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【おんりーside】
長時間配信後の食事会。
久しぶりに全員で集まれるとなって来た焼肉屋で、各々が好きなものを食べ飲んでいた。
「〜でさー!」
「えー!なんで僕も誘ってくれんかったんすか!」
「だってさぁ……あれ、待って今日何曜日?」
「金曜っすね」
「やばぁ!ドズさん!今日俺らコラボじゃん!」
「え?……あー!!!忘れてた!ごめん僕たち行かなきゃ!お金置いておくから、これで支払っておいて!」
本当にごめん!と手を合わせて走っていくドズぼんに苦笑していると、あ、そうだ。と隣から朗らかな声が聞こえてきた。
「僕も明日朝イチ配信やから、ここら辺でお開きにします?」
「それがいいかもね、俺もまだ編集残ってるし」
おらふくんとねこおじの合図を機に、全員が帰り支度を始める。
『めん、帰るってさ。……めん?』
「ん〜、あ?おれぇ?」
ふわふわとした口調に、虚ろな目。
そこには完全な酔っ払いができあがっていた。
珍しく外で呑む!と言い出しためんは、何を思ったかぐびぐび杯を進め、途中から静かになったと思えばこれだ。
「だいぶ酔っ払ってるねぇ……」
「んー、このまま置いてけへんしなぁ……かと言って運ぶのもなかなか骨が折れそうやし」
『閉店まで時間あるし、俺が見てるよ。少ししたら酔いも冷めるだろうから』
強い方ではないが、比較的落ち着くのも早い。水を飲ませておけば少なくとも動けるようにはなるだろう。
「え、でも、大丈夫なん?」
『ん、俺は明日フリーだから大丈夫。多少遅くなっても何とかなるよ。どうしようもなくなったらタクシーぶち込むし』
おらふくんとねこおじはしばらく顔を見合せたあと、じゃあ、後はお願いねと店を出ていった。
『めん。起きてる?』
「んふふ、起きてる〜」
何が楽しいのか、くふくふと手元を隠して笑う姿に思わず心拍数が上がる。
意識しだしたのはいつだったか。
人生の先輩から、背中を任せられる仲間へ。
気づいた時には、かわいい、好きだと思っていた。
動画を見返してみたら、俺は分かりやすくめんばかり話題に出す。
最近ではXでもその兆候が出てきて、本人以外気付いているんじゃないかとひやひやしている。
それでも、本人には絶対に言えない。
俺はこの関係を壊したくないし、めんが離れていくのは絶対に嫌だ。
めんの性格上、表面ではきっと気を遣って接してくれる。でも今のような信頼関係はきっと築けない。
だから今日みたいに、自然と二人になれる時間は奇跡みたいなものだ。
『ほら水』
「ありがとーゴザイマス。……おにーさん、かっこいいねぇ」
『……は?』
上機嫌に細められた目は、俺の方を向いてはいるが、焦点があっていない。
『めん?』
「あれ?おれの名前知ってるんすか?」
『いや、知ってるも何も……』
「うれしーなぁ。おにーさん、おれの好きな人にそっくりだからさ」
沈黙。いや、喧騒とめんの笑い声はいまだ響いている。まるで俺だけ別の空間にいるよう錯覚するほどの衝撃に頭がついていかないだけだ。
『あ、え……?すきな、人?』
「そう、好きな人。歳下なのに、かっこよくて、頼りになって。おれなんかが好きになっていい訳ないんだけどさぁ」
何か声をかけようと思うも、思考が追いつかなくて、あ、とか、え、とかしか出てこない。
その間にも、めんの独白は続いた。
「すげーんだよ、そいつ。だれよりも努力して、かっけぇよなぁ……。それにイケメン。なのに声はかわいくてさ
『ちょ!ちょっとまっ』
そう!それそれ!その声!まぁじでそっくり!」
がははと笑う彼へと伸びた手が止まる。
めんの表情が、曇ったから。
「だから、さ。俺が好きになっちゃいけねぇんだよ。アイツの将来、潰したくねぇし」
何より、こんなガタイのいい男に言い寄られても困るよな!
最後には震えそうな声を無理やり払い除けるかのように笑う彼に、俺は決心する。
「そうだ、めん……さん、いいこと思いついたんだけど」
この怖がりな男を、目一杯の笑顔にしてやろうと。
#qnmn
雪野 雪乃花 @ペアネ中
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雪野 雪乃花 @ペアネ中
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「おんりー!」
遠くから聞きなれた声が聞こえて振り返る。
小走りで駆け寄ってきためんが、小さくラッピングされた袋をこちらに向ける。
「これ。この前美味いって言ってたの思い出して。この前酔っ払って迷惑かけた詫び」
『ん、覚えててくれてたんだ。好きだよ。ありがと、めん。
「っお、おう!」
好きという言葉に過剰なまでに反応して目を泳がせる姿が体格に見合わず、思わず笑いそうになる。
まぁ、そう思わせるような言葉選びをしたのだから思惑通りといえばそうなのだが。
相手が一歩を踏み出せないのなら、こちらから誘い込めばいい。
追えば逃げる猫のような男だ。捕らえるには並大抵の努力では歯が立たないであろう。
それでもそんな男を好きになってしまった。それに、めんには申し訳ないけれど勝ち試合を放棄するほど馬鹿な男じゃないんだよね、俺。
彼が俺を好きなのだと知った以上、歯止めをきかせる必要もない。
「じゃあ、また、後で」
『ん』
足早に去っていく彼の後ろ姿を眺めていると、突然後ろから肩を叩かれた。
『……なんですか、ドズさん』
「あんまり彼をいじめないであげてね」
困り顔で助言をくれたドズさんに、善処しますと一言伝えてその場を去る。
ちらりと見えた表情は、しょうがないなぁとなんだかんだ許してくれる時のドズさんに似ていた気がした。
【めんside】
最近、おんりーがおかしい。
体調が悪いとか、機嫌が悪いとかじゃない。
いやむしろ機嫌はかなりいい。
良いなら問題ないじゃないかと思うだろうが、論点はそこじゃないのが問題なのだ。
「めん」
「めーん」
「これさぁ……」
普段にもまして絡むことが増えた。
そりゃあ最近すごい懐いてくれてるとは思ってた。
ポケGOとか、マイクラとか。
最初は頼ってくれて嬉しいという気持ちでいっぱいだったが、少し距離が近すぎる気がする。
ドズぼんてぇてぇだとか騒いでる視聴者ですら気付いているのだ。俺の感覚もおかしくないだろう。
「めん?どうかした?」
『あー……いや、なんでもない、で?なんだっけ』
明らかになんでもありますよって返事に、ふぅんとこちらを一瞥してまたスマフォに目を落とす。
「これ。このキャラ。強い?」
「んー、強いっちゃあ強いけど、こっちのが汎用性あるぞ」
ポケGOのレイドバトルについて話していたら、ふと顔が近づいたのでちらりと盗み見る。
長いまつ毛に白い肌、いつ見てもイケメンである。
悔しい半面、やっぱり好きだなぁと、思う。
「……なに、俺の顔に何かついてる?」
ぼーっとしていたら、視線に気づいたのか胡乱な目で俺を見つめるおんりーがそこにいた。
『あ、や、なんでも、 「うそ」 えぇ……』
隠し事してるでしょ。俺に。
もはや確信と言っても過言では無いレベルの即答に狼狽える俺に対して、おんりーは続ける。
「別に無理に言えとは言わないけど。目の前で隠し事されるのはやだ」
言ってることがめちゃくちゃである。
つまり、言わなくていいと思ったけど隠し事は嫌いなのでやっぱり言ってくれと言っているのだ彼は。
今何回言うって言った?もう訳が分からなくなってきた。
だが、ここで混乱に任せて俺の気持ちを伝えてしまえば、彼を苦しめてしまう。そんなのは絶対にごめんだ。
『いや、すまん。隠してるつもりはなかった。顔整ってんなぁって思わず』
上手く笑えているかは分からないが、そう。と引いてくれたのを見ると、おれは正解を引けたようだと安堵する。
「めんは、俺のことかっこいいと思ってるんだ」
『え?俺今煽られてる?』
軽口も叩けるようになって、調子が戻ってきたぞと口を開いた。
のが間違いだった。
「俺のこと好きなんだね」
『ぁえ!?!!?』
素っ頓狂な声を上げてしまい焦って周りを見渡す。
幸い付近に人はいなかったようで、ほっと胸を撫で下ろすが、目下の問題が消えてくれる訳ではなかった。
『な、にいって、おんりーさん?』
「何ってそのままの意味だけど。めんは俺のこと好きなんでしょ?」
『は。いや、すき、だけど。それはその、仲間として』
「それ。《仲間として》なんて、強調しなくたって分かってる。わざわざつける意味なんて1つしかないでしょ」
『んな事ねぇだろ!それに俺は男だし、お前も男。そんな感情抱えるわけねぇって!』
おんりーの顔が見れない。
自分の発した言葉一つ一つに、グサグサと心が刺されている気分だ。
それはすべて、俺が今までかけてきた鍵の数。
男だから。仲間だから。釣り合わないから。
理由という鍵をかけて、心にしまい込んだ。
その鍵は、擦れて欠けて、ナイフとなって俺を蝕む。
痛い辛いと泣き叫んでも、それを表現することは許されない。許されちゃいけない。
『それに、お前だって、嫌だろ。俺みたいなやつに好かれる、とか』
泣くな、みっともない。
せっかく築き上げた信頼を、ここで手放すというのか。
『っだから「もういい」っ!!』
冷えた声。嫌われた。そう思った。
それもそうか、誰が見たって今の俺は駄々をこねる子供だ。
堪えた涙が溢れ出す。
せめて見られないようにと顔を落とせば、ぐいと力強く顔を引っ張られる。
「バカだね」
『っはぁ!?おま、喧嘩売って』
「顔を下げたって、身長が高いんだから丸見えだよ」
『……あ』
少し視線を逸らせば、ほぼ真正面におんりーの顔。
この期に及んでかっこいいと思ってしまうのだから、俺にはきっとハナから勝ち目なんてなかったんだと思う。
「泣いてるとこ悪いんだけど、もう一回教えて欲しいんだよね」
悪い顔。どうせ俺には拒否権なんてない。
「俺のこと、好きなんでしょ?」
真っ直ぐ俺を見つめる瞳に、俺は白旗をあげざるを得なかった。
『……すきだよ。まぁ、こんなみっともなく泣くくらいには』
だから振るなら早くしろ。
そう言葉にするはずだった口は、おんりーの唇によって塞がれてしまった。
「俺の気持ち、勝手に決めないでくれる?」
すきだよ。めん。
真っ赤に染まった俺がおんりーの瞳に映るのは、その数秒後。
陥落
《なんで急に積極的になったんだよ》
〈誰かさんが酔っ払って、好きな人のそっくりさんと勘違いされたんだよね〉
《ん゛ん゛!!!あ、えー、っと》
〈かわいかったなぁ〜。なんだっけ?かっこよくて、頼りになって……〉
《ダァー!!!!もういいだろ!この話終わり!》
コメント
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わあ……めっちゃ良かったです……!お酒でぽろっと本音が出ちゃうめんさんと、それを逃さずじっくり攻めるおんりーさんの駆け引きが最高でした。「好きな人にそっくり」からの流れ、完全にプロポーズの布石じゃないですか。最後の「かわいかったなぁ〜」で畳みかけるおんりーさんの計算高さにニヤニヤが止まらなかったです。二人の信頼関係がしっかり描かれているからこそ、この急接近にも説得力があって、読んでて胸が熱くなりました!続きも絶対読みたいです!