テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【勇人視点】
「ねぇ、俺の服がめっちゃ綺麗に畳んで置いてあったんだけど、もしかして柔ちゃん?」
「いや、俺じゃないよ?俺もそれ気になってた。もしかして…仁人?」
休日の朝、瞬太と柔太郎が話しているとそこへ大智がやってきた。
「ああ、洗濯物のことやな。そうやで。仁人がみんなの分畳んでくれたんや」
「うそまっじ?でもなんで?」
「ポイント稼ぎでもしたいんじゃねぇの?」
驚いた瞬太の疑問に対し、今まで黙って経済新聞に目を通していた俺が口を開く。
「いや、『とっくのとうに乾いているのに誰も片付けない神経がわからない。視界に入るのがストレスだから畳んどいた』らしいで」
「はい勇人勘違い〜。大体俺らに媚びようとする性格じゃないでしょあの人は」
柔太郎の煽りにうるせーと返す。
「そういえば、仁人、さん…は?」
「今日も講義があるからって、1時間前くらいに家出たで」
瞬太が恐る恐るという風に尋ねると、すかさず大智が答えた。
「それにしても昨日のあいつの態度酷かったよなー。瞬太かわいそーだったわ」
何となく面白くなくてそう口にする。
「いきなり手なんか握った俺が悪いから…それにあの人、怖がってた。俺たち結構スキンシップ好きな方だから、気をつけなあかんかもなぁ」
「だれがあんな奴にベタベタするかっ!俺はかわいい弟にしかせんっ!」
そう言って瞬太に抱きつきわしゃわしゃと髪の毛をかき混ぜる。
わははと笑い声が絶えない和やかな空気。やっぱり、兄弟は俺たち4人以外いらない。
帰ってきた仁人は昨日に引き続きやっぱり無言・無表情で、俺らに軽く挨拶をするとすぐに自分の部屋に行ってしまった。
仁人の部屋は、俺の部屋と大智の部屋の間にあって、元々は物置として使っていた部屋だった。
夜、俺が当番だったため適当に作った料理をテーブルに並べていると、柔太郎が椅子に座りながらあれ、と零した。
「仁人のは?」
「食べないってさ」
ウチでは、特段理由がない限り皆揃って食事を取るという決まりがあった。物心ついた時にはそのルールがあったため、皆特に意を唱えることもせず、今日までそれが続いているのである。
「いくら家族やからって、初対面同士やのに食事は絶対一緒に取るて、そりゃキツイわな。めちゃめちゃ気まずいし」
大地がパスタを頬張りながら興味なさげに言う。皆そうだね、と言いながら、普段と同じように4人で食事をとった。
ただ、家にもう1人人がいるのにこの場にはいない、というのが、何だか変に感じられた。
【瞬太視点】
夜、喉が渇いたのでキッチンに行って水でも飲もうと下へ降りると、なんとそこには仁人がいた。
こちらに気づくと分かりやすく驚く。
「なんか暑くて、喉乾いちゃって」
「俺も…」
「……」
しばらく沈黙が続き、仁人がコップを洗い終わった頃、
「あのさ…」
突然話しかけられ、水を吹いてしまいそうになる。
「な、なに…?」
「昨日はごめん。手、痛かったよな…」
「!」
昨日と打って変わって弱々しい態度に一瞬驚いて顔を見ると、大きな目がこちらを伺う様にじっと見ていた。
うわっ、上目遣いヤッバ!!かわいっ!
「いやいや、俺の方こそごめん。俺がいきなり触っちゃったから、仁ちゃんびっくりしたんやろ?」
「…え?」
「…ん?」
……しまったぁあ!!可愛くて思わず仁ちゃんって呼んじゃったぁあ!!
「ごめんごめん!今のほんと気にせんといて」
「……」
無言になってしまった仁ちゃんに謝り倒す俺。俯いていた仁ちゃんが、何やらぼそっと呟いた。
「えっ、何…?」
「一応、俺、年上…」
見ると耳が真っ赤になっている。
「仁ちゃん、かっわええ…」
あっぶない!思わず抱きしめそうになったけど、我慢我慢!また嫌われたくないから。
「可愛くない!もう寝る。…おやすみ」
最後に小さい声でおやすみって言ってくれるのも、可愛すぎて悶える。
ヤバい。ニヤケが止まらん。
「おやすみぃー」
ああ、何だかあの可愛いい仁ちゃんを勇ちゃんたちに知って欲しいような、知らないでいて欲しいような、複雑な感じ。
でも、俺たち4人の中では俺が一番仁ちゃんと距離縮められたよね…?
いまだ緩んだ顔のまま、俺は自室へと戻っていった。
~次の日〜
「今日勇人帰るの遅いってさー」
「りょーかーい」
夕方大智が寛ぎながらスマホを触っていると、勇人からグループチャットに帰りが遅くなるとの連絡が入った。
リビングでは大智はソファに座って寛いでおり、瞬太と柔太郎は今日の課題を終わらせていた。
「おーい柔太郎、腹減った。今日の夕飯なにー?」
「うっわ俺今日当番から、えー、何にしよー。はぁ〜だっる」
「じゅう、本音漏れてるやんw
そういえばさぁ、仁ちゃんも兄弟の一員なんやし、順番に飯作ってもらわんとな」
瞬太の言葉に大智と柔太郎が固まる。
「いや、俺らと飯も食わんのに、作るのなんか尚更やろーーって、なんや『仁ちゃん』て!」
「何々〜?いつの間にそんな仲良くなったの」
ヤバ!また無意識のうちに仁ちゃん呼びしてた!
瞬太が頭を抱えていると、ちょうどそこに話題の人物が階段を降りてきた。
「話題をすればやな。なぁ仁人、俺ら毎日当番制で晩飯作っとんねん。お前にも作ってもらいたいんやけど」
「別に、いいけど。てか俺が作ったやつなんか、食えるの?」
「当たり前やんか!仁ちゃんが作った飯、俺食べたい!!」
自虐的な言葉に、瞬太は思わず大きな声を出してしまった。その言葉に仁人が元から大きな目をさらに大きくする。
「って俺また仁ちゃんて呼んじゃった。…もういいよね?仁ちゃん呼びで!」
「は!?良くないし!」
「とか言って照れてる〜!仁ちゃんかわえー」
「ほんまや、耳真っ赤!なんやクールキャラかと思ったけど…ツンデレか」
瞬太と仁人のわちゃわちゃに大智がにやにやと笑いながら参戦する。
「ツンデレじゃないっ!」
「え〜仁ちゃん、かわいぃ〜♡」
「お前までっ!」
そこに柔太郎も加わり、仁人の顔はもう真っ赤だ。
「いい加減にしろっ!俺はかわいくないっ!!」
最初は鉄仮面かっ!ってくらい怖いイメージだったのに、今はぷんすこ!って感じで怒っている姿も可愛い。
「仁ちゃーん、何か作ってよー」
じゅうナイス!と瞬太は心の中で叫ぶ。
仁人ははぁ〜と深いため息をついた後、何食いたいの?と聞いてきた。
「はい、お待たせ」
「「「おぉーーー!!!」」」
湯気を立てているふわっふわの黄色。
仁人が瞬太のリクエストを受け作ったのは、ふわふわのオムライスだった。
もうこの年になってからは、あまり食べる機会もなく、久しぶりのオムライス。
パクっ×3
「「「うんっまーーー!!」」」
3人とも口を揃えて褒め称えると、仁人はまた耳を赤くしながらも嬉しそうに微笑んだ。それを見て3人もまた笑顔になる。
「なんや仁人料理上手いやん。プロやでこれは」
「毎日自炊してるからな」
「それにしたって美味すぎるよ。毎日食べたい!」
「瞬太それ自分が作らなくて済むからじゃないの〜?…でもマジで俺も毎日食いたいくらい上手いよ」
「…そんな褒めても何も出ないぞ」
ムッとした風を装いつつも、仁人の顔は緩んでいた。
初対面時は最悪な空気だったが、数日後の今日、すでに仁人は兄弟と打ち解けていた。長男の勇人以外とは。
後片付けを終えた仁人が部屋へ戻った後すぐくらいに勇人が帰ってきた。
「腹減ったー…うわっうまそー!」
今日の飯なんかレベル高くね!?とテンション高めにご飯を温める勇人を尻目に、食後寛いでいた3人はワザと黙っていた。
「いただきまーす…っっうま!!」
美味しさに驚いている勇人に、3人は息を潜めて笑う。
「なぁ柔太郎、今日の当番お前だろ?マジでこれお前が作ったの?」
「勇ちゃん、それ、仁ちゃんが作ったの」
柔太郎がニヤケた顔のままネタバラシをすると、勇人が固まった。
「…は?あいつが?嘘だろ…あんなザ・堅物みたいな奴がこんな料理上手いなんて…」
少しズレたところでショックを受ける勇人だったが、ふと顔を上げた。
「え、てか『仁ちゃん』?それってあいつのこと?」
「そうやで!瞬太が言い出したんや」
「いやいやあいつそんなキャラじゃないでしょ…って、何でお前らあいつと仲良くなってんの?」
「いや、仁ちゃんかわいいで!照れるとすぐ耳赤くなるん。な!」
「そうそう。反応がかわいいんだよね」
「ツンデレやしな!」
自分の知らない間に4人が仲良くなっているのを知り、勇人は何となく複雑な気持ちになった。
弟たちが、あいつに取られたような…所謂嫉妬というやつである。
パクっ
だがうまい。このオムライスには罪はないので一口も残さず完食する。
あったかくて、胸の奥までじんわりくるような、そんな不思議なオムライスだった。
断じて兄弟とは認めないけどな!とご馳走様をしながら、勇人は心の中で毒吐いたのだった
コメント
1件
やばやばやば!!!!!第3話も尊すぎて胸がキュンキュン止まらないんだけど😭💕💕💕 夜中キッチンで遭遇して「ごめん」って謝る仁ちゃんからの「一応、俺、年上…」で耳真っ赤になる流れ、完全にかわいいの化身でしょ!!瞬太くんの「仁ちゃん」呼びが自然に出ちゃう気持ち、私にも痛いほどわかる…! オムライス作ってみんなで「うんまー!!」ってなってるのに勇人だけ仲間外れ感で嫉妬してるの、兄弟の複雑な関係性がすごく伝わってきたよ!続き気になりすぎるから早く更新してほしいです😭💖