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ご本人様とは全く関係ありません
1日遅れのクリスマス!
イブに慌てて書き始めたので、
誤字脱字が多いと思いますが、
読んでくださると嬉しいです!!
あなたはいつも明るく元気で
時には突飛な行動で
みんなを振り回していた
今回もそう
あなたは何を思って
これを贈ったの……?
あなたの声がききたかったな
大好きだったないくんが死んだ。
事故死だった。
聖なる夜、クリスマスの日に
りうらのためにケーキを買う、その帰り道で。
ケーキを買う帰りに
亡くなってしまうのなら
ケーキなんて買ってきて欲しくなかった。
りうらが一番欲しいのは、
ないくんと一緒に過ごす
当たり前の日々だったのに。
そんなこと思ったって、
ないくんに届くわけない。
だから、1年経った今でも
クリスマスなんて大嫌いだ。
街は
何事もなかったかのように季節を巡らせ、
今日も、きらきらと光っている。
でも、
りうらの時間は、
あの日から
少しも前に進めていない気がした。
ないくんは、今のりうらを見たら
びっくりしちゃうかな?
大好きだったおしゃれをすることも減って
大好きだったお出かけをすることもなくなって
大好きだった料理もしなくなった。
大好きだったのは、
すべてないくんがいたから。
そう言ったら、帰ってきてくれる?
ないくんに会いたくて、会いたくて
何度もそっちに行こうとした。
でも、りうら臆病者だからさ。
やろうと思っても、する寸前で
怖くなってやめちゃうんだ。
ないくんは、りうらのために
なんでもしてくれたのに。
なんで、りうらはできないんだろうって
毎日思う。
今日も憂鬱な1日が始まった。
朝起きて1番最初に思うこと。
ないくんがいない世界なんて、
なんの意味もない。
それぐらい、
りうらの人生を変えてくれた人だった。
ベッドから起き上がるにも
しばらく時間がかかる。
何をするでもなく、
ただ天井を見つめて、
今日が終わればいいのに、なんて思う。
それでも、
起きなきゃいけない気がして、
体を引きずるように洗面所へ向かった。
顔を洗って、鏡を見る。
映る自分は、
どんよりとした表情をしている。
こういう時、ないくんだったら、
そんな考えが頭をよぎる。
考えたって、それは現実ではないのに。
顔を洗っても、
結局ベッドの上でぼーっとしていると
ピンポーン
と、無機質なインターンホンの音が
部屋に響いた。
こんな朝から来るのは、きっと
ため息をひとつつきながら、
重い足取りでモニターを覗く。
「りうちゃん?」
……今日は、初兎ちゃんなんだ。
ないくんが死んでから、
メンバーのみんなは、
家から1歩も出てこないりうらを心配して、
毎朝こうして、
様子を見に来てくれるようになっていた。
カメラに映る初兎ちゃんは、
少し迷うように視線を落としてから
おそるおそる口を開く。
「今日は、お家から出てこうへん?
ないくんに顔合わせに行こうや。
いむくんもまろちゃんも、悠くんも
みんなりうちゃんのこと待っとる。
無理せんでええからね」
今日は大嫌いなクリスマス。
顔合わせに行かないか、
つまり、墓参りに行かないか、ということだ。
墓参りなんて行ったら、
ないくんがこの世にはいないんだって
無理やり見せつけられている気がして。
だから、りうらは、
1度も、行けていない。
「……うん、行けたら行くね」
そう返して、初兎ちゃんの返事も待たずに
通信を切った。
我ながら酷いやつだなとも思う。
でも、外に出たら、
街はきっと、クリスマス一色。
そんな景色、
こんなふうに
ないくんも死んじゃったんだって
どうしても思ってしまう。
そんなことばかり考えてしまって、
今日は、余計に、家から出たくなかった。
家にいるからといって、
やらなければいけないことがあるわけでも
したいことがあるわけでもない。
何も考えずに、
ベッドの上で
ごろごろするだけ。
「はぁ……」
何をするにもため息は出る。
吐く相手は、
自分だったり、
世界だったり
いろいろだ。
ベッドの上で、
天井を見つめたまま
時間がどれぐらい過ぎたかも、
わからなくなったころ。
ピンポーン
と、再びインターンホンが鳴った。
今度は誰……?
メンバーは、りうらの気持ちを気にしてか、
朝に来てくれるだけで、
そのあとは、そっとしてくれていた。
だから、こんなことは初めてで、
知らない人が来たのかと身構える。
すると、
「宅配でーす、いらっしゃいませんかー」
と、やる気なさげな声が聞こえた。
宅配……?
りうら、
何も頼んでないんだけど。
じゃあ、誰?
考えられるとすれば、
メンバーの誰かが
りうら宛に何か送ってくれたのかもしれない。
そう思って、
おそるおそる玄関へ向かった。
扉を開けると、
宅配員の人が
片手に小さな箱を持って立っていた。
「サインお願いします。
……はい、ありがとうございましたー」
受け取った箱は、
思っていたよりもずっと軽い。
誰から来たんだろう
頭のなかでそんなことを考えながら、
箱に貼られた伝票に目を落とす。
差出人の名前は――
〝乾ないこ〟
そこには、
死んだはずの恋人の名前が
確かに書かれていた。
伝票にポタッと水滴が落ちる。
久しぶりに彼の書いた字を見たからだろうか。
懐かしさが一気に込み上げてきて、
気づけば、
涙が溢れていた。
「なんで……?」
死んだ人から
届くはずなんてないのに。
袖で乱暴に涙を拭い、
ガムテープを剥がして、
箱を開ける。
中には、
1枚の紙と封筒に
手のひらサイズの小さな箱、
それから、
ボイスレコーダーが入っていた。
紙に印刷されていたのは、
事務的な文章。
『平素より、弊社をご利用いただき、
誠にありがとうございます。
この度は、弊社の都合で、
お荷物の発送が遅れましたこと、
深くお詫び申し上げます』
と、書かれていた。
どうやら、
ないくんはこの荷物を発送した直後
事故に遭ったらしい。
事故の影響で交通規制が起こり、
荷物は倉庫へと戻され、
そのまま保管されていた。
そして、
送られることのないまま
1年間、倉庫の奥で眠り続けていた。
今日、この日まで。
ないくんは、
事故の直前、
りうら宛に
何を送ったのだろう。
期待と不安が混ざるなか、
りうらは、
ボイスレコーダーを再生した。
『あ、あー。ないこです!
りうら、聞こえてる?』
久しぶりに聴く大好きなないくんの声。
それだけで、また涙が溢れてくる。
『今日はクリスマス!
りうらに大事な大事なお届け物です』
まずは、箱を開けてね
そう言って笑うような
明るく軽快な声。
その声に導かれるように、
小さな箱を手にとった。
箱は、手のひらに収まるほどのサイズで
ずしりとするほどではないのに、
それなりの重みがあった。
光沢のある深い色で、
角は丸く、
何度も触られたみたいに、
表面は少しだけ擦れている。
開けるのが、
怖いような、
触れてはいけないもののような
そんな気がした。
心を決めて、箱を開けると
そこには、金属の輪が
すぽりと1つ収まっていた。
これって、もしかして……
『これはね、婚約指輪!』
その声に、
胸が大きく跳ねる。
『マジで、めっちゃ悩んだ。
一生に1度の思い出だし、
りうらは俺の!!って
自慢できるやつだし』
それに、とないくんは続ける。
『こうやって、わざと郵送することも』
確かに。
なんでわざわざ郵送してきたんだ?
『だってさ、普通に渡すの
なんか照れくさくて。
直接だと、絶対、俺、顔に出るやん?』
それがいいんじゃん、
その顔のないくん、見てみたかった。
『だから、先に送っといて、
夜に改めてちゃんと言おうと思ってた。
まぁ、もちろんそれもあるけど、
普通に言って、指輪渡すだけじゃ
面白くないよなーって思って。
だったら、歌い手らしく、
声も残そう!!で、この形にしたんだけど』
あははっと楽しそうにないくんは笑う。
本当に、ないくんはどこまでもないくんだ。
面白いことが好きなのも、
ちょっぴり照れ屋なところも、全部。
『りうらは、男だし、俺も男。
それは変わらない事実で、
社会的に見たら、俺らの関係が
白い目で見られることなんてわかってる』
ボイスレコーダーの奥で
ないくんが、
深く息を吸ったのがわかった。
『でも、俺はりうらと一緒にいたいんだ。
好きで好きで、どうしようもないほど
愛しているから』
りうらも、愛してるよ。
ないくんといることができたら、
それでいいって思えてしまうほど。
『……それじゃあ、俺の大事なお姫様。
今から帰るから、お家で待っててね!』
あれ?
まだ時間のこってるんだけど?
『あ、やべ、忘れてた。1番大事なこと。
もう1個、封筒入っているでしょ?
中開けて、その紙書いて待っててね。
じゃ、またあとで!
ケーキも楽しみにしててね!
以上、ないこでした〜!』
……ねぇ、ないくん。
ないくんはどんな思いで、
これを贈ってくれたの?
りうらと一緒に過ごすんじゃなかったの。
ねぇ、ないくん。
帰ってきてよ。
りうら、ないくんに会いたいよ……。
ボイスが途切れて、
静寂な部屋には、
りうらの嗚咽だけが響く。
あぁ、そうだ。
封筒開けなきゃ。
震える手で封筒を手に取る。
涙は拭っても拭っても、
溢れてきて、
封筒にシミをつくっていく。
指先に力が入らなくて、
何度も持ち替える。
「……っ、ない、くんっ……」
名前を呼ぶだけで、
喉の奥がひりついた。
破ってしまうのが怖くて。
でも、
開けないままにしておくのは、
もっと怖くて。
息を吸って、
震える手で
そっと、
封を、切る。
その瞬間、
涙も、声も
もう止まらなくなった。
入っていたのは、
『りうらには、
いつまでも幸せでいてほしいんだ。
だから、俺と一緒に指輪はめて、
幸せになってくれる?』
と書かれた紙と、
〝婚姻届〟
その文字を見て、
視界がぐらりと揺れる。
その婚姻届の真ん中には、
まだ空白を残された、
2つの名前を書く欄。
片方には、もう
ないくんの名前が、
丁寧な字で、書かれていた。
「……っ」
声にならない息が、
漏れる。
『社会的に見たら、俺らの関係が
白い目で見られることなんてわかってる』
さっき聞いた、ないくんの言葉が、
頭のなかで繰り返される。
きっとないくんは、
法律で結婚できなかったとしても、
一緒にいよう。
そういう意味でこれを書いたんだと思う。
でも、でもね、ないくん。
これは、ちょっと
「反則だよ……」
ここに、
りうらの名前を書くはずだったんだ。
クリスマスの夜、
笑いながら、
並んで座って、
「ほら、書いて」
なんて、言われながら。
指輪をはめて、
未来の話をして、
当たり前みたいに
これからを続けていくはずだった。
それを、崩されてしまった今。
ないくんが隣りにいない今。
りうらは、どうしたらいいの?
ねぇ、ないくん、ないくんってば。
返事してよ。
「ぅあ゛あ゛ぁぁっ……!!」
喉が裂けるみたいな声が、
自分でも知らないうちに零れ落ちた。
紙を握りしめたまま、
しばらく動けずにいた。
震える指で、
もう1度、あの言葉をなぞる。
『りうらには、
いつまでも幸せでいてほしいんだ』
……りうらが、幸せになるには、
ないくんが必要だよ。
ないくんがいないと、
幸せになんて、なれるわけないのに。
そうやって、背を向けようとした分だけ、
胸の奥が苦しくなった。
指輪の入っている箱に手を伸ばして、
中のそれをそっと取り出す。
冷たい金属が、
指先に触れた。
少しだけ迷ってから、
左手の薬指に、指輪を通すと、
ぴったりだった。
あぁ、もう、
ないくんは、ほんっとに。
「……ずるすぎるよ、ばか……」
幸せでいてほしい、なんて。
前を向いて生きろ、なんて。
それが、
りうらにできる
ないくんのお願い事なら。
……聞くしか、ないじゃん……。
りうらは、
ずっと逃げ続けてきた。
墓参りに行くことも、
クリスマスからも、
世界からも、
ないくんがいない現実からも。
でも。
指輪をはめたこの手を見て、
思ったんだ。
ないくんは、
りうらが立ち止まったままでいることを
望んでなんかいない。
きっと、
泣いてもいいから。
立ち止まってもいいから。
それでも最後には
ちゃんと顔を上げて、生きていく姿を
望んでいる。
ないくんなら、
そう思うんだ。
そう思ったのなら、
「行かなきゃ、だよね」
自分の決意を
自分に聞かせるように、
小さく呟く。
怖い。
正直、まだ怖い。
それでも、
この指輪をはめたままなら、
この言葉が胸のなかにあるのなら。
ないくんに、
会いにいける気がした。
玄関に向かう途中、
コートを掴む手が、少しだけ強くなる。
墓参りなんて、
無理やり現実を突きつけられる場所だと、
ずっと思っていた。
でも、今は。
ちゃんと、「ありがとう」と伝えたいんだ。
久しぶりに出た外は、
眩しくて、とても懐かしい感じがした。
ここに、ないくんがいたら、
いつだってそう思っちゃうけど、
下を向いたままではいないから。
遠くから、聞き馴染んだ声が聞こえる。
その声は、
りうらを見つけると、
ぴたりと止んだ。
「今まで、心配かけてごめん。
りうら、もう大丈夫だから。
ないくんの墓参り、一緒に行ってもいい?」
みんな、
驚いたような顔をしている。
いむは、
もう目を赤くしていた。
「えぇに決まってるわ。
待っとったで、りうら」
あにきのその声をきっかけに、
まろも、初兎ちゃんも、いむも
何も言わずに、
りうらを快く迎えてくれた。
初めて
ないくんのお墓の前に立ち、
手を合わせる。
冷たい風が
頬を撫でた。
ねぇ、ないくん。
りうらね、
ないくんのおかげで
ほんの少しだけど、
前を、向けるようになったよ。
まだ、
ちゃんと強くなれたわけじゃないし、
毎日笑えているわけでもない。
ふとした瞬間に、
声を思い出して、
匂いを思い出して、
胸がぎゅっと苦しくなる。
クリスマスも、
正直、まだ好きにはなれない。
でもね?
逃げてばっかりだった場所に、
こうして来られたのは、
きっと、ないくんのおかげだから。
それから、指輪。
今日、ちゃんとりうらに届いたよ。
ぴったりだった。
ないくんが選びそうなやつだなって
見た瞬間思った。
だって、りうらが好きそうなデザインに、
赤にもピンクにも見える宝石が
ついているんだもん。
りうら、
そういう、ないくんの独占欲強いとこ、
結構好きだよ。
……ほんと、勝手だよね。
勝手に残して、
勝手に願って、
勝手に背中押して。
それでもさ、
りうらは、嬉しかった。
ないくんが、最後まで
りうらとの未来を考えてくれてたこと。
それが、
どうしようもなく、嬉しかった。
「りうちゃん、行くよ?」
「っあ、ばか、ほとけ!
りうら、今日が最初なんやぞ!?」
「あ、そっか、ごめん、いふくん!」
「はいはい、お前ら静かにな〜」
「りうちゃん、ゆっくりでえぇからな」
……みんなも、待ってるし、
今日はここまでにするね。
急には変われないけど、
ゆっくりでも、
ちゃんと、生きてみる。
幸せになれるかは、
分からないけど、
りうらなりの幸せを探してみるから。
また、来るね。
今度は、もう少し笑って。
数十年後、
またないくんに会いにいくから、
その時は、りうらに
ちゃんと、プロポーズ、してほしいな。
だから、
それまでは見守っておいてね?
ないくん、大好きだよ。
愛してる。
最後に愛の言葉を告げて、
りうらは、すっと立ち上がった。
「ごめん、お待たせ」
後ろを振り返って、そう言うと、
みんなは、優しい笑みを浮かべた。
墓地を後にして、
一歩ずつ、歩き出す。
先頭にいたあにきが、
「今日はみんなで飯食いに行くで!」
と声を上げ、
みんなが盛り上がっている声を聞きながら、
りうらは、左手を太陽にかざした。
薬指にはめられた指輪が
日光に反射して、
きらきらと輝いている。
「……指輪、きれいだね」
いむがぽつりと言った。
きっと、りうらがつけてる指輪が
誰から贈られたものかなんて、
みんなわかってる。
深く聞いてこないのは、
みんなの優しさ。
その優しさが、
じんわりと胸に沁みる。
その言葉に、
りうらは小さく笑って、
そっと手を下ろした。
「でしょ」
それだけで、
伝わっている気がするから。
ねぇ、ないくん。
ないくんのこと大好きだよ。
こんなに優しいメンバーを集めてくれて、
りうらを見つけてくれて、
りうらを好きになってくれて、
ありがとう。
そう思った、そのとき。
また風が吹いた。
少しだけ強くて、
でも、とても優しくて、
包み込むみたいな風。
そして。
耳元で
〝俺も、大好きだよ〟
ないくんの声が聞こえた気がしたんだ。
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