アリアはこう言った。
「あなたの絵が好きだからよ。家にいる絵描きは、評価や収入だけを求めていて、面白くないんだもの。」
なんということだろう。アルトの絵を、初めて好きと言ってくれたのはアリアだったのだ。嬉しさのあまり、アルトの頬には大粒の涙が流れていた。
「男の子が泣くなんて、まったく弱いわね!」
アルトは涙をぬぐい、アリアに別れを告げた。そしてアリアに絵を売ったお金でオイルを買って、家に帰った。
いつも通り、キャンバスや画材で散らかった部屋。だが、その部屋が妙に明るく見えた。
アルトはキャンバスに、思うように絵を描いた。絵を描いたら、またアリアに会えるような気がしたから。
自分の思うがままに、筆を走らせる。いつもと同じことをするだけ。でも、いつもより楽しい。これは一体、なぜなのだろう?
味わったことの無い感情に、アルトは少しとまどった。でも、その知らない感情がとても心地いい。
何時間も描いているうちに、絵は完成した。これ程までにない出来栄えだった。
アルトは鮮やかな彩りのキャンバスを撫で、誇らしそうに笑った。アルトが笑ったのは、何年ぶりだろう?
「明日は、アリアに会えるかな」
期待や希望を胸に、ベッドに入る。あれこれ考えているうちに、アルトはとろとろと眠りについた。
コメント
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少年の素直な心が描かれていて良かったです。