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ブラネロ
⚠️ あまあま 平和
(ブラッドリー視点)
俺はブラッドリー・ベイン。
元盗賊のボスだった。今はスノウとホワイト、フィガロとかいうあいつらに捕まっちまった
今夜、ネロが明日の朝の仕込みをしているのは知っている。昔の盗賊をしていた記憶を思い出させるようなネロの料理の匂いを漂わせている。
香りの溢れる換気口を抜けると、ネロの気配がすぐそこにあった。
ネロ、今日はこの仕込みの香りで眠れなかったんじゃないか?そう耳元で囁くように言うと彼は手元の包丁を止め、こちらを一瞥した。相変わらずの微笑みだ。ネロの瞳にはかつて忠誠と今の静かな決意が混ざっている。だけど、それだけじゃない。夜風を含んだ空気の中に少しだけ甘いものが混ざっている。まるで、俺の心にも灯りを灯してくれてるような。
ネロ、朝ぶりだな。ネロの手の動きは相変わらずていねいで、その指先が鍋の縁を撫でるたびに、遠い昔の痣みたいな痛みがほんの一瞬だけ疼く。
「…ブラッド、来てくれたのか。今日は特別な日じゃないけど、お前のために一皿作ったんだ。食べろよ」
ネロの声は今日も穏やかで、でもどこか芯の強さを隠している。そんな彼の口元が、昔の戦い場で見せたあの冷たい微笑みとは別種の温度を帯び始めているのがわかる。俺はその温度を、心の奥でじっと受け止めた。
ネロ、それを俺に見せてくれるのか。昔の俺にはそんな慈悲のような料理は似合わないと思っていた。だが、今のネロは違う。彼の皿には過去を赦すような甘さと、未来を守るような堅さが混じっている。俺はその一皿を一口、口に運ぶ。
ネロ、お前の作る料理はいつもそうだ。傷を優しく包み、痛みを少しだけ薄めてくれる。料理だけじゃない。ネロの声、ネロの仕草、お前の存在そのものが昔の俺の夜を温めてくれる。
「ネロ、今日はこの灯りの下で、もう一度だけ言わせてくれ。お前と過ごすこの時間が、俺にとってのーー」
ネロの頬が淡く染まる。くすぐるような恥ずかしさと揺るぎない決意が混ざって、彼は静かに眉を寄せる。キッチンの奥で揺れる鍋の湯気が、2人の距離をほんの少しだけ短くしてくれる気がした。
俺は席につくと、ネロの腕が円を描くように動くのを見つめていた。
昔、仲間として支え合っていた頃と変わらない。やさしい手の温もり。
ネロ、おまえが変わらずここにいることが、今の俺には何よりも甘い事実だ。
二人だけの夜と香り。
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