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🦈×🙂(不穏)
🦈視点
部屋の灯りは落としてあった
カーテンの隙間から入る街灯が、木の床に細い線を落としている
スマイルはソファに腰を下ろしたまま、動かなかった
いつもの表情だが、違和感があった
俺は何も言わず、少し離れた場所に座る
近づきすぎず、遠すぎない距離
それが、二人の間ではいちばん自然だった
「……来なくてもよかった」
スマイルの声は低く、乾いていた。
彼の目を見つめた後に目を伏せて
首を横に振る。
「来たかっただけだ」
「だから、気にすんな」
それ以上は何も言わない
スマイルが時々こうなる夜があることを
俺は知っている
スマイルの口から理由が語られることない
それでいい
触れない、という選択
人によれば「無慈悲」「残酷」とも受け取れる
しかし、俺達においては最良の選択だ
俺はテーブルにコーヒーを置いた
スマイルの手が届く位置
直接は渡さずにスマイルのタイミングを待つ
スマイルは少し遅れて、それを手に取った
「……ありがと」
「冷める前に飲め」
しばらく、スマイルのココアを飲む音と時計の音だけが部屋を満たす
スマイルはカップを持ったまま、視線を落としていた
「俺さ」
不意に、スマイルが言った
俺は返事をしない
続きを待つ
「……たまに、戻るんだよ。あの頃に」
それだけ
具体的な言葉はない
「ふーん」
否定もしないし、慰めもしない
ただ、事実として受け止める
スマイルは少しだけ、肩の力を抜いた
「シャークんがいるとさ……楽になる」
「そっか」
踏み込まない、 けれど、離れない
それは俺のポリシーだった
スマイルは小さく笑った
「……ずるいな」
「今さらだろw」
背もたれに深く身を預ける
俺は視線を外し、
彼の笑顔を見て火照った顔を隠すために
窓の外を見る
同じ部屋にいて、同じ夜を過ごしている
それで十分だった
救う、救わない
どちらの選択も取らない
ただ、ここにいる
それができるのは、たぶん——
お互いが、お互いを信頼しているからだ
夜は静かに明けていった