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出張から帰ってきたアルスを家族皆で出迎える。
話の中心になっているのはおしゃべりなイルーシャで、彼女は三日間の出来事を楽しそうに話している。内容はめちゃくちゃだったが、それをアルスは楽しそうに聞いていた。
オリバーは私の隣に座り、じっとアルスとイルーシャをみていた。
会話に加わりたいのだろうか。
「オリバー、お父さんとお話がしたいの?」
私が尋ねるとオリバーはふるふると首を横に振った。
「……じかん」
「えーっと、お腹が減ったのかしら?」
オリバーはまだイルーシャのように言葉を発することができない。
けれど好奇心は強く、言葉や文字の読み書きを覚えたら、イルーシャよりも賢くなるだろう。
「おにわ」
「お庭に行くの? さっきメリルと一緒に遊んだばかりでしょ」
最近、オリバーは飽きずに庭にいることが多い。
父譲りの榛色の髪色と私譲りの黒い瞳で私をじっとみつめ、無言の圧をかけてくる。
幼子を一人に出来ないので、いつもメリルにみてもらうのだが、彼女はもう自宅へ帰っている。
私は自由に動くことができないので、庭でオリバーを観ることができない。
「おにわ、いく!!」
「今日はお庭は終わり。明日、遊びましょう」
「やだ、やだ!!」
外に出たくて仕方がないオリバーの声が段々と大きくなってゆく。
こうなると、静まるのを待つか、望み通り庭に連れてゆくしかない。
私が困り果てていると、アルスが声をかけてきた。
「僕が行こうか?」
「出張で疲れているでしょ? それにオリバーを甘やかしてはいけないわ」
「いいや、僕がオリバーと遊びたいんだよ」
アルスは席を立ち、オリバーと共に外へ出て行った。
「ママ、私も行ってもいい?」
「……パパと一緒にいるのよ」
「はーい」
イルーシャも父と一緒にいたいらしく、ぴゅーと外へ駆けて行った。
一人になった私は、ふうと息を吐く。
この間にメリルが作ってくれた料理を温めて、食器を並べて夕食の支度をしよう。
思ったことを行動に移そうとしたその時。
「お前、何者だ!?」
アルスの大きな声が私の耳に届く。
発言の内容からして、家に訪問者が現れたのだろうけど。
あの騒ぎようからして、見知らぬ人物なのかもしれない。
でも、アルスはああ見えても軍人。すぐに事が収まると思い、様子を見ていたのだけどそうでもない。
(外へ出てみよう)
誰が我が家にやって来たのだろうか。
それが気になり、興味本位で私は玄関のドアを開けた。
☆
「エレノアに用だって? お前みたいな男、知り合いにいるとは聞いていない」
アルスは一環として、訪問者を寄せ付けない。
私に用のある男性はほとんどいない。
それを知っているアルスは、その人を私に近づけまいと玄関先で訪問者を追い払おうとしたのだ。
アルスに何度拒絶されても、訪問者はこの場を去らない。
近所の人たちも、外が騒がしいと気づき、窓を開けたり外に出たりして我が家の様子を伺っている。
これ以上騒ぎにしたくなかった、私はアルスの前に出て、その訪問者と顔を合わせた。
「あ……」
その人物は確かに私の知り合いだ。
関わったのは五年前、カルスーン王国のソルテラ伯爵邸で。
茶髪の髪に緑色の瞳、そして相変わらず整った顔立ちの若い男性。
マジル王国で流行りの服を身に着けている。
すこし背が伸びていたり、筋肉質な体系になっていたり、顎にひげを伸ばしていたりと、容姿に多少の変化があったが間違いない。
「ブルーノ」
「よう、お前が出て来てくれて助かった」
「……久しぶりね」
「”あの日”ぶりだな」
私の前に現れたのは、ブルーノだった。