空を見上げてみよう
上を見て歩こう
その当たり前が僕はできない
─────もうすぐ彼が亡くなって 5回目の冬がくる
──5年前
「今日だよね、ないくんたちが遊びにくるの」と赤髪の青年が満面の笑みを浮かべながら水色髪の青年に話しかけた
「りうちゃんずっと楽しみにしてたもんね。僕もみんなと久しぶりに会えるの楽しみ」
水色髪の青年、hotokeは、赤髪の青年りうらを
みながらそう答えた。
「だってもう半年も会ってないんだよ?!前まで毎日会えてたのにさー」
不貞腐れながらも赤髪の青年が答えた。
彼らは1年前まで6人で同居していたのだ。が、各メンバーの事情が重なり同居し続けることはできなくなってしまった。その結果、東京に子供組の3人、遠く離れた県に大人組の3人が住むことになったのだ。
各メンバーの予定が合わず、やっと今日全員の予定があった。
大人組の3人は、飛行機でこの東京までやってくるのだ
「まぁないこもいふくんもアニキとの思い出たくさん作ろうやっ!」
どこからか急に現れた白髪の青年初兎がカメラを構えながらそう言った。
東京某所
とある家に3人の青年達が集まった。
りうら、hotoke、初兎
彼らは6人で歌い手グループ「いれいす」として活動している。
彼らは笑顔を絶やす事なく3人をも待っているのだ。
この笑顔は絶えることはない
────絶えてしまったらならないのだ
「ないくん達遅くない?」
りうらが時計を見ながら少し不安そうに言った。
「離陸時間が遅くなったんじゃない?このポテト美味しい」
hotokeが机の上に置いてあるりうらのポテトを食べながら言う
「それりうらの!」といいながら、りうらはhotokeからポテトを取り返した
「まぁまぁ落ち着いてや。ほらテレビでもみて」
初兎がテレビの電源を入れ、見始めた
りうらとhotokeは、静かになりテレビに没頭し始めた。
18:00
「ここで臨時ニュースをお伝えします」
とある映画を見ていたのに急にニュース番組に変わった。
りうらは「ちょうどいいところだったのにー」といいながら、ポテトを食べ始めた。
画面ごしのアナウンサーが淡々とニュースをつげていく。
3人はだらっとしながらも画面を見続けた。
『先ほど、562名を乗せた──便が墜落したとのことです』
そのニュースを聞いた瞬間、3人が目を大きく開いて画面を見つめた。
それは今飛行機で来ている大人組の3人を思い浮かべたからだろう
「墜落かぁ、大丈夫かな」
りうらが大人組3人のことではないかと思ったのか他人事かのように言った。hotokeをそれに頷きながらテレビを見続けた
ただ初兎だけが固まって、画面から目を離さないでいた。
それをみた2人が初兎を不思議そうに見つめる
「な、なぁこの飛行機アニキ達が乗るっ言うてた便と同じや……」
声を震わせ、画面に映る飛行機を指差しながら言う
🤪side
17:22
俺たちが乗っている航空便は
────墜落するだろう
鳴り止むことのない悲鳴。あるはずだった笑い声、笑顔。それが悲鳴、鳴き声、叫び声、絶望に満ちた顔に溢れている
一生見ることはないと思っていた緊急時に落ちてくる酸素マスク。酸素マスクが落ちてきてからもう20分が経過しようとしている。
横をみると、パニックになっているないことそれを宥めるアニキ。
今の俺に何ができるのか────
きっとそれはこれからも生きていく人に向けてへのメッセージを託すという事だと思う。
そう考えて俺は、手荷物のバックから身分を示すための免許証、紙とペンを取り出した。
紙にペンを滑らせ、託したいことをかいた。
家族、メンバー、リスナーさん、友人
伝えたい人はたくさんいるけれど残念ながら、俺らに残された時間は少ないだろう。
10秒ほど前から異常だとわかるほどの急降下がされている。
スマホを開き、🎲メンバーのグループに一つの言葉を残しておいた。
「上を向いて歩けよ」
きっと残された3人にとって、空は苦手なものになるだろう。
それでも上を、前を向いて歩いて欲しい。
本当に送ることができたのかはわからないけれど、送ることができたと信じて俺は永遠の眠りにつくことにしよう。
1人じゃない。ないこもアニキも一緒だ。
寂しくなんてない
まぁ心残りがあるとしたら黒歴史並の動画を削除してなかったことか。
ほんとうに楽しい人生だった。
今までありがとうな。
if ないこ 悠佑
X月X日17:45 航空機事故により永眠
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