「スーパーでバイトしてる時、買い物に来てくれるあなたをたまに見かけるようになって。気づいたら自然にあなたを探してる自分がいて。こんな気持ち初めてで、ずっとどうしたらいいかって悩んでた。そしたら、あの日、あなたがイチゴを……」
私を探してくれてたなんて、全然知らなかった。
「僕は、あなたを夢中で走って追いかけてた。やっと話すことができたのに、上手く自分の気持ちを伝えられなくて。だから、勇気を出して誘ったんです。雫さんに絶対想いを伝えるって決めて」
敬語とタメ口が混ざって……
私達の関係は、まだまだ微妙で複雑。
恋人同士でもないし、友達でもない。
でも……
こんなにドキドキしてるんだから、もちろん私は希良君のこと、嫌いじゃない。
だからって、この雰囲気にのまれて、いいかげんなことは言えないし、言っちゃいけない。
「嬉しい……よ。ありがとう。私なんかにそんなこと言ってくれて……本当にびっくりしてる」
「年上とか、年齢なんて全然関係ないから。僕は、雫さんの全部が好きだから」
「希良君……」
「ほんとだよ」
「あ、ありがとう。だけど、やっぱりまだ信じられなくて。私ね、いろいろあって、今、自分と向き合ってるとこでね。だから……すぐに答えとか出せない」
こんな曖昧なこと言われて、希良君はどう思うんだろ?
本当に……ごめん。
大人なのに、すごく情けない。
「ごめん。出会ったばかりなのに、無理やり自分の気持ちを押し付けてしまって。だけど、この気持ちはずっと変わらないから。返事は、焦らずに待つよ」
「希良君……優し過ぎる」
「そう? だって、僕はそんな雫さんのこと、丸ごと全部好きになってしまったから」
胸にグッとくる言葉。
そんな風に言ってくれて……
私、年下の君にずいぶん甘えてしまってるよね。
「……ごめん」
謝ってどうにかなるなんて思ってるわけじゃないけど、今はそれしか言えなかった。
そして……パレードが始まった。
迫力のある楽しい音楽に乗せて、キャラクター達がどんどん出てくる。
手を振ったり、踊ったり、すごく可愛い。
夜の黒が、たくさんのカラフルな絵の具で彩られたように、パーク全体が華やかに浮き上がってる。
そんな素敵な光景と、さっきの甘くて優しい告白に、どうしようもなく胸が熱くなって、涙の雫が私の頬を伝ってそっとこぼれていった。
その時、希良君は、さりげなく私の手を握ってくれた。
君の左手と私の右手。
重なり合うと、やっぱりすごく温かい。
希良君は、朝からずっと優しいんだね。
私の心、いっぱい癒してくれた。
こんなに楽しい時間をくれて本当にありがとう、今日のこと、私、一生忘れないよ。
思い出の1ページ、胸の中に大切にしまっておくから。
恋愛すること、いろいろなこと、まだまだ不安だけど、でも……1歩前に踏み出して考えてみる。
どんな答えが出るのかは全然わからないけど、私は希良君のおかげで少し変われるような気がした。
臆病な自分と卒業したいって思えたよ。
君に出会えて…
本当に良かった、ありがとう。
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