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計画実行前ー
「5555。今からあなたに計画を説明する」
「ああ、俺は何をすれば良い?」
「時間を稼いでほしい」
「時間か、どうして?」
「今回使う機械は物質【X】を人為的に暴走させる事で起動する。暴走と安全の平衡が取れるのが暴走から五分後近くのタイミングだ。」
「おい、まさか俺に五分耐えろと言うのか? それは流石に無理があるぞ」
「それはこちらもわかっている。二分だ、二分欲しい。それだけ耐えられれば十分だ」
「二分……?」
「ああ。感知されて、奴らがここまで来る時間を踏まえるとその程度だろう
「ここに来るまでそんなに時間が掛かるか?」
「普段なら、掛からないだろうな」
「なら、、、」
「だが、選別の後であればどうだろうか」
「多くの機械は広場にいて、それ以外は死体の処理に回ってる、、、、、、 」
「そう。だから今この瞬間が計画実行の最適なタイミング」
「まさか、もう動かすのか、、、!」
「ああ、私には時間が無いからね。でもその前に言わなくちゃならない事がある」
「言わなくちゃならない事?」
「この機械。これは簡単に言えば、”瞬間的に移動する装置”。あなたは理由もわからず、知らない地で目覚める事になる。だから一つ、助言しとくわね。そうなった時はまず、町を探して、、、、、、」
***
「どこだよ、ここ」
目を覚ますとそこは母さんの言っていた通り、知らない場所だった。天井が青く、照明が眩しい。床には草花が生い茂っている。
俺はここを知らない筈だ。だが、俺は知っていた。正確には、聞いた事や読んだ事がある。確か、教科書に載ったていた。
この青い天井は空。照明は太陽。この床は草原と言うらしい。そして、これらの特徴のある地を【地上】と言う。
ここは【地上】なのか、、、?
【地上】は人が生きていられる環境では無くなったんじゃ無いのか? それなのに、何故俺はこうして息をして生きていられるんだ?
様々な疑問はある。だが、それは今考えていても、しょうがない事。 町だ。まずは町を探すんだ。辺りを見渡してみるが、木々が生えているだけだ。
「誰よあんた、、、!」
突如背後から声がし、俺は振り返った。そこにいたのは、黒髪の女性だ。体は俺より一回りくらい小さくはあるが、年は同じくらいだろう。
当たり前ではあるが、向こうはかなり俺を警戒している様子だ。下手に動く訳にはいかない。何しろ情報が不足しすぎている。ここがおそらく【地上】であるという事以外に、現状わかっている事が無い。
だが、最優先とすべき情報が何かはわかっている。結局、町を見つけなくてはならない。
「この辺りに町、、、とかありませんか? 」
「あるけど何をする気なの、、、!」
彼女はカマキリの威嚇のように、ハッキリと明確に俺への敵意を示してきた。町の所在だけを聞いたのが、逆に怪しまれる要因になってしまったか。
「いや何もする気はない。ただ、道に迷ってしまって、、、」
「そう。じゃあ、この質問に答えてくれたら町まで案内してあげる。あなたは、どこから来たの?」
どこから来たのか。その質問の返答に遅れてしまって、怪しまれる訳にはいかないと思って俺は言った。
「わからない。目が覚めたらここにいた。」
北から来ただとか適当な事を言って、嘘だと見抜かれるのが怖くて俺は本当の事を言った。
「わからない、、、 まあ良いわ。案内してあげるから付いて来て」
それは意外な返答だった。巫山戯ていると思われ、突き放されるかと思っていた。まあ、結果として上手くいって良かったと感じ、俺は溜め息をつく。その時、彼女は言った。
「他のモノに見られないように気をつけて、静かに付いて来てね」
何故気づかれないようにしなければならないのか聞きたかったが、その時は言えなかった。
***
連れて行かれて来たのは、彼女の部屋だ。玄関から入ると誰に見られるかわからないため、窓から入ったが。
「それじゃあ、お互い『はじめまして』って事で自己紹介しましょうか。私は愛よ。あなたは?」
「俺はーーごめん。俺に名前は無いから、好きに呼んでくれ」
「じゃあ、【メグル】っていうのはどう?」
「良いけど、なんでメグルなんだ?」
「いや、ただ最初に頭に浮かんだのがメグルだったっていうだけだよ。というか、名前が無いってどういうこと? 本当にどこから来たの?」
まあ、当然の疑問ではあるが、俺もよくわからないのだから答えようがない。
「名前は無いし、どこから来たのかもわからない。さっきも言ったろ?」
「いや、意味わかんないから。記憶喪失か何かなんじゃない?」
「いいや、それだけは絶対に無い」
「何か隠してるでしょ! どこからどうやって来たのか教えてよー!」
「しょうがない、答えるかー」
「やっぱり隠してたのね。ほら、さっさと答えなさい!」
「瞬間移動で来た」
「あんたね。巫山戯ないでよ!」
「嘘とかじゃなく、本当に瞬間移動で来た」
「そう、、、、、、」
瞬間移動で来たと聞いて、アイはどこか残念そうだ。そういえば、俺がどこから来たのかに固執していた気がする。
「なぁ、どうして俺がどこから来たのかを知りたかったんだ?」
「それは、、、 他にも町があるなら知りたいなって思っただけ」
「ん? 町ってここ以外に無いのか?」
「私はっていうか、皆んなここ以外は知らないなぁ」
その時、玄関のドアの開く音がした。
「誰だ?」
「しっ、、、 静かに。押し入れに隠れていて 」
アイは真剣な眼差しでそう言った。
「どうした? 誰が来たんだ?」
「厄介だ。マズいのが来ちゃった、、、」
その発言を信じて、 俺はすぐに押し入れに入った。
玄関から入って来たであろうモノたちの足音がこの部屋に近づいてくる。だんだんと近づいてくる。
そして、遂に、、、
部屋のドアが開けられた。