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よう!皆の活動家、クサーイモン=ニフーターだ! 先日ワシントンD.C.で起きた爆破テロ事件は俺の心をこの上なく熱くさせた。犯人はイカれた薬中だったみたいだが、大事なのは宇宙人に対して行動を起こしたって事実だ。実行者がラリった狂人だろうと、その事実は変わらねぇ。この流れを止めちゃいけねぇ。
むしろこの流れを利用して、宇宙人共への攻撃を続けていくように世の中を動かすのが俺の使命って奴だ。イカれた薬中野郎には感謝だな。後は精々隔離病棟で寂しく人生を終えてくれ。娑婆に出てくるんじゃねぇぞ。
こうなると直ぐに放送を始めたくなる。こんなにも美味しいネタがあるんだ。今すぐにでも放送を始めたい。いや、実際に始めようとしていたのさ。台本も用意して、イカれたバカを最大限利用しながら皆の決起を促す最高にイカしたストーリーも組んだ!
そして今まさに放送を開始しようとした瞬間、トラブルが発生したんだ!
「そっちはどうだ!?」
「駄目だ、サイモン!完全にイカれてやがる!こりゃ使い物にならねぇぞ!」
「こっちもだ!回線がまるごと焼き切れてやがる!」
「なんだってんだ!?雷が直撃した訳じゃねぇだろう!」
俺は数人の仲間と一緒に機材を満載にしたキャンピングカーで合衆国の荒野を走り回っている。残念な話なんだが、俺が喋ると都合が悪い連中が俺を捕まえようとするからな。居場所を特定されるわけにはいかねぇんだ。
まあ、俺を捕まえようとしている時点で俺の言葉が真実だって認めてるようなもんだからな。最高の気分だ。
しかもちょっとした裏ルートで手に入れたジャミング装置でステルスもバッチリさ。軍の横流し品らしいが、大事なのは使えるかどうかだ。出所なんて俺には関係無いからな。ちょいと値は張ったがよ。
それなのに、急に機材のほとんどが使い物にならなくなったんだ!単なる故障とは思えねぇ!俺達は総出で修理をしているんだが、先行きは暗い。
「こいつだ!コイツが原因だ!おいサイモン!発電機だ!」
「なんだって!?」
「溜め込んでる電気を纏めて放出しやがったんだ!回路が焼き切れる訳だぜ」
「どうにかならねぇか?」
「無理だな、発電機はまだしも機材のダメージは深刻だ。残念だが、買い直した方が早いだろうよ」
「畜生!なんだってこんなことに!」
「まさか、宇宙人共の仕業か!?いきなり発電機がイカれるなんて考えられねぇ!」
「そうか、そうだよな!」
機材を動かすためにバカデカい発電機を積み込んであるんだが、どうやらコイツがトラブルの原因らしい。お陰でコイツから電力を引っ張ってた機材は軒並みぶっ壊れた。間違いねぇ、宇宙人共の攻撃だ!俺が流す真実に焦り始めたんだろうな!
だが甘いぜ!
「宇宙人共に屈するような俺じゃねぇさ!直ぐに移動するぞ!」
「わかった、機材は手配しておく!」
俺は長年合衆国政府から逃れてきた男だぜ。こんな事態に備えて拠点はいくつも用意してある!待ってろよ、直ぐに真実をばら蒔いてやるからな!
とは言え、数日間は放送できないだろうな。ネタは鮮度が命なんだが、背に腹は代えられんからな!
「アリア、何かしたね?」
『はい、マスターティリス。今回の件は例の扇動者の存在が影響を与えた可能性を否定できませんし、ティナの悪評が耳障りでしたので警告の意味を込めて制裁を行いました』
場所は銀河一美少女ティリスちゃん号のブリッジ。ティナ達は数日間の待機を余儀なくされてしまい、その間にティリスは船に戻り状況を整理しながら地球側の動向に注視していた。今回の事件は地球でも大々的に報道されているが、ティナ達の人命救助を前面に押し出すことで合衆国の不手際から意図的に話題を逸らしていた。この行為そのものにティリスは文句を言うつもりはない。必要な処世術だと認識しているし、合衆国の不手際として糾弾するつもりもない。
「警告の意味を正しく理解してくれると良いんだけどね。地球のアオムシも厄介だからなぁ」
『更なる砲艦外交を推奨します』
「それはティナちゃんが許さないよ。それに、地球人の性質から見ても抑え込むのは得策じゃない。このままじっくりと融和ムードを作り上げていく。出来れば使節団をアードへ招くところまでは行きたいかなぁ」
『地球側の意思統一が果たされるとは思えませんが』
「主要国の中でアードに友好的な国と先ずは国交を開く。まあ、直ぐに格差が生まれることになるだろうね。その時にもう一度意思統一を要求する。最終的には地球にも統一政体を作りたいしね」
『道程は遠いかと』
「地球人からすればね。平均年齢を見るに、世代交代は五十年あれば成せる。私達にとって五十年はあっという間だよ」
『つまり、今の段階から教育に干渉していくと』
ティリスの言葉は辛辣であった。少なくとも今の政体では成せないから次の世代に期待するという意味でもあるからだ。
「まあ、ティナちゃん次第だけどね。地球との付き合いも長い目で見る必要がある。百年後にはお互いに上手くやっていれば上出来だよ」
だが、ティリスの見通しは厳しすぎた。センチネルと言う共通の脅威は、地球の融和を後押しすることになる。
「ところで、今回は珍しく失敗したね? アリア」
『はい、事前に察知することが出来ませんでした。マスターフェルが居なかったらどうなっていたか。私の存在意義そのものに関わる失態です』
「相手は完全にアナログの手法を使ったか。地球人は侮れないね」
『今後は地球に存在する全ての監視機材および衛星を動員して監視体制を強化します。しかし、ティナ周辺の監視、月の開発と艦隊の維持、情報収集も平行して行っていますので限界があります』
「むしろそれらを全部やれそうなことに驚いているよ。ティナちゃんの周りに関しては気にしなくて良いよ。本人が要望しない限りはね。私達が居るし、なによりフェルちゃんは悪意に敏感だから」
『畏まりました。
……マスターティリス、たった今本星からのメッセージを受信しました。送り主はパトラウス政務局長です』
「パトラウスから? 見せて」
この時ようやく事後処理を済ませたパトラウスからメッセージが届いたのである。
それは一部のリーフ人による暴走、ティドルの負傷。セレスティナ女王の決断。そしてティアンナの復帰が記されていた。
『マスターティリス?』
「みっ……ミドリムシィイーーーッッッ!!!!!」
ティリスがリーフ人による暴走を知った瞬間である。