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コメント
3件
めちゃ切ないですね🫤 紫君の気持ち考えたらほんと悲しい😿💔短めだけどたくさんの内容入ってきてたのちかた✌️
失恋したから失恋系つくりました🙄
映画研究会の部室は、今日も散らかったままだった。
脚立の上には照明器具、机の上には脚本や使い古したDVD。最後の文化祭上映を終えてから、誰も片付ける気力を出さないでいる。
俺はその真ん中でカメラのケースを抱えながら、無意識に視線を追っていた。
視線の先は同じ部員のなつ。
長いまつ毛の影が横顔に落ちるたび、胸の奥がずきりと痛む。
赫「いるま。そっちのコード巻いといて」
なつが何気なく俺に指示する。
いつもの声だ。映画を撮っているときと同じ、頼れる監督の顔。けれど、俺にとってはずっと特別な響きだった。
この瞬間も、ただ友達でしかない距離が悔しい。 最後くらい、言わなきゃいけないのに。
_ 好きだ。ずっと前から、誰よりも。
喉の奥で言葉が震えた。
けれど、なつが笑って俺の方を振り返った瞬間、その言葉は霧のように消えていった。
紫「……そういえば、卒業後ってどうする?」
俺がなんとなく切り出すと、なつは肩をすくめた。
赫「まだ決めてないけど、映画関係の仕事は続けたいかな。アルバイトとかで細々でも、作り続けたいっていうか」
その声が近くで聞こえる。自然に、つい俺は顔を向けてしまう。
紫「 そっか 、俺はまだ迷ってる。大学は続けるけど、正直どんな方向に進むかはっきりしてなくて」
赫「いるまは、何か作りたいものとかあるの?」
なつの声、いつもより少し真剣で、でも柔らかい。
紫「うーん映画はもちろん作りたいけど、俺が作りたいのって、みんなに見てもらうよりも、自分で納得できるものを作りたいっていうか」
言いながら、俺は机に肘をつき、頭を支える。自然に目がなつに向く。
赫「 … なんか 、いるまらしいね 」
なつは少し笑った。
その笑顔に、また胸の奥がぐっとなる。無意識に、俺はまた視線をそらせず追っていた。
紫「なつはさ、将来結婚とか…考えてるの?」
軽い気持ちで聞いたつもりだったけど、返ってきた答えはちょっと意外だった。
赫「んー……結婚かぁ……考えなくもないけど、まだ先のことかな」
そっと肩をすくめるなつの仕草に、俺は心のどこかで安堵する。
今はまだ、俺の言葉が届く余地があるんじゃないか、なんて思ってしまう。
俺たちは机に肘をつきながら、文化祭の片付けの疲れを忘れるように、何気ない会話を続けていた。
赫「 そーいえば、山田さんと田中くん、付き合ったらしいね 」
なつが軽く笑いながら話す。
紫「え、マジで?あの二人?」
俺も思わず反応する。クラスの中でも結構みんなの注目カップルだった。
赫「そうみたい。昨日の放課後、図書室で一緒に帰ってたらしい」
紫「あーあ、最近そーゆうのばっか。」
俺が言うと、なつはくすっと笑う。
赫「ほんと、みんな順調だね。いるまはどうなの?誰か気になってる人とか……」
紫「ぇ、…」
その質問に、俺は思わず声が出る
紫「いや、別に……まだ、いないかな」
嘘ではない。でも胸の奥は言葉にできない気持ちでいっぱいだった。
なつは少し首をかしげて、にこやかに笑った。
その笑顔が、俺の視線をまた捕まえる。
無意識に、彼の仕草や目線、笑った瞬間の口元を追ってしまう。
赫「 いるま 、なんかぼーとしてない?」
紫「いや、別に……ただ、考え事してただけ」
嘘をつきながらも、視線はなつから離れなかった。 こうして俺たちは、ほんの少しの未来や周囲のカップルの話をしながら、互いに気づかないまま距離を縮めていく。 そしてまだ、なつが恋人を作ったという話は、この部室の時間には出てこない。
少し間があって、なつが視線を伏せる。
赫「……実は、俺、彼氏できたんだ」
その一言に、俺の心臓がぎゅっと締め付けられた。
紫「 …… ぇ 」
自然に出たはずの言葉は、予想外の形で俺の胸に刺さる。 でも、なつの顔を見ると、笑っている。 その笑顔を見てしまうと、怒ったり悲しんだりすることもできず、ただ俺は視線をそらすしかなかった。
紫「そ、そうなんだ……おめでとう」
ぎこちなく口にした言葉。
心の中では、ずっと言いたかった自分の気持ちは、やはり届かないままだった。
俺は机に肘をついたまま、なつの笑顔を追い続ける。
けれど、それはもう、ただの友達としての笑顔。 俺の想いは、部室の静かな午後に、そっと置き去りにされていった。
放課後の校庭は、夕日のオレンジ色に染まっていた。
俺は、部室の片付けを終えて校舎を出たところで、ふと向こうの方に目が止まった。
紫「 …… 」
赫「 〜〜、?笑 ーー 。 w」
なつが、見慣れた笑顔で誰かと楽しそうに話している。 その隣にいるのは、どうやら彼氏らしい。 肩を軽く叩いたり、冗談を言って笑い合ったり。自然すぎるその光景に、胸がぎゅっと締め付けられる。
俺は、思わず視線を追っていた。
無意識に、足も止まったままだった。
笑顔のなつが眩しくて、でも近づくこともできず、ただ見つめるだけの自分が情けなかった。
目の奥が熱くなり、気づけば涙がひとすじ、頬を伝っていた。涙 を止めようとしても止まらず、鼻の奥がつんとする。 誰にも見せたくないはずの、この感情が、夕日の光の中で隠せずに流れていく。
俺はそっと背を向け、足を動かした。
振り返ることもできず、視線を落としたまま、校舎の陰に隠れるように歩き出す。
好きだった。
その想いは、今も胸の中で燃えている。
けれど、なつの隣にはもう別の誰かがいて、俺には触れられない。
歩きながら、自然に涙を拭く。
そして、誰にも見えないように、静かにその場から離れた。 夕日のオレンジが、俺の背中をそっと包んでくれる。
切ない恋愛系かけました。
攻めが失恋するのが好みです🙄