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本人しか解除できない手錠で拘束され、またもや本拠地内へと戻されそうになる。
なんとか抵抗しようと手錠を付けたまま逃亡を図ったが、手錠のせいで位置がバレ、長椅子に座る幹部一員にテレポートで連れ戻されるだけだった。
毎度連れ戻されるたびに偉そうに足を組む彼。
それに見下される気分はとてつもなく、苦しかった。
決して抱いてはいけない罪悪感を、彼の前で見せたくなかったから。
何度も何度も、彼のそばから逃げた。
彼らのことを思うと、心臓が痛くなり、口からは血が吹き出る。
そのたびに物陰に隠れ、位置がバレ、また戻される。
とうとう力尽きた頃には朝日が昇り始めていた。
ジメジメと暑い中、病状も抱えながら一晩中走り回ったせいか汗で気持ちが悪い。
物陰に隠れさせていた体が、また涼しい場所にテレポートされる。
先程とは違う場所に出されたのか、あたりからは何かいい匂いがする。
重たくなった瞼を開けると、視界いっぱいにあったのは紫色の綺麗な瞳だった。
「あ、起きた」
「体、大丈夫?」
横に立ち、心配そうな面持ちをする赤色の彼。
緑色の彼の姿はない。
紫色の瞳を持つ彼がそっと動く度に、首からぶら下げられたIDケースが目に付く。
二人共付けている様子に、どうやら新しく総統の座に就いたアイツが会社らしくしようと思ってつけたんじゃないか?なんてくだらない考察が頭の中で飛び交う。
ぼーっとしていた僕の顔を覗き込む二人に意識が戻される。
「君…らっだぁ、だよね?」
赤色の彼の質問を聞いて、今になってハッキリと分かったことがある。
それは、”この世界の生前の自分”と、彼らの瞳に映る”現在の自分の姿”が異なっているのだということだ。
だとすれば、当然、僕自身が知らないフリをすれば彼らに正体がバレることはない。
知らないフリをしよう。
わざとらしく、かつ堂々と首を傾げてみせた。
二人は困ったような、焦ったような表情を見合わせると同時に、耳につけた黒い何かに話しかけ始める。
無線機だと知るのに時間はさほどかからず、報告をしている彼らの背中で滞在している場所を見渡してみる。
見覚えのある場所だった。とてつもなく。
口から大量の血液が吹き出てくる。
あの時なんで…なことをしてしまったのか、なんて後悔が更に傷を抉っていく。
体中の血液という血液が体外に出されていってしまう光景は、なんとも死を連想させるらしい。
目の前にあった背中がいつの間にか消え、僕はそのまま…
意識を失う前、誰かの声が聞こえた気がした。
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