しかし、ほぼ最強のオストラ、グレイトンはひるまず近づきます。老いたとはいえ、ずっと最強と謳われてきましたし、本人も自分の強さを知っているのでしょうか。
しかし、ナマケグマ、バルーラは警戒。大切な子どもを失ってはたまりません。グレイトンの存在に気づくや否やくるりとふりかえり、ううっと唸って睨みつけました。威嚇です。グレイトンをその場にとどめている間に子どもを木が生い茂る森へ逃がそうというのです。グレイトンは母、バルーラに狙いを変えたようです。子を守る母と手柄を取りたい老いた最強オストラ。
一騎打ちが始まるのはしばらく睨み合ってからのことだった。先手を打ったのはバルーラだった。自分より大きなベンガルトラのオスにやられたら怪我レベルではすまない。トラの腕はオスのヌーの首の骨を一回のパンチで折るぐらいだ。無論、グレイトンもバルーラに打って出た。二匹はまるでこんがらがった毛糸玉のようになって争った。最初はグレイトンが優勢だった。しかし、バルーラが死にものぐるいで繰り出した噛みつきとひっかきがグレイトンの頬と肩に傷をつけた。そこそこ深めの傷だった。
グレイトンは傷を追うと、あっさり引き下がった。そしてそそくさとその場を離れ、ヘレヴァラクに浸かりました。グレイトンは傷を負いました。王国を離れればなりません。グレイトンは、マーヤに別れの挨拶をしにいかず、ひっそりと寂しく去りました。
マーヤはしばらく、グレイトンを探し回っていました。しかし、匂いをたどると、匂いは王国の外まで続いていました。マーヤはずっと王国の境界線でピタリと止まっていた。でも、どれだけ時間が経とうとグレイトンが戻ることはなかった。
マリーツァとベシーの対立は徐々に深まり、マリーツァは、母、マーヤにも反抗するようになった。そしてついには自分の兄、メディラスを追放した。そしてついにはベシーを追放したのだった。
邪魔者の兄妹を片付けたことで少しばかり落ち着いたマリーツァ。しかし、早く新女王となりたかったマリーツァは、マーヤまでもを追い出そうとした。血のつながった母子。力も知識もはるかに母の方が多い。兄妹と戦ったときとは別物だ。緊迫した空気が漂いました。戦いが起こるかと思いきや、何も起こりませんでした。ただ、その場に風が吹いただけでした。
翌日、マーヤの姿はありませんでした。王国あちこちを探してもマーヤはいませんでした。ただいたのは鳥などの小動物とマーヤたちの獲物となる動物。そして、マリーツァだけでした。マリーツァは座ってそよ風を優雅に浴びていました。
マーヤは行方不明になりました。もう、マリーツァが新女王になったと言っても過言ではありません。
三ヶ月後、王国ギリギリの境界線の木の下で白骨化したベンガルトラの遺体がありました。マーヤです。マーヤは静かな空間でひそっと亡くなったのです。平均寿命を超えていました。マーヤは三回も子育てしてやっと王国を継がせることができたのです。
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