この家から彩りを失って、約2年。今も、彩りを失ったまま。
会社も辞め、鈴木さんとも会うことはなくなっていた。
今は、友達とゲーム実況をしている。YouTuberというやつだ。
今日も撮影はあるんだが、なんだかダルい気がする。この2年間、ずっとダルい気がしている。体調が悪いような……悪くないような。
だからって、休むわけにはいかない。今日は楽しみにしていたコラボ撮影なのだ。
ベッドから身体を起こす。やっぱりいつもよりダルい。疲れているんだろうか。
リビングの方に向かおうとすると、突然懐かしい音がした。
チリン………。
雪くんの首輪の音だ……、。
急いでリビングに行く。だが、そこにはいつも通り寂しい空間があった。
なんだ、気の所為か、と思うと、次は足元で鈴の音がした。やっぱり、雪くんがいるのかもしれない。
スマホでその現象を調べながら、ソファに座る。
次は、猫砂をガサガサとやる音が聞こえた。だけど、この家にはもう雪くんのトイレは置いていない。
確実にいる。多分、雪くんだ。
「雪くんが、戻ってきた……?」
スマホには、亡くなった猫ちゃんは一度だけ飼い主に会いに来る、と書いてある。それが、今日だったんだ。
普通は亡くなってすぐ来るらしいが、遅かった猫ちゃんは、天国の心地よさにウトウトしてて、会いに来るのを忘れていたかららしい。
雪くんらしくて、いいな。
「雪くん、おかえり。」
そういうと、ただいま、と言うようにチリンと鈴の音がした。
「僕ね、雪くんがいない世界はつまらなくて嫌いなんだ。」
急に部屋の中がシンと静まり返った。一生懸命、僕の話を聞いてくれているんだろう。
「でも、今は楽しいよ。仲間がいるんだ。」
自然と、涙が溢れてくる。誰にも言えなかった想い。やっと言えるんだ。本人に。
「雪くんに、会いたい……。会いたかった……。」
苦しかった。何も言えずにお別れしてしまったから、ずっと悔やんでた。
「雪くん、大好きだよ。」
チリリっ、と音を鳴らした雪くん。僕も、と言うように聞こえてくる。
「もっと、もっと、構ってあげれば良かった……。」
優しい音でチリンと音が鳴る。なんて言っているか分からない。でも、雪くんのことだから、優しいことを思っているんだろうな。
突然、僕の足元に複数の肉球の跡が現れた。
絨毯に現れていく肉球の跡は、配信部屋の方へ消えてった。
『ずっと、見守ってるよ。』
微かに、そう聞こえた。
気付いた時には、身体のダルさはなくて、清々しい気持ちだった。
コメント
6件
あの〜4話の最後にあった雪くんの…声?は、何だったんですか…? 最終話になってもそれに関わるような事は書いてないんで気になっちゃって……💦 返信しなくても大丈夫です! 気になっただけですので!!