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꒰ঌ甘咲ぬな໒꒱🍭
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あの狂乱の大炎上から、数ヶ月。
季節は巡り、窓の外には少しずつ春の気配を孕んだ、肌寒い3月の風が吹いていた。
ネットの世界から『ルイ』という配信者の名前は完全に消えた。
アカウントは削除され、俺が使っていた配信機材はすべて処分された。世間から見れば、俺は炎上から逃げ出して行方不明になった哀れな敗北者だ。
だけど――。
「ん……、ふあ……」
昼過ぎの柔らかな光が差し込むタワマンのベッドの上で、俺はゆっくりと目を覚ました。
高級なシルクのシーツに包まれた身体は、今や完全に司のアルファの匂い――あの冷たくて心地いいウッド系のフェロモンに染め上げられている。
コト、とベッドサイドに温かいマグカップが置かれた。
シャワーを浴び終えたばかりの司が、濡れた黒髪を拭いながら俺を見下ろしている。その瞳には、かつて配信画面越しに見せていたクールな相方の面影はなく、ただひたすらにドロドロとした独占欲と愛おしさが渦巻いていた。
「起きたか、ルイ。よぉ眠ってたなぁ」
司がベッドの端に腰掛け、俺の白髪を優しい手つきで梳いていく。
「司……おはよ。今、何時……?」
「もう二時や。昨日、お前が鳴き止まへんから腰痛めたんちゃうか?」
「なっ……! 誰のせいだと思ってんだよ……っ」
俺が顔を真っ赤にしてシーツに潜り込もうとすると、司はフッと満足そうに笑い、俺の細い手首を掴んで引き寄せた。
今の俺の首元には、外に出られない代わりに、司が特注で作らせた黒いレザーのチョーカー(首輪)がぴったりと巻き付けられている。その中央に輝く小さな金属には、司の名前が刻まれていた。
「今日は3月14日や。ホワイトデーやろ」
司の低い声が耳元で甘く囁く。
「ほら、お返し。お前が配信やってた頃、女リスナーにいっぱいチョコレート貰っとったん、俺ずっと気に入らんかってん」
司が俺の口元に差し出してきたのは、一粒の高級なチョコレートだった。
「あ……」
促されるまま口を開いて受け取ると、濃厚な甘さが広がる。それと同時に、司の強大で濃厚なアルファのフェロモンが室内に一気に満ちていった。
「ひ……あ、つかさ、匂い、濃い、よ……っ」
「部屋から一歩も出さんくて、ネットもテレビも見せへん。三ヶ月たってもまだ、こんな狭い檻の中でおびえてるお前を見てると、たまらんくなるわ」
司の大きな手が、俺の顔を覆うように優しく、けれど拒絶を許さない力で包み込んできた。指の隙間から、熱を帯びて潤んだ俺の目が司を真っ直ぐに見つめる。
「ルイ。お前を叩いてた女リスナーも、ネットの有象無象も、もう誰も俺らのこと見てへん。お前の世界には、俺しかおらんのや」
視界を塞がれたまま、深く、息ができないほどの不器用で激しい口づけが重ねられる。
外はまだ少し肌寒い3月なのに、司の腕の中だけは、オメガのヒートを呼び覚まされる熱で、どこまでも狂おしく焦げ付いていた。
(おわり)
コメント
1件
読み終えました……もう、この閉じた檻の中の甘さと狂おしさがたまらないですね。司が「外に出さん」と言いながら、あのチョーカーに自分の名前を刻ませるところとか、独占欲の表現が本当にエグくて好きです。ホワイトデーのチョコレート一粒でヒートを誘う流れも、まるで呪いみたいな愛情で。ネットの騒音から完全に切り離された、二人だけの世界の描き方がとても鮮やかでした。