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大正
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裏五条
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監獄ダンジョン・カルケル第11層にて、かつてないほどの煌気が弾けた。
この階層は煌気の遮断膜に覆われているが、それを踏まえても発現された煌気量は凄まじく、地上に出たアトミルカたちの中にも異常に気付いた者たちがいた。
が、それは後述する。
まずは逆神六駆と他2名の帰還を喜ぼうではないか。
「いやー! やっと帰って来られた! 莉子! 芽衣! 久しぶり!!」
「わぁぁぁ! 六駆くんだぁ! 会いたかったよぉー!! 元気そうで良かったぁ!!」
囚人服姿の六駆にも迷わず抱きついていくのが莉子さんスタイル。
体を密着させても邪魔する凹凸がない点は評価するべきだろうか。
「みみっ。芽衣は空気を読むです。さっき南雲さんから預かっておいた、六駆師匠の探索員装備だけをそっと差し出すです。みみみっ」
莉子の頭を撫でて「ただいま」とおっさんにあるまじきイケメンムーブをかました六駆は、「おっと、いけない」と思い出したかのように右手を破壊した異界の門の跡地に向ける。
「ふぅぅぅぅんっ! 『完全監獄・三重』!! そこにちょっとだけ隙間!!」
ウォーロストとの異界の門を破壊した手前、ここはきっちりと対策を講じておくべきである。
発案者も実行者も六駆なので、彼は慎重だった。
これで報酬が減額されたら堪ったものではないのである。
「くははっ。逆神よぉ。さっきまで張ってあった防御層よりも強力な壁作るとか、おめぇ相変わらず規格外だなぁ」
六駆が「失礼して。着替えますよー」と言って半裸になっているタイミングで、芽衣が気付く。
「みみっ。ルベルバックで戦った阿久津さんが、なんか普通に味方面してるです」と。
なお、莉子さんは六駆くんの着替えの観察に忙しいので、その事実に気付くのは莉子マントを旦那が羽織った後だった。
「阿久津さんは一時的に強力してくれてるんだよ。親父の5倍は頼りになった!」
「くははっ。そりゃあ褒めてんのかぁ? それとも貶されてんのかぁ?」
「……ふっ。力を比べる事など無意味。心のない力など、必要ないのだ」
「いっけね! 南雲さんの事を忘れてた! 『受取古龍力』!!」
「う、うわぁぁ!! 私は、私もう死にたい! なんかもう、取り返しのつかない事を色々言ったの全部覚えてる!! アラフォーのおじさんが言っちゃダメなヤツぅぅ!!」
「南雲さん! 今は時間が惜しいんです! 状況を教えてください!!」
お前が言うんじゃない。
南雲はひとしきり泣いた後、「山根くん。お願い」とだけ呟いた。
サーベイランスが飛んできて、今の地上が割と最悪な事実を伝える。
『と言う訳で、アトミルカの本隊がまさにカルケルから逃げようとしてるっす。今は監察官の皆さんが中心になって応戦してるっすけど、あちらさんは逃げる事が目的なので、捕まえるなら急いだほうがいいっすね! ……ふっ』
「おおおい! 最後のヤツぅぅぅぅ!!! やーめーろーよぉー!! 逆神くんと山根くん組ませたらもう、最悪だよ!!」
『南雲さん。今は緊急時っすよ。そちらのお二人、酷い恰好っすね。支給品の探索員装備が1人分ほど南雲さんの収集箱に入ってるので、よろしければ! ……ふっ』
通信は終わり、時間がない事を理解した六駆。
ならば、やる事は決まっている。
「よし! 『門』出しますから、みんな準備してください! すぐに戦闘のど真ん中に移動しますよ! お金は待ってくれないらしいですから!!」
「六駆くん、南雲さんが泣きながら装備品を出してくれたよぉ?」
「阿久津さん! すぐに着替えてください!! みんなの準備も3分以内ね!! 芽衣は煌気回復! こっちにおいで!!」
「えええっ!? 六駆ぅ!? パパにくれるのが普通じゃね!? お父さん、もう腰みのしか身に付けてないんだけど!?」
六駆は冷たく言い放つ。
「地上に行ったら、好きなアトミルカさんから着るもの奪えばいいよ」
「なーるほど! その手があったかぁ!! さすがオレの息子! 冴えてるぅ!!」
残念だが、逆神家の倫理観について議論している余裕はない。
その辺りの事は、未来の莉子さんに任せるとしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
少し時計の針を戻して、5分前。
地上では。
「……3番。気付いたな?」
「申し訳ございません。私の防御層を突破されるとは」
「ふっ。あれを超えて来るのならば、どのような対策を講じてもいずれ突破されただろう。あの猛者の煌気を少しでも消費させただけ良しとしよう」
「はっ。しかし、いかがしますか? 転移装置は用意しておりますが、設置と発動までに時間がかかります。当然、監察官どもが邪魔をしてくるでしょうし」
アトミルカたちは、既に戦闘を始めていた。
囚人とZナンバーが中心となり、転移装置を使用できる空間の確保に励んでいる。
「回りくどい言い方を私は好まん。ふっ。私にもお前の盾になれと言うのか。……よかろう。これもアトミルカが完全な形になるためならばな」
ところで諸君、これが正しい「ふっ」である。
2番が乱戦状態の戦局に加わる事を決める。
さらに混迷を極める地上であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
Z3番とZ5番を相手に、久坂剣友監察官を雷門善吉および楠木秀秋両監察官がサポートする形で、元中央制御室跡で戦闘が起きていた。
「こりゃあ、ちぃときついのぉ! どがいして囚人じゃった者がこんなに元気なんじゃあ!」
「わたくしたちは2番様のお力によって、完全回復しているのですよ!!」
久坂の問いにはZ3番が応じる。
彼は60歳になるが、過酷なウォーロストで煌気なしに生き残って来た男。
本来、アトミルカの3番は研究職が務めるものだが、このZ3番は皮肉なことにウォーロストの環境に適合する事で、強靭なフィジカルもを手に入れていた。
「Z3番様。回復は現3番様のイドクロア装置で……」
「おだまりなさい! Z5番さん!! わたくしのいない間に3番の座を横取りしたクリムトの話はヤメるのです!! ああ、忌々しい! あのような男を弟子になんてするんじゃありませんでしたよ!!」
3番クリムト・ウェルスラーは、Z3番ロブ・ヘルムニッツの弟子である。
だが、生粋の研究者である3番は師が捕縛された際にも「そうですか」とだけ述べるにとどまり、感想めいた言葉は残さなかったと言う。
「雷門の! そっちのデカいのを近づけせんでくれぇ! ワシらとは相性が悪いけぇのぉ!」
「分かりました! 『土器土器壁作りの街道』!!」
「うっ! これは……! Z3番様! 迷路に迷い込みました!!」
「おバカですねぇ、Z5番さん! そんなもの、自慢の怪力で壊してしまいなさい!!」
Z5番バッツ・ホアン・ロイ。
説明するまでもなく、脳筋タイプである。
考える事が非常に苦手だが、勤勉で真面目な性格が災いして戦場で迷子になる事がままある。
よって、Z3番のように知略に長けるタイプと組ませるのが正しい用兵術。
「ボンバァァァァァァ!!! ファイアァァァァァァァァァ!!!」
「……マジかいや。こりゃあ、間違いなく木原の小僧の出番じゃろ。もう、この敵さんがのぉ。完璧にあやつとキャラ被りしちょるで。木原のはどこ行ったんじゃ!?」
木原久光監察官は未だに『封印玉』によって煌気を封じられていた。
少しだけ複雑な構成のイドクロア武器で、解除するのは実力者になればそれほど難しくない。
はずなのだが、ご存じの通り。
木原必光は脳筋を極める事で監察官最強の座にたどり着いた男。
「うぉぉぉぉん! ナイフ引っこ抜こうとしたら、柄だけ砕けたぜぇぇぇ! 刃が取れねぇんだよぉぉぉぉ!!」
ご覧の有り様である。
なお、逆神六駆が転移してくるまで残り6分と30秒ほどかかる。
コメント
1件
もう、第403話…めちゃくちゃ熱かったですね! 六駆くんたちが監獄から戻ってきて、地上がめちゃくちゃな戦場になってる感じが一気に伝わってきました。 特に六駆くんが「門」出して戦闘のど真ん中に突っ込もうとするあの潔さ、逆神家の倫理観を「未来の莉子さんに任せる」って流す感じ、笑っちゃいました(笑) そしてZ3番とZ5番のやり取り…「ふっ」が正しいとか、脳筋が迷子になるとか、シリアスな中に五木さんらしいユーモアが散りばめられてて、にやにやしながら読んでしまいました。 木原さんの「柄だけ砕けた」には思わず声出ましたよ…!(笑) 最終局面に向けて、これからどうなるのか本当に気になります。続きが楽しみです!🤍