ズンッ!
体が、突如として 強い衝撃に包まれた。
「…な、なに…?」
彼女は 足元を見下ろし、驚愕の表情を浮かべた。
手のひらに持っていたはずの主の筆が、異常なほどに熱を帯びている。
そして——
筆先が動き出した。
「……!」
筆は まるで意思を持つかのように、手を掴み、彼女を引き寄せた。
「何だ……これは……」
彼女の目の前で、筆が自ら 空間に描き始めた。
深紅の線が、ぐるぐると絡み合い、
次第に一つの形を作り出していく。
ズル……ズル……
その形は、 不気味なほどにリアルな人間の姿だった。
そして——
その人物は、すぐに誌音の目の前に現れる。
主、であった。
「よお。久しぶりだな。」
主の顔が、 不死のように現れた。
「お、お前……!」
誌音は 目を見開く。
その姿は 確かに、主そのものだったが——
その目は、 どこか空虚で無表情なものになっていた。
「死んだと思ったか? ふふ、甘いな。」
主は 冷笑を浮かべる。
「お前を殺しても、すぐに戻ってきてやるさ。」
「藁絵」 で描かれたものは、比類なきほど正確だ。
主は 新たな命として、再び蘇ったのだ。
「そして、これからが本番だ。」
主は 筆を引き抜くと、その先端を詩音に向けた。
「お前、俺の”新しい作品”になるつもりか?」
誌音は 冷徹な目で主を見つめた。
「……お前、本当に何回でも蘇るんだな。」
主の目の前で、 筆が再び奇怪な動きをし始める。
「まあ、これが俺の力だ。」
主は 冷笑を浮かべ、筆を一振りした。
その瞬間——
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