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;ひとつ、深呼吸。大丈夫。空に浮かぶ白い惑星は、人の気持ちなど知りもしないかの様に異様な輝きを見せています。天気が持つ、人を慮る力は所詮その程度なのでしょうね。何の考えも無しに、月の光と電灯の光を浴びて変に目立った電話箱の中へ入った。錆び付いた銅貨を何枚か入れて、受話器を取る。押し慣れた電話番号は、覚えるのにさほど時間を要さなかった。何十回か着信音が鳴り、もう諦めようかと思った頃に聞き馴染みのある声が受話器越しに聞こえて来た。単刀直入に、◼️◼️に別れ話を持ち掛けます。これ以上一緒に居れば、可笑しくなる。僕が。
;◼️◼️を一目見た時から、僕は心惹かれていたのです。まるで前世の前世から同じ時を過ごしていた様な!そう錯覚してしまう程に。依然、そんな訳も無く、僕の欲望はどんどんと大きさ、黒さを増して行く。ようやっと手に入れたのに、僕の心は留まる事を知りませんでした。それが当たり前になってしまったから。◼️◼️を視界に入れるだけで満たされていた筈の心は急速に乾き、まるで砂漠の中水を求める人の様に情け無く◼️◼️に擦り寄りました。一緒にその駱駝に乗せてと懇願する様に何処にでも着いて行きました。断られた日には怒り狂って物に当たり、それでも◼️◼️だけは傷付けまいと必死に抑えたつもりです。それを変と思わなかった貴方も貴方。嫌、もしかすると◼️◼️はもう既に諦めていたのかもしれませんね。
;通話を終了した事を報告する音が僕の伽藍堂な体内に数回鳴り響いた後、◼️◼️の家に向かった事を覚えています。泣き崩れ、もういっその事塵になって消えてしまいたかったのを鮮明に記憶しています。ただ何を心変わったのか、道中港に訪れたと思うのですが…。きっと、もうこの下らない人生を終わらせようとしたのでしょうね。深い藍色に、酸素の無いあの世界に、脚を踏み入れようとしたその時に、◼️◼️に出逢ったのです。
「 何をしているの?赤の他人だけど、お願いだからさ。そんな事はしないで。 」
嗚呼、貴方が、貴方が。貴方こそが、僕を救って下さるお方なのか。知らずの内に消えようとしていた一つの命の灯火を、そっと守って下さるのか。彼の名はぺいんと、と言いました。僕のこの汚らわしい、「しにがみ」なんて名前を貴方の色で全て上書きして下さるのでしょうか?暗闇が続く夜にでも視認できてしまう金髪、紫の瞳と黄色の瞳が交わる場所は、酷く冷たく寒く。でも僕の体温はどんどんと上がっていく。何と美しいのであろう。何故か頬が生温かい。僕は貴方のその引力に、その抵抗できない重力に惹かれたのです。彼は、道端に咲く小さな一輪の花を見つけ出す事こそが、人生に於いての幸せだと語りました。彼は、多くの無念を知る事こそが、人生に於いての理想だと語りました。僕には到底出来そうに無い。小さな花は見つけられましたが、もうとっくに踏み潰してしまいました。貴方と言う、ぺいんとさんと言う大きな希望を見つける事ができました。◼️◼️とは既に別れを付けています。◼️◼️と過ごした過去は、僕にとってずっと忌々しいもので在り続ける事でしょう。
;今まで、貴方の全てを手に入れたいと心からお慕いしておりました。だから、どうかそんな、さよならなんて哀しい言葉を口にしないで。この御伽噺の筆を、まだ止めないで。僕達だけの舞台の幕を、永遠に降ろさないで。