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「さもさん!」
そうやって、健気に呼んでくれる君が好きだった。
「あぁ、授業だり〜。」
「凸さん、単位やばいんでしょ?真面目に受けないと留年しちゃうよ?」
「前期、サボりすぎたかな?」
「半分も出席してなかったもんね。」
「ゲームが楽しすぎるのが悪い。」
「そんなんだからゲーム禁止にされるんだよ、高校生になってまで…」
「ごもっともです…」
そうやって、凸さんと何気ない会話をしている瞬間が一番好きだった。
俺と凸さんは幼馴染だ。
小学校、中学校、そして高校まで同じところに通っている。
もう10年以上の仲だが、それでも今まで飽きたと感じたことは一度もなかった。
凸さんもまた同じのようで、俺を見かけるとすぐに「さもさん、さもさん!」と子犬の様に駆け寄ってくる。
俺等は、死ぬまで “親友” だ、互いにそう思っていた。
しかし、最後の高校生の夏、俺の人生が大きく覆った。
俺等は別クラスになった。
しかし、全く話さなかったわけではない。
休み時間は毎回廊下で話し、昼食は屋上で一緒に食べる…
傍から見れば、常にと言ってもいいほど一緒にいるのだ。
少し物足りなさを感じていたけれど、仕方ないことだった。
ある暑い夏の日のことだった。
「凸さん、放課後ゲーセン行かない?」
俺はいつものように凸さんを誘った。
凸さんと遊びたい、そう思って。
しかし…
「えっと……ごめん、今日は用事があるんだ。」
「…は?」
凸さんの声ではないと信じたかった。だが、俺の脳はそれを許してくれなかった。
一瞬、視界が歪んだ。
凸さんは小学校のころから、何よりも俺との約束を優先していた。
塾の日も、病院の日も、俺との約束の為ならと行かなかった。
なのに……
「あ、じゃあ…仕方ない…よね……」
「…うん、本当に、ごめんね。」
俺は急いでその場を離れた。
自分が独占欲に呑まれていると気づいたときは、家に帰ったときだった。
昔から、凸さんが誰かと話していると無性に苛ついた。
たとえ、グループワークなど、致し方ないときでも。
凸さんを俺だけのモノにしたい、俺だけを見ていてほしい。
その瞬間、気づいた。
「あぁ、俺、凸さんのことが “好き” なんだ…」
「好き」と意識するようになってから、凸さんに対する見方は変わった。
今までは何気なく話しかけられていたのが、急にドキドキするようになった。
「?大丈夫、さもさん?顔赤いよ?」
「…ほぇ!?い、いや、別にそんなことないと思うけどなぁ〜。」
「熱でもある?」
凸さんはいきなり俺の額に触れてきた。
「!?」
「よかった、なさそうだね!」
「う、うん…」
同性愛者。最近、よく聞く言葉だ。
ジェンダーレスかなんかで、そういう人が増えているらしい。
俺には関係ない…と思っていた。
俺が、同性愛者………?
今までは、特に気持ち悪いという感情は抱いていなかったのだけれど……
「ごめん!今日も無理だわ!」
「うん、大丈夫。」
ここ最近、凸さんに約束を断られることが多くなった。
流石に慣れてきたけれど、少し嫌だった。
何か、事情があるのかな…大学受験のことで忙しいのかな…
そう、信じたかった。
「今日は気分転換に散歩してみようかな。」
1時間程度散歩した帰り。
空は綺麗なほどにオレンジ色に染まっていた。
家の近くの公園の横を通る。
ん?
公園のベンチに誰かがいるようだ。
よく見てみると………!?凸さん!?
しかも、隣に誰かいるようだ。
ピンクのパーカー、狼の耳のようなカチューシャ、そして赤く美しい髪…
おどろくさんだ。
おどろくさんとは、中学、高校が同じだ。
俺らにはあまり関わりはないが、今は凸さんと同じクラスだ。
かわいい容姿に声、特徴的な喋り方から、絶大な人気を誇っていた。
もちろん、超モテる。
そんなおどろくさんと凸さんが一緒にいる…?
これ以上、考えたくなかった。早くこの場を去りたかった。
でも、体がそれを許してくれなかった。
俺はバレないようにそっと2人を見る。
「今日は楽しかったね!」
「うん!すっごい楽しかったのだ!」
………2人で、遊んだのか………
「あの、おどろくちゃん。」
「?どうしたの?」
「あの………」
「?」
!?ま、まさか……
「お、俺は、おどろくちゃんの事が好きです!隣になったときに、笑顔で話しかけてくれたし、困ったことがあったら色々と助けてくれたし……」
「?」
「だから、俺と、付き合ってください!!!」
「…………!!!!」
俺の中で、何かが壊れたような気がした。
そうだ…凸さんは俺のことを「親友」だと思っている。
だから、恋をしても何の問題もない…はずだった。
俺が、俺の気持ちに気づいてしまっただけに……
何であの時深く考えてしまったのだろう。
自分を、過去の自分を殴りたかった。血塗れになるくらいまで。
これが、失恋。
泣きながら、この場を逃げ出した。
もちろん、バレないように……
「はい、お願いします……のだ…」
辛い。
俺は自分の部屋で布団に潜っていた。
そうだ、俺と凸さんは「親友」。
一生の別れじゃないんだ、大丈夫、凸さんに彼女ができたからって今までと何か変わるわけでもない。
ただ、親友よりも彼女の事を優先する…だけ。
これから、凸さんは俺以外の人も見る。
もう、独り占めができない……
大丈夫、大丈夫、大丈夫………
そう、自分に言い聞かせることしかできなかった。
翌日、俺は学校を休んだ。
凸さんに会うのが怖かった。
凸さんにはもう俺がいなくても大丈夫なんだ。
他に、話す人が、大切な人がいるんだ。
俺は「親友」だから…………
怖い、怖い、怖い。
冷や汗が出てくる。
なんで、こんな凸さんに執着しているのだろう。
何億人といる人のなかで、たった一人に執着している。
よく考えれば、それはおかしい事だ。
彼女ができたって、凸さんは相変わらず親友「も」大切にするだろう。
2人くらい、普通なのだ。
………………
例えば、俺かおどろくさん、どちらかしか助けられない状況が来たとする。
凸さんは、どっちを助けるのだろう…
……駄目だ、落ち着け。
これはあくまで「例えば」の話なんだ……
例えば…の…
「あ、さもさん、おはよ!昨日は大丈夫だった?」
俺の家の前。
俺と凸さんは中学生のころからずっと一緒に登校している。
大丈夫なわけが無い。
凸さんは相変わらず澄んだ目で俺を見つめてくる。
凸さんは、何も悪くない、悪くないから…
「う、うん!大丈夫だよ!!」
「そう?それはよかった!」
これから、凸さんは俺じゃなくておどろくさんと一緒に登校するようになるのかな。
「ちょっと体調崩しちゃって…」
「そっか。1日で治ってよかったね!」
「うん。」
凸さんは優しい。
その、元気で優しい笑顔が大好きだ。
「じゃあ、行こっか。」
「そうだね!」
3年間見てきた通学路は、少し歪んでいた。
「ねね、そういえばね、」
「どうしたの?」
駅で帰りの電車を待ってると、凸さんが話を振ってきた。
「俺、さ…」
「うん?」
「彼女、出来たんだよね……!!」
「………へ?」
声が出た。
これは、彼女ができたことの驚きではない。
凸さんが自らそんな事を話すことによる驚きだ。
凸さんは俺の事を「親友」だと思っているし、俺が凸さんの事を「好き」だと知らない。
「へへ、意外でしょ〜」
「それ、自分で言う?」
「誰だと思う?」
「えっと………誰だろ?俺が知ってる人?」
「多分、知ってる。」
「多分って………」
本当は知っている。知っている…けど。
これは凸さんの為でもあり、俺の為でもある。
「うーん…」
「正解言う?」
「お願い。」
「正解は〜?デケデケデケデケデケデケ」
「勿体ぶらずに早く教えてよ。」
「デン!!!おどろくさんでした!!」
「…えっ!?おどろくさん!?」
俺は、素人並みの必死の演技をする。
「そうそう!」
「へー!凄いね!あのおどろくさんとこんな凸さんが付き合えるなんて!」
「そうでしょ〜。って、こんなって何だよ!」
「はははw」
必死に脳を働かせた。
1秒でも早く、この場を去りたい、1人になりたい。
なんで?
凸さんの事が好きなんでしょ?
なんで1人になりたいの?
それは………
辛い…からだ。
「さもさんも早く彼女作ろうよ〜!顔いいし、性格もいいし、文武両道!実際、凄いモテてるじゃん!」
好きな人といるのに、辛いって何?
本当に、分からない。
「いや、今のところはいいかな〜。」
なんでこんなことで悩む?
実際、一緒に登下校できてるんだからいいじゃん。
休み時間や放課後も遊ぶし。
凸さんに彼女ができたからって、何も問題は……な…い……………。
「…さもさん、変だよ?大丈夫?何かあったら相談してよ!俺等、親友だろ!?」
親友…その4文字が無性に引っかかる。
相談出来る悩みだったらどれ程よかっただろう。
「大丈夫だよ!気のせいじゃない?」
数十分後、家に着いた。
手を洗う気力もなく、自分の部屋のベッドに倒れ込む。
彼女。
それは1種のステータスにすぎない。
もし別れたら、俺等はまたずっと一緒にいれる……いや、今もずっと一緒にいるか。
彼女がいたからって凸さんのステータスが増えただけで、俺は今の生活とほとんど変わらない。
親友と恋人の差ってなんだろう?
考えれば考えるほど頭が痛くなる。
あぁ、この世界が嫌だ。
これは単なる八つ当たりにすぎない。
でも、俺は、凸さんに俺のこと「だけ」を考えてほしいのだ。
………そうだ
「もし俺が死ねば、凸さんは俺のことだけをずっと考えてくれるかな。」
「おはよう!さもさん!」
「おはよ、凸さん!」
「あれ?何かいつもより元気だね。何かいいことでもあった?」
「いやぁ?特に何も?」
「もしかして彼」
「違うって!」
親友が死んだら、凸さんはそのことできっと頭がいっぱいになるんだ。
『…は…であるからして…』
授業中、俺は先生の話に耳を傾けていなかった。
耳を傾ける必要がないからだ。
放課後。俺は屋上の手すりに腰掛けていた。
大好きな曲を口ずさみながら。
「あ、さもさん!いたいた!」
凸さんは俺の所に駆け寄ってくる。
「教室にいないから心配したよ!先に帰っちゃったんじゃないかと、沢山探したんだよ?…ってさもさん!?何処に座ってるの!?落ちたら危ないよ!!」
凸さんは健気だね。本当に…
「ねぇ、凸さん」
「何?」
「俺さ、夢があって。」
「へぇ、いいじゃん!何?」
「今、分かるよ。」
「え」
俺は屋上から身を投げた。
落ちていく。でも、全く怖くない。
「俺の夢はね、」
「凸さんに、俺のことを一生考えてもらうこと!!」
俺の最後の景色は、橙に染まった空だった。
俺、凸もりは小学校の頃からずっと仲の良い親友がいる。
名前はさぁーもん。通称、さもさんだ。
さもさんは誰にでも優しく、可愛くて、勉強も運動も出来るまさに完璧人間だった。
そんな彼が、昨日、自殺した。
水風船が割れるような、あの音。
俺はこの音を一生忘れる事はないだろう。
打ちどころが悪く、即死、だったようだ。
これもさもさんの計算の内だったのだろう。
本当に、こんな所で頭脳を使わないでほしい……
「先輩、大丈夫?昨日お友達が死んじゃったみたいだけど…」
そう聞くのは俺の彼女、おどろくさんだ。
おどろくさんは俺のことを「先輩」と呼ぶ。
同学年なのだけれど…
「大丈夫なわけが無いだろ…」
「そっか、そうだよね…落ち着くまで、学校、休んでいいんだからね…」
おどろくさんは優しい。
さもさんは最後「凸さんに、俺のことを一生考えてもらうこと」と言っていた。
もしかしたら、いや、多分絶対彼女のせいだろう。
さもさんが死んだのは俺が悪い。
俺が、殺した。
「じゃあ、おどろくは帰るね。」
「うん。」
おどろくさんが、家に来てくれた。
そうだよ、おどろくさんは何にも悪くない。
俺が、好きになってしまったのが悪い。
俺は、最低な人間だ。
友人を殺して、彼女にまで心配をかけて。
………………………………………………………
俺は自分の棚を漁る。
「あったあった。」
不器用ながらも、俺は見つけた物を結ぶ。
「完成。」
我ながら、上出来だ。
俺は本来物干し竿をかける所にソレを結び、台を持ってくる。
台にのり、ソレを首にかけた。
「さもさん、待ってて。俺も今そっち側にいくから。」
俺は、思いっきり台を蹴った。
首を、吊った。