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君は、僕の目の前にいきなり現れた。 親族の墓参りを終えた後、近くの藤棚を見いていた時だった。
君は、見事な藤棚の下で、潤んだ目で藤を見ていた。
僕は、そんな君に恋をした。
ほとけ) はぁ‥
僕はほとけ。先日亡くなった、顔も合わせたことがない親族の墓参りに来ている。一度も会ったことがないのになぁ。
ほとけ)せっかくきたんだし、近くの藤棚観見に行こっかな‥
この時の僕は、軽い気持ちで足を運んだ。
ほとけ)やっぱ綺麗だな‥
カサッ
ほとけ)?
そこには、藤に紛れるように、紫色の瞳をした、少年が立っていた。
僕よりいくらか下の高校生くらいだろうか。潤んだ目で、藤を眺めている。
どこかで会ったことがある気がしたのは、僕の気のせいではない。はずだ。
気になって声をかける。
ほとけ)あの‥
???)ピクッ あぇ あ、
ほとけ)大丈夫ですか?
そう聞いた瞬間、彼の目から大粒の涙が溢れた。
ほとけ)アワワワワえっと、ちょっと移動しましょうか‥
タタタタタタ
ほとけ)大丈夫ですか‥?
???)グスッはい。
ほとけ)えっと、僕の名前は、ほとけです。
???)あ、俺の名前は初兎です。
初兎、初兎、初兎? 頭の中で、名前が繰り返される。何か、彼に関する大切なことを忘れている気がする。
ほとけ)よろしく、初兎ちゃん。
初兎)うん‼︎
ほとけ)ね、ね、今日時間ある?あと、明日とか。
明日、と言った瞬間、彼の顔が一瞬曇った気がしたが、すぐに満開の笑顔に戻って
初兎)今日ならあいとるで。
と言った。
ほとけ)じゃあ、今日はここで話そ‼︎
僕たちは、たくさんの話をした。趣味の話、家族の話、自分の話。
気がつけば夕暮れ時になっていた。
ほとけ)今日、ありがとね‼︎
初兎)うん。
ほとけ)じゃあね‼︎
初兎)あ、まって‼︎
想像以上に大きい声が僕を呼び止める。
ほとけ)どうしたの?初兎ちゃん。
初兎)覚えとらんの‥?
ほとけ)え?
初兎)俺のこと、覚えとらんの?
ああ、鍵の錠前が外されたように記憶が溢れた。
あれは、高校1年の春。
僕は、席が隣になった、初兎ちゃんと、友達になった。
彼もまた、今日会った彼と同じ目の色をしていた。
僕は、恋に落ちた。
初めて話しかけた日から、僕たちは兄弟のように遊んだ。毎日会った。いろいろなところに行った。
ちょうど、5年前の今日。僕は彼を見事な藤棚を見に行こうと誘った。
彼はすんなり了承してくれて、すぐに見に行った。
今日のように、満開だった。
初兎)なぁ、いむくん。
ほとけ)なぁに、初兎ちゃん。
見終わった後、僕たちは夕日を見るため、近くの崖に座っていた。
初兎)ありがとな。
ほとけ)なに?改めて。
初兎)俺と出会ってくれて。友達に、親友になってくれて。俺、嬉しかったんよ。初めてやった。こんなに心を許したしゃべれたのは。やから、
ほとけ)???
彼は、崖っぷちに立っていた。
ほとけ)初兎ちゃん?危ないよ。戻ってきて。
彼はゆっくりと首を振った。
初兎)いむくん。大好きやで。
そう言って、彼は飛び降りた。
なぜ忘れていたのだろう。彼との大切な記憶を。
彼は、生きている。死んでない。今も、眠っている。
ほとけ)初兎ちゃん、、?
目の前の、最後に歩いているところ見た姿の彼に声をかける。
初兎)なんや?
いつもの悠長な口調で、ゆっくり答える。
ほとけ)待っててね。
その言葉を合図に僕は駆け出した。まだ生きている。まだいる。きっとあの場所で、僕を待っている。
霊園を抜け、信号を駆け抜け、小学校を通り過ぎ、大学を通り過ぎ、ようやく僕は足を止めた。
目の前に立っていたのは、病院だ。
急いで中に入り、目的の場所へ走る。
走りすぎたからだろうか。胸が苦しい。異常なほどに。酸素が足りない。それでも走る。
僕は本当の本当に足を止めた。
僕の目の前には、呼吸器をつけた、親友の姿があった。
近くの椅子に座り、声を必死でかける。
ほとけ)初兎ちゃん‼︎初兎ちゃん‼︎起きてよ‼︎僕、思い出したよ‥‼︎会いに、きてくれたんだよね‥?ポロッ
ねぇ?思い出させてくれたんでしょ、、、?ポロポロだから、起きてよ、、
生きている。まだ生きている。僅かだか、微かに心音が聞こえる。
お願いだから、戻ってきて。まだ僕は、伝えられてない。君に、大好きな君に。
だから、だから
ほとけ)起きて‼︎
ピクッ
ほとけ)‼︎
彼は、目を開けた。何度か瞬きをして、自ら呼吸器を外し、壁を背もたれに僕に向かい合った。
初兎)久しぶりやなぁ、いむくん。
ああ、彼が、生きている。目の前にいる。
ほとけ)うわぁぁぁぁぁん
僕は泣いた。涙腺が崩壊したように、彼の目の前で、大泣きした。
その間、彼は優しく見つめてくれていた。背中をさすってくれていた。先刻、高校生の彼にしたように。
ほとけ)忘れてて、ごめんなさい、、
初兎)うん。
ほとけ)さっき、あったよね?
初兎)! 夢や、なかったんやな。
ほとけ) ねぇ、初兎ちゃん。
初兎)?
ほとけ) 大好き。
彼の目から、大粒の涙が溢れ、それを忘れさせるように、負けないように、笑顔を花を咲かせて、
初兎)俺もやで‼︎
と、言った。
約束です。何があっても、僕と一緒にいてください。意識がなくても、たとえ幽霊であっても。
何かあったら、あの藤棚で会いましょう。
僕は、君の瞳が大好きです。綺麗な藤色だから。吸い込まれそうだから。
目が会うたびに、今日のことを思い出すでしょう。君にもそうであって欲しいのです。
どこに行っても、心は1つです。
初ノベルどうでしたか‥?
感想くれると嬉しいです。
ちなみにこの話、家の近くの藤棚で、男の子2人が中良さそうに話しているのを見て思いつきました。
どうか、この話があなたの心に残りますように。また、一生の宝物になりますように。