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突っぱねられるかな…いやでもこの繋がりが断ち切られたら私はもう…

「…まぁ五十嵐のそれは作り手側としては、とても嬉しい言葉だと思う」

ぽつりと呟かれた言葉。彼自身も美術部で作品を描き上げる作り手だからこそそう言えるのだろう。

「僕は手伝わないけど、その人に直接きちんと伝えれるようにちゃんと自分で探し当てなよ」

その言葉が’見学に来ても良い’ということだと分かると一気に嬉しさがこみ上げてくる。

「瀬南くん、ありがとう!! 」

「っ…うるさい、もう少し小声で喋れないの?君の声 大きいし高いから耳痛いんだけど」

「あ、ごめん…」

「良かったな、もかっぺ」

「うん!!」

良かった…!!僅かな希望が見えてきた!まだこの高校にいると断言出来るわけじゃないけどあの人に近づいたのかもと嬉しくなった。

「ちなみに、見学っていつなら大丈夫?」

「さっきも言ったけど個人主義な部活だからいつ誰がいるかは僕にも分からない、描きたい日に描きに来る感じ」

「そっかぁ…」

「他の美術部員に知り合いがいないなら僕が参加する日に見学に来るのが妥当なんじゃない?」

「瀬南くんは いつ参加してる?!」

「…ほんとグイグイくるね」

希望が見えてテンションが上がってしまっているのかもしれない。目の前の彼に怪訝な顔をされ、ため息をつかれる

「連休前だし、今日のうちにある程度進めておこうとは思ってるけど」

「一緒に行っても良い?!」

「…よくないって言ってもどうせ、ついてくるんでしょ」

「あ、ううん。私がいることで邪魔になるならついていかないって約束する。良い時だけついていくようにするから」

意外な答えだったのか驚かれてしまった。探したいのは本当だけど、だからといって瀬南くんに迷惑をかけたいわけじゃない。私の勝手な都合なのだから、そんなわがままは言えない

「節度を守る子だから美術室に行ったとしても亜貴に迷惑はかけないと思う」

「…今日、来る?」

「っ!いいの?!」

「僕の邪魔しないならいいよ」

「ありがとう!!」

「っ…さっき言ったこともう忘れたの?声のボリューム考えてよね」

「ごめん」

また怒られてしまった…声がよく通るって部活でも言われてるし、ほんと、気をつけなきゃ

「慶はどうする?」

「俺は、部活あるから」

「そっか」

チラシを持った瀬南くんと荷物をまとめた私とますみんで教室を後にする。

「んじゃ、人探し頑張ってな」

「ますみんは部活頑張ってね!」

「慶、またね」

「おう」

部活に向かう ますみんに向かって手を振って見送る。荷物を持ち直して瀬南くんの方を見るとますみんとは反対方向へスタスタと歩き出している。

「えっ、ま、待って」

「そんなに早く歩いてないでしょ」

「いや、’行くよ’って声かけてくれてもよくない?」

「小学生じゃあるまいし、その声かけ必要?」

瀬南くんの話し方って一言一言がすっっっっごい気持ちを逆なでしてくる!!


「瀬南くんって中学の時も美術部だったの?」

「それ答える必要ある?」

「仲良くなりたいから色んなことを知っておきたくて」

「何なのそれ意味分かんない」

ほんとにいちいち答え方に棘がある…

「じゃあ、どこの中学校出身?」

「それも答える必要ある?」

「瀬南くんとコミュニケーション取りたくて!」

「ずっと喋ってないと気が済まないわけ?」

んー…さっき ますみんがいた時はこんな感じじゃなかったんだけどなぁますみんがいないとこうなるってこと?それか、あんまり自分のことについて話したがらないタイプなのかも。

「私の妹が絵を描くの好きなんだけどね」

「へー、妹さん絵描いてるんだ」

「そうなの、抽象的な絵より動物とか花とか描くのが好きなんだって」

「具象絵画ね」

お、会話成立してる!!勘が当たったのかも!瀬南くんについて質問するより私の話を聞いてもらう姿勢のが話が弾む

「具象絵画って?」

「対象物を極端な捨象なしに具体的に描いた絵画のこと」

「抽象絵画の反対ってこと?」

「反対って何?対比でしょ」

自分に関しての質問じゃなければこうやって返してくれるのか…瀬南くんとの会話のコツを少しだけ掴んだ気がする

そんな会話を続けているとあっという間に美術部部室に到着した。扉を開けるとそこには誰もおらず…

「誰もいない…」

「あれ、さっきまで先輩いたのに」

めちゃくちゃ期待して来たのに黒髪ロングの女の子はいない。落胆する気持ちもあるけど、いつも外から見ていた美術部の部屋の中に入れるだけでも一歩進んだと前向きに捉えよう。

「イーゼルに布かかってるものは絶対に触らないで。先輩達の絵もあるから」

「分かった」

美術部の画鋲ボードや壁や展示パネルには色んな作品が飾られていた。

「……すごい」

「飾ってあるものは自由に見たら?」

瀬南くんは自分の描いている絵であろう布のかかったイーゼルを空いてるスペースへ移動させている。

「瀬南くんが描いてるのって…」

「見たいとか言わないよね?」

「…あはは、まさか」

ですよね、分かってますよ。自分のことについて開示しない人が自分の描いてる絵を見せてくれるなんてありえない話だし…飾られている絵に目を向ける。乱雑に飾ってはあるけど大きなくくりでは固まって飾ってある。

抽象絵画と具象絵画で分かれてて何となくその中でも抽象絵画は色合いで固まって飾られてて、具象絵画は食べ物や人物や風景と大まかに固まって飾られている。私が足を向けるのは、やっぱり風景画。心に残る絵が風景画だったのもあって色んな風景画を見るのが好きになった。

携帯を取り出してホーム画面を見つめる。私の好きな絵に似た風景の絵。ここに飾ってあるどの風景画も素敵だけど、やっぱりあの絵が好きだな…

邪魔になるかもしれないので、ただただ黙って1枚の風景画を眺める瀬南くんの鉛筆の音だけが部室に響いている何分経ったんだろうって頃にふと声をかけられた

「五十嵐って部活やってないの?」

「え?」

まさか瀬南くんから声をかけられるとは思ってなくて素っ頓狂な声が出る。

「何その馬鹿っぽい声」

「いや、質問されると思ってなくて」

「僕の質問、聞こえてた?」

「あ、えと演劇部に入ってるよ」

「今日、活動は?」

「活動は……あ!!」

やばい、委員会終わったら行くって連絡してたの忘れてた。

「あ、大きな声出してごめん!私部活行かなきゃ…今日、本当にありがとう!部室とても素敵だからまた来たい!それじゃあね!」

荷物を手に深々と瀬南くんにお辞儀をしてから 美術部の部室を後にする。

微糖な貴方に惹かれる私

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