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キルアは静かな夜の闇の中で、ぼんやりと考え込んでいた。心の中に湧き上がる感情は、もうどれが本物なのかもわからない。ゴンと過ごした日々が自分にとってどれだけ大切で、大きな影響を与えてくれたのか今更になって実感することがある。
ゴンが眠っているあの病室を後にした時、キルアは今後どうなるかを確信していた。ゴンは目を覚ますだろう。そしてそれから自分が何をすべきかもわかっていた。それでも、何か腑に落ちないことがある気がする。あの時、ああなる前にゴンを助ける為にできることがあったんじゃないかと思っていた。むしろ自分がゴンを苦しませる原因になったのではないかとキルアは何度も思った。
「ゴン、俺は…」
心の内で名前を呟く。ゴンのことを思い出す度に胸が痛む。どれだけ気持ちを伝えても足りない気がする。それでもゴンの為にできることはした。力を尽くしたつもりだった。それなのに何かが足りなかった。ゴンが目を覚ますまで、ただできる限りのことをしてあげたかった。自分は何故、ゴンと一緒にいてあげられなかったのだろう。次第に感情が交錯しムシャクシャした。家族との関係を断ち切り、自分の道を選んで初めて自分を取り戻せる。そう思っていた。ゴンが目を覚まして、再び自分の元に戻ったとき、自分はどうしたらいいのだろう。ゴンと一緒にいたい。傍にいたい。だけど、ゴンの為にも自分の為にも一度、お互い離れる必要があるんだと感じている自分もいた。
「俺は…」
自分はゴンの役に立つことができたのだろうか。最善を尽くせたのだろうか。これから先、ゴンがどうするかを考えたら答えを出せなかった。自分が進む道はもうゴンとは違う場所にあるのかもしれない。そのことに、どうしようもなく寂しさを感じた。
何となく窓の外に目を向けた。静寂で暗い空には満天の星が広がっている。その静けさが今は安心できる。いつか見た景色にも同じように感じたことがあった気がしたけれど、何かが足りない。無数の星を見上げていると自分がずっと探していた答えが見つかるような気がした。家族から逃げ、ゴンとの絆を断つことができればきっと、自由になれるのだろう。果たしてそれがゴンの為になるのか?自分自身の為になるのか?しばらくの間、心の奥底でぐるぐると考えを巡らせていた。
「でも…これが俺の選ぶべき道なんだろうな」
ゆっくりと息を吐いて心を落ち着けようとした。家族に縛られたくはない、けれどゴンに背を向けることもできない。そのジレンマが自分を永遠に悩ませていた。自分の気持ちが未だ整理できない。決断してしまえば、少しは気が晴れるのだろうか。ゴンと二人で過ごした日々は当分戻らない。だからこそ、今後は自分の道を進んでいかなければならない。きっとゴンはゴンなりに進むべき道を見つけるだろう。ゴンが目を覚ました時、どんな顔をして向き合えばいいのかまだ分からない。それでも一歩ずつ前に進み続けることを少しだけ、決意していた。
ゴンが目を覚ますことができたらお別れだ。
もしかしたら、その先の道をまた並んで歩けるかもしれない。なんて。最後まで微かな希望を抱いていた。
ゴンが復活した後、アルカを連れて旅立った。わかりきっていたことだ。ゴンの為にも自分の為にも一度、距離を置くべきだとわかっていたんだ。間違ってるはずないんだ。
『カイトも言ってたよ!オレ達どこに居ても、仲間だから!』
『じゃあ、また!』
ゴンの表情は何ひとつ色褪せていない。けれど迷いはなかった。何処まで行ってもゴンはゴンのままで、遠い未来を見ていた。別れ際にゴンが前を向いて歩いて行くのを見て「ゴンはやっぱり光なんだな」と実感する。自分の居ない未来に向かって、真っ直ぐ進んでいけるゴン。それが嬉しい一方で、自分はもうゴンの傍に居なくていいんだと悟った。ここまでゴンを守ろうと必死に走ってきたんだ。それが終わった今、どこかで空っぽになる感覚が残った。
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