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――おいおい、いったいなにを考えて、こんなのプレゼントしてくれたんだ――


クリスマスイブだろうが盆暮れ正月だろうが、平日なら関係なく病院を開けていた本日。


無事にいつもの時間にベテラン看護師の村上さんが後片付けをしてくれた上に、美味しそうなご馳走をわざわざテーブルにセットしてから帰ってくれた。


小さなクリスマスケーキを前にして、ちょっとだけ緊張した顔の太郎が、いそいそとプレゼントを差し出した。それを受け取ってから、傍に立てかけておいた大きな包みを引っ張って、ほらよと手渡してやる。


「何が入ってるのかな、うひひひ……」


なぁんて言いながらサル顔をデレデレさせて、渡してやった包みをいそいそと開ける姿に、自然と笑みが浮かんでしまった。


「わっ、超カッコイイ!! ありがとタケシ先生」


俺の好きなブランド物を一緒に着てみたいと言って、デートしに行った店の洋服。このときは自分の小遣いで買うと言い張った結果、ラフなシャツしか買えなかった太郎に、そのシャツに似合いそうなコーデを考え、ジャケットとパンツをクリスマスのプレゼントにしてみた。


色違いのお揃いを買ったなんて、口が裂けても言えない――


目の前で喜んでジャケットを着込んでくれる姿に、嬉しくなって笑いかけたのだが唐突に恥ずかしくなり、俯いてそれを隠すと、膝に置いてある太郎からのプレゼントが目に入る。


(俺も開けてやり、有り難うを言わなければな――)


リボンがお洒落に巻いてある箱に手をかけて、紐解いてからゆっくりと蓋を開けてみた。


その中にはハガキ大くらいの紙の中に、俺と患者さんの笑顔が水彩タッチでほのぼのと描かれているイラストがあって……


胸の中がきゅっと鳴った。太郎の……いや歩の目に映る俺って、こんな顔してるんだ。


どんな顔をしていいか分からず、上目遣いで目の前の恋人を見たら、


“p(-x-〃) イジイジなぁんて、ちょっといじけたサル顔を見せた。きっと俺が何も言わないものだから、気に入らないとでも思ったのだろう。相変わらず、面倒くさいヤツ――


「よく描けてるじゃないか。嬉しいよ歩」


俺にしたら褒めてやった言葉だというのに、まだ物足りなそうな表情を浮かべる。ワケが分からず眉根を寄せると視線を逸らしながら、


「プレゼント、その絵だけじゃないから。箱の中にある厚紙を除けると、もうひとつのプレゼントが出てくる……」


歯切れの悪そうな感じで教えてくれたことに、イヤな予感がしまくった。隠し事をしたときに限って、こういう態度をとるからな。


とりあえず呼吸を整えてから厚紙を横に除けて、白い洋服みたいなものを目の前に広げてみた。パッと見、ただの白衣だと思ったのに――


「何だ、コリャ(・ ̄□||||!!」


驚くのも無理はない。だって背中にキュートな羽のついた、超ミニ丈のナース服だったのだから!


「えっとぉ白衣の似合うタケシ先生なら、ナース服もアリかなと思って」


太郎の言葉に、思いっきり顔を引きつらせるしかない。何を考えてるんだ、コイツは――


額に手をやり呆れ返ったときに、スマホがLINEの通知を知らせるべく、着信音が鳴った。相手は涼一くん。向こうも桃瀬からサンタのミニスカコスチュームをプレゼントされ、困っているとのことだった。


首謀者は誰だ――?


微妙すぎる空気が流れる中、鋭い視線で太郎を見ると――・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)明らかに困った顔をしている。


喜んでない姿を見て落ち込んだのか、はたまた怒っている俺を恐れているのか。


「ね、それ着てみてよタケシ先生」


一度だけ俯いて何か考えついたのか、俺を見つめながら顔を真っ赤にさせつつ、ものすごいお願いをしてくれた。


だったらそのものすごいお願い、叶えてやろうじゃないか!


「着てやってもいい。ただしお前がまずコレを着たらな」


椅子から立ち上がって太郎の目の前に跪き、体にナース服をあてがってやる。


「なっ、何でだよ?」


大きめなサイズなんだろう、コイツでも着られそうだ(笑)


「何でって決まってるでしょ。看護師志望のお前に、ピッタリじゃないか」


ナース服を押し付けるように手渡し、冷たく背中を向けた。


「お前が着ないなら、俺も着ない」


恥ずかしすぎて死んじゃうレベルだからな。絶対に着られないだろ!


そう、思ったのに――


「……俺は着るよ、タケシ先生。アンタのナース服姿が拝めるのなら、どんな服でも着こなしてやる!」


エ━━━(;゚д゚)━━━・・


約3分後、ナースキャップを頭に付けてふとももを露わにした歩が、背中の羽を揺らしながら大股開きで登場した。


自分が言ったことだけど、ソレを見ている方が何倍もハズカシイ。しかも似合わな過ぎる歩の姿に、ウッと口元を押さえてしまった。きっと俺が着ても、同じ状態になる……


「笑いたければ、思いっきり笑ってくれって。そんなガマンしなくていいからさ。桃瀬から聞いたんだけど、タケシ先生が高校生のとき、セーラー服を着たんだって?」

「ウププッ……ああ、学祭の劇で急遽代役したんだ。仕方なく、ね」

「すっげぇ可愛かったって、クラスの的だったそうじゃないか。だからコレを着ても、きっと似合うと思ったんだ」


ああ首謀者は予想通り、桃瀬だったのか。俺の黒歴史をコイツに横流ししやがって!


「……分かった、着てやるよ。その代わり食事が終わるまで、その格好でいろよ、楽しいから」


そんな注文をしてやり、この場は凌いだのだが。さてさて、仕方なくナース服を着た周防先生は、いったいどうなるのでしょうね(・∀・)


太郎目線につづく←ムダに引っ張るクリスマス

恋わずらいの小児科医、ハレンチな駄犬に執着されています

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