テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
かなり読む人を選ぶ作品です。
不穏、メリバ、病み、死の類が苦手な人はブラバ推奨。
直接的表現はないので自分を試すために読むのもありかと思います。
以上の事を読んで「オーケー!俺は最強!!」っていうSupermanは行ってらっしゃい。
「ねぇ、海にいこう?」
「…いいね、賛成。」
俺はにっこりと目を細める猫のような恋人の下顎を擽って快諾の意を示した。
海にいこう?
俺は可愛らしい恋人を想いながらどこの海へいこうかとネットの海を泳いでいた。時代の進歩とはすごいものだ。ワード検索さえすれば幾つもの美しい青が出てくる。場所と住所と所要時間、各種交通手段等がたんまりと出てくる。愛しい人を想い、どこの海が彼に映えるか、どこの海が喜ぶか。緩む頬をそのままにのんびり眺めていると、肩に顎を乗っけてPCを覗き込んでくる愛らしい彼が現れた。
「何処がいい?」
「ガッチさんと行くなら何処でもいいよ。」
「これまた悩むこと言われちゃったなぁ〜、おじさんの趣味なんてキヨには合わないよ?」
「んー…、じゃあ、此処。」
「此処?たしかに綺麗だね」
「ガッチさんの眼みたい…」
「…口説き文句かな?」
「ぁ、や、別、に…、そんなんじゃ…ある…かも……、ぃや、ごめ、忘れて、、!」
ぽぽぽっ、と頬を染めて目を泳がせオロオロと離れようとするそれはそれは可愛い恋人を引き寄せ染まる頬にキスをした。途端に首まで真っ赤にさせ、それを隠すかのように俯くキヨを見て思わず声を上げて笑った。丸見えの真っ赤な耳を擽るように撫でては、
「じゃあ、此処で決定ね。」
なんて優しく告げた。
俺は仲良しな配信仲間に「この日は俺無しで配信しといてね」と連絡を入れた。外せない用事──愛しい恋人とのデート──がある事を直ぐに察してくれた仲間たちにスマホ画面の前でくすりと笑顔を浮かべ感謝を含む文言を送信し、スマホを閉じた。
「ちゃんと休み取れた?」
「勿論、完璧だよ。」
「…俺も、良い具合にテニス避けたよ」
「ふふ、テニスに目移りしたらどうしようかと思った。」
「んな訳ねぇじゃん、俺はガッチさんのが大事なの〜。」
そう言いながらキヨは俺の首に腕を回して緩く抱き合った。たっぷり30秒抱き合ってから身体を離せばムズムズと嬉しそうに口を歪ませるキヨと目が合って思わずもう一度ハグをした。
「可愛いねぇ、」
「…ガッチさんにだけだよ。」
あっという間に時が過ぎ、海へいく日になった。キヨとは駅で待ち合わせて各々ラフな軽い姿で落ち合った。
「ごめ、ガッチさん、待った、、?」
「いや?俺も今来たところ。」
彼氏なら1度は言うであろうと偏見を持たれがちな言葉をキヨに言っては「テンプレじゃん、」と笑う。その胸を締め付けられる程可愛らしい笑顔を摂取した所で俺達は電車に乗り込んだ。
ほぼ貸し切りのような電車で俺達は寄り添いながら電車に揺られる。段々と景色が都会から自然へと変わっていく様にキヨは終始目を輝かせていた。そんなキヨを笑顔で眺めながら数時間揺られた後、途中に止まった駅で一旦降りてコンビニに寄った。
少し腹を満たし、酒を呷る。普段あまり飲まないキヨもテンションが上がっているのか、将又別の理由か、同じように酒を呷る。ゆるゆると笑いながらキヨはふと、
「ガッチさんは誰かに伝えた?」
「なにが?」
「…海にいくってこと。」
「伝えてないかな、濁したままだよ。」
「ふぅん、そっか」
「キヨは?」
「俺は最俺には伝えた。」
「ほう、」
「”絶対いい旅になるよ”って皆が言ってくれた。楽しんできて、って。」
キヨは嬉しそうに顔を綻ばせて俺にそう告げた。
たのしもうね、ガッチさん。
「ガッチさん!見て見て超綺麗!!」
誰も居ない海でキヨはきゃっきゃっとはしゃぎながら俺を呼ぶ。興奮しきった様子でこちらに手招きするその手はまるで空気を叩くくらいの勢いだ。
「はいはい、ちゃんと行きますよ。」
白の砂と青の海、その二つを混ぜたような空の色。素晴らしい日に海に来れた。何処か満足気な気持ちになってはキヨの元に歩き始める。
「……本当に綺麗だ。」
「うん、そうだよ…ね……、ぇ…?」
眩しそうに水平線を眺めるキヨが俺の言葉に頷き、ゆっくりと視線をこっちに向ける。俺は海なんか一つも見ていなかった。ただ、キヨの横顔をじっと見詰め、愛おしそうにそう呟いた。それに気付いたキヨはボッと顔を染めて目を逸らしてしまった。
「……バカ。」
キヨは水を蹴り上げ俺に吹っ掛けてきた。俺は思わず1歩後退ってはキヨに仕返しをする。
「本当の事だっての。」
「もう!!バカ!!」
再びばしゃりと水を掛けられる。そこから段々とエスカレートして落ち着いた頃にはお互いびしょ濡れになっていた。互いに息は上がり、肩で呼吸をする程になった姿を見て思わずふたりして笑う。ここに誰かが居たなればきっと不審者扱い間違いなしだ。
ふと、俺はキヨに近付いた。キヨはすうっと目を細めて俺の行動を見続ける。俺はそんなキヨを放って自分勝手に抱き締めた。とく、とく、と軽く脈打つ心臓と血液のお陰で暖かい身体。それらを感じた途端に愛おしくなった。この世界の何よりも可愛らしくて、愛おしくて、守りたい存在。みんなの前では強がってても実はすごく繊細で脆く儚いこの男が腕の中で生きていることを感じられるだけで、もう満足だった。
「愛してるよ、キヨ。」
俺もあいしてる!!
こんな俺たちを世界は憐れむだろうか。
同性同士の恋なんて、世界は認めるのだろうか。
認められなくても、顰蹙を買っても、もうどうだっていい。
キヨが、この愛らしい恋人が隣に居てくれるのならなんだっていい。
「ガッチさん帰ってこないな」
「うっしーも?俺も帰って来おへん」
「キヨも居ないしな、最俺から聞いた。」
「キヨくんはなんか、テニスとか何やかんやしてるかもって分かるけど。」
「ガッチさん、だよなぁ…」
「家行ってみるか」
「一旦行くか」
そう、少し背の低い頭ふたつがガッチマンの玄関先に並んだ。インターホンを押しても返事が無く、不審に思ってはゆっくりとドアノブを引く。
「…開い…た……」
「空き巣か」
「入ってみよ」
「そう、だな」
家の中は驚くほど綺麗だった。空き巣が来ていなかったことにホッとしてはふたりとも固まった。
手紙と2人のスマホ。それだけで察することは十二分に出来た。
キヨはとある日にぽつりと呟いた。
「疲れた」
その言葉にはキヨの全てが詰まっていたと思う。あの縋るような目と輝いていた頃とは変わった目の下の隈。もう限界だと、そう告げていた。
ならばこうしよう。
本当に辛い時、
もう何もかもが嫌になった時、
もう、この世界に別れを告げたい時。
この合言葉を言うんだ。
「 ねぇ、海に逝こう? 」
︎ ︎︎︎
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!