女性はぶっきらぼうに頷いた。
小さな宿の中の一番大きい部屋をとった。ベッドは二つ、ケインは床でいいと言ったためだ。
「じゃあ、作戦会議かな。」
「はい!」「ええ。」
「私はとりあえず警察の方に探りを入れてみます。新規入居者だと言えば相手にはされるでしょう。トピオさんも私と一緒に。」
「はい!」
「じゃ俺は犯罪者の方に。そうだな、まず襲われてみますか。」
「エ゚っ!?マジですか…。け、怪我しないでください?」
「大丈夫だいじょぶ、犯罪通知が行けばレダーさんが助けに来てくれるかも知れないし?」「はっ!なるほど!」
「ふふ、それで、まず口の軽そうな人に取り入って内部から店長と接触を図り姐さんのデータを取ります。次いでに探し人と言って成瀬力二さんの事も探します。らだおさんは犯罪者目線で探して欲しいです。追われてるという事は身を隠しているでしょうから、アングラからの方が多分早いです。」
「そうだね。特に夕コさんは警察の方には頼れないだろうから。」
「…無事ですよね。きっと。」
「きっとね。」
ーーーーー
ロスサントスのそれよりも狭い敷地に、ロスサントスの旧本署に似た風貌の建物が建っている。
「すみませーん!どなたか、いらっしゃいませんかあ!」
「……はぃ、はい、はあーい!どうしました?」
「あのう、ボクたち今日この街に来たんですけど、人を探してて…。」
「人探しですか!なるほど!」
来客用玄関にて、ケインとトピオの対応に出たのは随分気のいい青年だった。にこにこと笑ってトピオの話を聞いている。
「人探しってほどじゃないんですけど…レダーヨージローっていう…。」
「あれ!レダーさんのお知り合い?んー、彼最近出勤してないんですよねー。」
「え?」
あっけらかんとして青年は言う。
「あの、出勤してない、というのは?」
「えっと、十日くらい?前かな、退勤もしないで無線抜けて、そっから見てないですねー。」
「…なるほど。」
予想外だった。簡単に出会うことは出来ないだろうとは考えていたが、まさかレダーまでもが行方不明とは。
ケインは顎に手を当て考える素振りを見せる。と、トピオが警官に向けて牙を向いた。
「探してないんですか?」
「え?えっと、」
「仲間なのに?行方不明ってことでしょう?なんで助けようと思わないんですか?」
トピオは憤っていた。それは警官に対する嫉妬と、呆れ。自分の一番尊敬する人間が、ぞんざいに扱われているのが許せなかった。
「あの、」
「信じられない、先生のこと見捨てるんですか?危険な目に遭っているかもしれないのに!どうして!?」
「違うんです!!」
間に入ろうとケインが乗り出した瞬間、警官は叫ぶ。
「僕らにも余裕なんか無いんです!レダーさん一人でも強いって、知り合いなら分かるでしょう!?市民の方は守らないとです!けど、だけど!」
胸ぐらを掴まん勢いで叫ぶ。それはロスヨントス警察の悲痛な、抗うことの出来ない実状を語っていた。トピオは固まってしまう。
はっ、と警官は動きを止め、居住まいを正す。
「すみません、事件が起きてしまったので、…僕、行かないと。」
「はい、ありがとうございます。お気をつけて。」
「……ありがとうございます。」
警察署に戻る警官。扉の前で立ち止まり、振り返った。
「僕も!レダーさんには恩があるんです!見つかったら、…お礼と、謝罪、させて下さい。…失礼しますっ!」
警官は誠実だった。急ぎ中に入って行き、その数十秒後には屋上からヘリが飛び立つ。
その運転はレダーに似ていた。
「……すみません、ケイン先輩。」
「いえ、大丈夫ですよ。一番大事な情報は得られましたから。」
カッとなってしまったことを反省する。クソガキと度々揶揄されるトピオもその実いい大人だ。ロスヨントスの事情を知らずに声を荒らげる場面では無かったと省みて、自身の幼い言動を恥じた。
ただ有益な情報を得ることが出来たのも事実。レダーの行方が分かっていない。そう言ってしまえば最悪の状況だが、認識してしまえばやりようはいくらでもある。
用のなくなってしまった警察署を出ようと車に乗り込んだタイミングで、ケインの携帯に着信。
「【もしもし。】」
【こちららだお。えっと、今夕コさんと一緒にいる。】
「【本当ですか!?】」
【合流できる?俺らの宿に連れてく。そっちは?】
「【こちらはあまり良い状況ではないですね。店長が行方不明になっているようなのです。】」
【ああ、それについてもこっちで話せるわ。とりあえず集まろう。】
「【了解しました。】」
【はーい、じゃ切るね。】
端的な報告。しかし確実に前進している。今日初めてのいいニュースにケインとトピオは沸いた。
警察署から宿まではそう遠くない。すぐに行こうと二人は駆け出した。
ーーーーー
ああ、これはマズったかもな。
らだおがターゲットにしたのは、道行く人々にガンを飛ばし肩パンをするぶつかりおじさんの強化版のような男。らだおはどちらかと言えば頭脳派。その自覚はあるがあくまでも鍛えられた警察官、多少の荒くれ者なら対処出来るとタカをくくっていたのだ。
わざとぶつかられ、反抗し、ねじ伏せようとしたが一瞬の隙に薬物を打たれた。男はらだおを壁に押付け何度も殴る。マスクもキャップも吹き飛んでボロボロになった所で男は手を離し、人の言葉とは思えないような暴言を吐いて去っていった。
「あ゙ー…いってぇ……。」
「あの……兄ちゃん大丈夫?病院送るよ。」
目の前に手を差し伸べたのは髪のボサボサな中年の男。ホームレスのように見える男はらだおを立たせ病院へと連れていってくれた。
「あんなんこの街にゃ腐るほどいるんだから、いちいち警察も来てくんないし、気をつけないとだめだよ。俺もたまーに悪いことすっけどさ、兄ちゃんまだ若いし、道はあるよ。」
勘違いしたのか諭してくる男にらだおは「はあ、はあ、そうですね。」としか返せない。まあ確かに、ロスサントスでは道端の心無きを殺したところで警察に通報なんて行かない。それと同じだろう。相手が心有りになると治安は最悪になるのだと思い知る。
病院に着き医者に引き渡される。男に礼を言えば「いいよ、くれぐれも死なないように気ぃつけな。」と去っていった。
「随分ひどくやられましたね。まあ折れてないのが幸いです。こっちは薬抜くやつなんで、飲んで暫く経過観察かな。」
治療を施され薬を渡される。請求額に顔を顰めながらロビーに戻ると、思わぬ人物の姿があった。
「……ぇ。夕コ、さん?」
「っ!?は?」
呟きを拾った女性が勢いよく振り向く。座っていたベンチが音を立て、周りの人から注目されてしまう。
がし、と肩を組まれて半ば引きずられるようにして病院を出た。
「誰?見たところ追っ手では無いよね?敵?味方?」
「あー、すいません。俺、青井です。青井らだお。」
「…………あー!アンタか!…いやわからん!?なんでこんなとこいんの?」
病院の裏手で夕コは身振り手振り大きくらだおを質問攻めにする。
「貴女の弟の力二くんが行方不明になったんで、着歴からココ割り出して、連れ戻しに来たんす。」
「ああー……アイツ周りに言ってないのかぁ、そっかそっか、なるほどね。」
「あの、夕コさんの方は、なんで病院に?」
「ここギャング入って来ないのよ。ルールなんか通用しない街の、唯一の安全地帯?前科者は入れない。だから匿ってもらってるわけね。」
「なるほど……。」
自分を送ってきた男が入口で立ち止まった理由が分かった。彼も闇に生きるものだったのだ。
「てか、着歴見たってことは、アタシからのメールともう一個見たでしょ?」
「あ、はい。そうなんですよ。むしろそっちが本命というか。」
「あのメールは偽物だよ。」
「え゙っ!?」
トトト、と軽快にスマホを弾き、夕コは画面を掲げる。
「ここ、アドレスが違う。見たやつ、「たこ」になってたっしょ?アタシは「ゆうこ」。このメールは、アタシの追っ手が力二を誘き寄せる為にハッキングして送ったやつやね。」
「ええー……。じゃ、レダーさんのも、」
「偽物だね。」
市長権限を行使してまで見た着信履歴。その着信自体が偽物であるということを考慮していなかった。否、普通は気づかないだろう。
いよいよらだおは頭を抱えてしまう。
「…あ、成瀬は?カニの方、無事なんすか?」
「ああアイツは元気だよ。レダーさんに逃がしてもらった後に合流して、今は表立って動けないアタシの代わりに小遣い稼ぎしてるわ。」
「あー…良かった、って、え?今、逃がしてもらった、って。」
「あー、そう。レダーを目当てに来たんなら、酷だけど、アイツには今会えない。……アタシを逃がして、逆に捕まってる。力二に資金繰りしてもらって装備整えたら突っ込むつもりだよ。」
拳を握り込んで夕コは話す。
「って言ったら、君は来てくれるんだろ?」
「……俺だけじゃないすけど、もちろん。助けますよ。困ってる人がいるなら。」
ーーーーー
「夕コさん!」
「おートピオ久しぶり。てかお前らこんだけで来たの?ははっやんじゃんw肝座ってんね。」
「お久しぶりです、姐さん。」
三人なら割と快適に使えていた部屋も五人となると少し狭い。なお五人の内訳はケイン、トピオ、らだお、夕コ、そして力二である。
後から合流した力二にらだおは「とりあえずね?」と言って一発ぶん殴った。行先誰にも言わず勝手にトんでんじゃねえぞ、と。その後らだおも夕コに殴られていた。俺の弟に何晒しとんじゃ、と。
ケインがここに至るまでの説明を夕コにし、レダーについての話の詳細を求めた。夕コは頷き話し始める。
「アタシが警察してた頃の部下がいてね。可愛がってたんだけどさ〜、裏切ったのよ。アタシに汚職の罪を着せて署長の座から引きずり下ろした。元々オンナってだけで風向き悪かったし、上から言われてもいたんだろうね。そんで、アタシは「あ、これ無理」ってなってここを出た。レダーとか音鳴とかは追っかけてきてくれたんよね。そこまでは良かったんだけど……。」
夕コは顔を曇らせる。
「……アイツ諦めてなかったみたい。アタシを殺そうと乗り出してきて、力二にも偽のメールを送って誘き寄せた。大方、アタシのこと逃がしたせいで上からいろいろ言われたんだろうね。」
「理不尽だろ……。」
「力二、それはいいから。」
力二が苦々しそうに呟く。最愛の姉を殺されそうになった、到底許せることでは無い。
「ええと、どこまで行った?ああそう。それでアタシ、レダーに頼ったんだよ。アイツもアイツで警察なんかやってたし、上手いこと逃がしてくれた。陽動なんかもやってくれたみたいね。ただそれが、」
「相手方の反感を買った……。」
「そゆこと。それで捕まっちゃって……今は、行方知れず。この街にはいるだろうけど、まだ掴めてない。」
今度はトピオが俯く。震える拳を必死に抑えているようだった。
それを横目で見たケインが姿勢をただし、らだおと成瀬姉弟に頭を下げる。
「え、ちょ、なにやめてケインくん顔上げて?」
「お願いします。どうか、店長を助けるのを、手伝って頂けませんか。……ここまで来てお願いするのは厚かましい事と分かっていますが、どうかお願いします。我々とともに、店長を助けてください。」
「っ俺からもお願いします!先生のために、俺たちだけじゃっ、……お願いします!」
限界だった。どうして我慢が出来ようか。
自分達の敬愛するボスであり、マスターであり、師である彼を、黙って放っておくなんて出来ない。
でも二人では何も出来ない。それも、分かっていた。
「トピオ。ケインくん。そんなンしなくていいよ。」
夕コが頭をつく二人を制止する。
「力二。お姉ちゃんからもお願い。また迷惑かけちゃうけど、巻き込んだのはアタシだから。手伝って?」
「あ〜…まあ、そうなるだろうとは思ってたけど。……いいよ。姉ちゃんの命の恩人だしな。」
ぽり、と頭の後ろをかいて力二も承諾した。
全員の視線が、らだおに刺さる。
「……ゃ、俺は元々そのつもりで来てるから…。手伝えって最初に言ったのそっちでしょ?最後まで付き合うよ。」
「ぃよっしゃー!パーティー結成だね。これからよろしく?らだおさん。」
「まあこんだけヘリ乗り集まってたらすぐ見つかりますよ。」
「それはそう。全員ヘリ乗れる?もしかして。」
「乗れますね。」「最強かよ。ワロタ。」
「じゃあ、調査開始。行こう!」
「「はい!」」
断言しよう。この五人ならば、絶対にレダーを救い出せる。
必ず。無事で。
ーーーーー
「ケイン先輩……あのヘリ、ずっとあそこ飛んでません?」
最初に調査を進展させたのはトピオだった。自警団ばりに街を彷徨き聞き込みに聞き込みを重ねて、一先ず休憩でも取ろうと小さなカフェに入った時。テラス席の腐りかけたベンチからトピオは空を見上げていた。
「ほらあの、おっきいビルの周り。」
「……そうですね。一定の航路があるのではないですか?」
「いやでも、ビルの周りぐるぐるするだけなんすよ。なんか、目的地があるっていうより、見張ってるみたいな……。」
「ふむ。……見に行ってみますか。」
ガタリとケインは立ち上がり、レモネードとココアとチェリーパフェだけの注文表を持つ。どれも器は空になっていた。
「いいんですか?」
「トピオさんが違和感と思うならそうかもしれませんし、無駄骨でも構いませんよ。今は藁にも縋りたいですから。」
「それ信じてないですね?まあでも、ホントに気になっただけなんで…。」
飛行場に停めてあるヘリで近づこう。二人はお釣りなしで勘定をしてカフェを後にした。
ーーーーー
「何者だ。」
「……いやあ、ちょっと空を散歩してるんですよ。」
件の上空。二機のヘリが向かい合いホバリングしている。片方は怒号のようにもう片方に素性を尋ねる。
「ここは一般人が飛んでいい場所じゃない。公用の管理区域だ。即刻立ち去れ。」
正当性があるかと言えば微妙だが、つつくには不確定。そもそも手を出すほどの理由をコチラは持ち合わせていない。
「どうします?私は、これ以上踏み込むのはオススメしません。」
「うーん……。や、帰りましょう。マジであの人怪しいっすけど、今は。」
先の警察署での反省を活かして、今は耐える。高圧的な態度、制服からエンブレムだけ外したような衣服、警察の物を上から塗り潰して覆い隠したようなヘリ。どこを取っても自分達の探し人に繋がっているように思えてしまうが、その全てが憶測だ。
トピオの操縦するヘリ(尚ケインのヘリ)はフルスモーク、外からでは運転手が確認できないようになっている。対して相手はピカピカのスケスケ。ケインはその丸出しの男の顔面を、しっかりメモリに記憶した。
地上に降り、トピオは溜息を吐いた。ロスヨントスに降り立ちはや三日。トントン拍子に進んでいたのが行き詰まってしまっている。
疑心暗鬼になって見る物全て怪しく見える。これは良くない、と頭を降って姿勢を正した。
雲間から光差すようにケインの携帯が震えた。発信主は、
「トピオさん、昨日の警察官から電話です。」
ケインは昨日、警察署を後にする直前に自身の携帯の番号をメモに走り書き、受付のペーパーウェイトに挟んでいた。「人探しをしている者です」と付け加えて、あの警官にだけ分かるようにと。無事に伝わっていたらしい。
「スピーカーにします。……【もしもし。】」
【あっ!繋がった!良かったあ!えと、僕、昨日対応させて頂いた警察の者です!】
「【はい。…何か、ありましたか。】」
【えっとですね、まず、僕も少しだけ調べたんです。昨日言ってもらったこと、もう一回考えて。】
「【あ……、その節は、怒鳴ってしまってすみませんでした…。】」
電話越しというのにトピオは律儀に頭を下げる。しょぼくれた声を聞いてか電話の向こうで相手は焦ったように捲し立てた。
【わあ謝らないでください!おかげで!レダーさんが居なくなる直前の、監視カメラの映像を見つけたんです!】
「【何!?】」「【そっ、そのデータって、送って貰えませんか!】」
【……これは、本当はいけないことなんですけど、…流出になっちゃうし……でも!外に漏らさないと約束して貰えるなら!僕が責任を負います。】
警官は覚悟を決めていた。彼もまたレダーを慕う人間の一人なのだ。
この程度で解雇できるほどヨントス市警は人手に余裕ないですから!と言い放って彼は笑う。
【見ず知らずのお二人にお願いするのは、警察として恥ずべき事だと思います。でも、どうかお願いします。レダーさんを見つけて。】
「【もちろんです。】」
警官は願い、二人は力強く応じた。
ケインに送られた監視カメラの映像。二本あるうちの一本目は、ケイン達が初日に通ったあの下品な街だった。
レダーと思しき制服の人間が、黒服の男に襲われている。応戦するが数が多い。数分戦闘が起こり、最後にはレダーは地面に突っ伏した。
二本目。レダーが引きずられヘリに押し込まれる映像。これは死角を狙ったのか見切れている。しかしこのヘリには見覚えがあった。それも直近の、つい先程の、あのヘリだった。
「……ケイン先輩。俺今日冴えてるかも。」
「そのようですね。これは、皆さんにも共有しましょう。」
レダーの襲われるところを画面越しに見たトピオは殺気を強く放つ。ケインも同じ。
至急、夕コに手がかりを掴んだ旨を伝え、警官には例のビルが公用管理区域なのかとメールを入れる。間髪入れずに返ってきた返信には、「そのような場所はこちらでは確認していない。」とのこと。
「姐さん達と合流しましょう。再度、作戦会議です。」
トピオはヘリを発進させた。
ーーーーー
「……まさか空にいるとはね。どうりで見つからん訳だ。」
再び夕コ達と合流し、ケインは今日得た情報を共有する。
「いつの間に警察に取り入ってたん…?よーやるわ本当。」
もちろん貰った動画データは見せずに口頭だけの説明で済ませた。約束は守る。
「そのビルでほぼ確って感じか。……いつ凸る?」
「「今日!」」
「だよね。」
力二が腕を組んで発した言葉に夕コとトピオがハモる。早い方がいい。勢いのある今こそが好機。
夕コはペンを取りだし裏紙になにやら絵を描きだす。
「この丸をビルとして、……アタシは外で、ヘリやろうと思う。撤収役も兼ねて、その見張りのヘリ落とすよ。」
「賛成。姉ちゃんの行方を聞き出すためにレダーさんが捕まってんなら、わざわざ敵んとこ突っ込んでレダーさんの人質価値落とすこたないよ。そーいうわけで俺は中やる。らだお、お前は怪我してんだからヘリ。」
「あ、はい。」
円の周りに名前を書き連ねていく。小さなヘリの絵には夕コとらだお。
円の中には力二、そしてケインとトピオの名前が書き込まれた。
「俺まず突っ込むんで、あー、行きの運転はどっちかに頼みたいわ。」
「では私が操縦しましょう。ヘリは計三台ですかね。」
「あの……、」
おずおずとトピオが手を挙げた。全員の視線がトピオに向く。
「この戦い、殺しちゃいけないとかありますか?」
「あー……。」
レダーは未だボスである。その権限を捨てずに帰った以上、今この状態はギャングに喧嘩を売ったも同然。
敵に回してはいけない、精鋭、868に。
加減などできるわけが無い。
「ま、俺ら今警察業務でここにいる訳じゃないし。」
らだおの柔軟さがトピオのタガを外した。にやりと笑って見合う。
「元がついててもロスサントスの仲間だもんな。容赦とか、要らないだろ。」
「あ、でも女がいたら生け捕りにしといて。アタシお話したいことあるわ。」
「了解。」
それじゃ、と立ち上がり、夕コはハンドガンを握った。
「ラプンツェル救ったらたっかーいお酒でも奢らせようぜ!」
ーーーーー
冷たくて、固い床。
ひとつしか無い窓はベニヤで塞がれていて、光源は天井からぶら下がったライトのみ。
快適とは言えないそのワンルームに、レダーは監禁されていた。後ろ手に手錠、椅子に括り付けられてひたすらに拷問される。体内時計的に今日で九日、いや十日か?と思案していたレダーの前に、過去警察試験で落とした気がする悪漢が立っていた。
男は注射器を持って笑う。
「自分から言った方が楽に終わるぞ。さっさとあの女の居場所を吐け。」
「さあ…ね、……俺は、知らん。」
言い終わらないうちに拳が飛んでくる。とっくに口の中は切れて血みどろだった。
男はレダーの髪を荒く掴み顔をあげさせる。
「ボスの命令なんでね。こいつは自白剤と覚醒剤のミックスさ。」
「……そりゃ、贅沢だね。わー…こわいよー……。」
「ほざいてろ。」
ちくり、なんて生易しいものではないが、じわじわと薬液が体内に入っていく。
この薬準備するだけで十日もかかったのか。最初から使っていればいいものを。
痛みの裏にぼんやり考えていた。そっちがその気なら、舌を噛みちぎってやる。
ドカン!
外から爆発音。男の意識が窓の外に向く。
その一瞬の隙を、レダーは逃さなかった。
「っな!?貴様!どうやって、ッグあぁ!」
左手の関節を外して手錠から抜け、男の胸ぐらを掴んで右フック。顎にクリーンヒットしたらしく、ぐらりと男は倒れた。
「っはー……いってぇなァ……。」
荒く治療はされていたが、今の一連でまた傷が開いた。それすらも気にならないほどに、今レダーはハイになっていた。おそらく覚醒剤が仕事をしたのだろう。
無理やり左手の関節を嵌め込む。外からはこの部屋に向かってくる足音がしていた。
「さっきの爆発なんだろ……。救助来たんかな。」
「お前!何をしている!!」
乱暴に開け放たれたドアから雪崩込む敵の軍勢。レダーはさっき倒した男から銃を奪い、構える。
「悪いけどなんの情報も渡す気は無いよ〜。おたくら、ちょっと甘すぎるんじゃない?」
引き金が引かれる。
最前の男が吹き飛ぶ。それを合図にして、建物は地獄と化していった。
ーーーーー
「しっかし弱すぎねえ?こいつら数だけだぞ。」
「ですがいかんせん数が多いですね。そろそろ弾が……。」
「俺まだあるんで使ってください!」
らだおが囮となって夕コが見張りを墜落させ、ケイン、トピオ、力二は屋上から中に突入していた。(尚、夕コのヘリは飛行場の整備中のものを盗んだやつである。)
どの扉を開けてもどの廊下を走っても人がいる。その全てを滅多撃ちにしていれば弾も順当に減っていく。ケインはトピオから貰った7mmをリロードし、また構える。
力二が先陣を切り突き進む。トピオが殿となって撃ち漏らしを殺っていた。
「っおらァ!!…あ?」
「ひっ!いやあああ!!」
五階層ほどノンストップで走り降り、蹴破ったドア。そこは事務所のような場所。女と、側近のような男が数名。
力二は男らを順繰りに撃ち殺し、最後に女に照準を合わせる。
「…あは。ケイン、トピオ、先行って。俺この人説得して捕まえとくんで。」
「わかりました。ではまた後ほど。」
机の陰に隠れる女に力二は笑う。今更なに馬鹿な真似を。
「オネーサン、俺の事知ってますよね?…はは、じゃ、お話しましょうか。」
「成瀬さん大丈夫ですかね。」
「大丈夫でしょう。むしろ我々が居た方が邪魔になります。」
成瀬と別れた二人は走り続けていた。
先程から出くわす敵の数が減ってきている。警備が甘いと言えばそれきりだが、そうではなく、まるで何処か別の場所に人員を割いたような。
曲がり角に、人が倒れている。脳天に穴が空いている。つまり撃たれて死んでいる。その弾道を辿って顔を上げれば、突き当たりの部屋に沢山の人が折り重なって倒れていた。
その中心に、一人、銃を持つ手を脱力させ立ち尽くす男。
「…っせんせい……?」
トピオが足を早め駆け寄る。レダーはゆっくりとこちらを向いた。
「店長。無事でしたか。」
「…あ?ケイン?トピオもいる〜…。あはは。」
「せんせ…?会いたかったです。俺…。」
「ん〜久々ね、トピオ。また後で話そ。俺もう落ちるわ。」
ぐらぐらと頭を前後に揺らすレダー。改めて見れば出血が酷い。そして首筋の注射痕。
「店長。何打たれました?」
「えっとね…覚醒剤と、…自白剤?お陰で殺れたけどね〜。」
「え、コレ全部先生が…?」
「ん〜そうよ〜、…あ、ゴメンもう、無理。」
膝の力が抜けてレダーが倒れる。地面につく一歩手前でケインが抱きとめた。
まさか感動の再会がこんな事になろうとは。
「…とりあえず。ここを出ますか。」
「ですね。うわ〜…先生だ…。生きてる…。」
「お、見つかった?」
気絶した女を俵担ぎにして力二が合流する。女への「説得」も終わったようだった。
おおよそ無事とは言い難いがとにかく生きて見つかった。その事実があるだけで良かった。
トピオがレダーを背負い、その体に温度がある事を実感する。目覚めたら何を話そう。ヘリが上達したこととか、あとは鯵とばーどさんとルナが入ったこととか。
とにかく、我らがボスは真っ赤な部屋には似合わない。警察の服もいいけどやっぱり部屋着でソファに寝っ転がってるのがいいのだ。
「帰りましょうか。」
心の底から安堵して、満面の笑みを浮かべる。
やっと笑った868の妖精に、ケインは微かにファンを鳴らした。
ーーーーー
「あいつらこれからどーすんの?レダーさん連れてくのかな。」
「さあ?とりま俺らは帰るよ。成瀬おまえ帰ったら説教な。」
「ウワー。」
屋上から二機のヘリが飛び立つ。らだお操縦のヘリには力二が乗り離陸。
ケイン操縦のヘリには助手席に夕コ、後部座席にトピオと、トピオに膝枕をされながら未だ目覚めないレダーが乗っていた。
「はあ、流石に疲れたわ。」
「お疲れ様です。本当、無事でよかったですよ。」
「いやそれなー。ダーさんいなかったらマジ死んでた。」
コキ、と首やら肩やらを回して夕コは脱力する。バカンスに行ったはずなのにな。旅行の〆にはカロリーが高すぎたな。と窓の外、眼下に広がる馴染みの街を見て考えた。
「ひとまず病院に行きます。店長を診てもらって、その後…。」
「…連れて帰る?」
夕コはケインに訊ねる。
出会った時より遥かに人臭くなった、健気なロボット。主の為にここまでCPUを揺らせる機械が、どこにいるだろう。後部座席をチラ、と覗けば、トピオが愛おしそうにレダーの頭を抱えていた。
ケインは数秒黙り、それでもはっきりと答えた。
「…………いえ、警察署に送ります。ですが完全に回復するまでは、我々が独占しても、…許されますかね。」
「…んふ、いいんじゃない?」
にくい男だ。レダーヨージロー。
こんなに可愛い部下を置いて行くなんて、勿体ないよ。
夕コは口角を上げて、また窓の外に視線を移した。
ーーーーー
「…トピオ?」
悪い夢を見てた気がする。誰かの呼ぶ声に起こされて、目を開けたらそこにいるのは、自分の一番大切な人。
「…っせんせい!起きたんですか!」
「おはよ。お水くれる?」
「はい!」
まだちょっと疲れた顔をしてるけど、再開した時より顔色はずっといい。ふんわり微笑むその顔が、ずっとずっと見たかった。
そうだ、先生に会ったら話したかった事。
構成員が増えた事、俺運転のヘリに乗って欲しいこと、ううん。それよりも先に、
「お久しぶりです。…せんせえ。」
ウオー!終わったー!!
これにて【完】です。以下入れられなかった要素及び補足。↓
らだおがレダーの帰国を確信したのは本署のパトカーの修理に来ていたねずみさんと話した時。ねずみさんホットドッグ屋さんと仲良いの?最近見ないよね〜…という流れがあり確信に繋がった。
レダーはそもそも手紙のことをすっかりさっぱり忘れていました。ケインに怒られなさい。
トピオがらだおと話して泣いたタイミングで実はレダーは酷い拷問を受けていました。レダーが死にそうになってもう永遠に会えなくなるかもしれなかった。このタイミングで言い出せて良かったね。
成瀬力二のエンドに関して、配信のリアタイの記憶とwikiのみから抽出したものになっています。解釈違い、矛盾等ありましたら申し訳ないです。ちなみにメールアドレスが違うのは当時ツイッターの考察にあったもので真偽は定かではないです。多分あってる…はず。メール自体が偽物なのは可能性高いです。夕コを裏切った女は力二の携帯をハッキングしていたようです。
モブの警官くんはロスヨントスに戻ってきてからのレダーの部下でした。ドライな性格を受け継ぎつつ元々の熱さでケイン達に協力を扇ぐ、キーパーソン的存在。でしゃばらせすぎました。
他、長くなるので設定資料的なの独り言の所に投げておきます。よければ。
フォロワー1000人達成企画でした!
入れたい言葉の提供をして下さった皆様!ありがとうございます!全部入れた!しかし捏造が酷い!
字を書き始めてもう二年経つんですね。早い。こんなにたくさんの人に見てもらえるようになるとは。感謝してもしきれないです。
重ね重ねになりますが、改めて!
フォロワー1000人、ありがとうございます!
ねこにんじん