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「きんとき…ぁ…ちょっと…吐きそう…」
机の上には、かなりの数の空になった薬のシートが乱雑に置かれている。
ふたりで薬を飲んだ。
きんときは平気そうな顔をしているが、シャークんは呼吸が浅く顔色も悪い。
そんなシャークんを優しく抱き締める。
「大丈夫?でも吐いたら勿体無いから…我慢してね。我慢出来る?」
ここで吐いてしまったら勿体無い。
吐かないように、ゆっくり呼吸させる。
シャークんの体は酷く震えている。
「…吐いたら…ごめん…しばらくは…このままにさせて…」
呼吸しずらそうに、途切れ途切れに喋る。
冷や汗をかいている。
震える肩を抱き締め、目を瞑る。
目を閉じると、世界が変わる。
部屋にいたはずなのにそう感じない。
幾何学模様がまずお出迎えしてくる。
万華鏡のように動く模様たちを失っていく感覚と共に楽しむ。
もう元の感覚は消え去っている。
次に深く目を瞑ると、何故か学校に居た。
とても懐かしい校舎と親しい友人達。
少し甘酸っぱく、ほろ苦い青春。
細部まで再現された空間は、頁をめくるようにして次から次へと出てくる。
全て幸せで楽しかったあの頃の思い出。
そんな楽しい時間も短い。
重力の感覚が狂う。時には深く沈み、時にはふわふわと浮く。ジェットコースターに乗ることだって不思議じゃない。
喉まで上がってくる気持ち悪いもの。
それを必死に抑えると呼吸が苦しくなる。
暫くしてまた深く目を瞑る。
もう完全に肉体とは解離。精神の独立。
宇宙のような空間を彷徨う。
無数に輝く光に吸い込まれる。
そして、真理に辿り着く。
世界の全て。過去、未来。
そして何故産まれてきたのか。
全て理解する。
ハッとして瞼を開けると、そこに宇宙などなく。
隣に苦しむシャークんだけが居た。
まだ少し気持ち悪く、震えが残っている。
体も解離している。
しかし、あの高揚感と多幸感はない。
目の前に居るシャークんを抱き締めて沈んでいく。
「きんとき…」
そんなか細いシャークんの声を聞いて、何故か涙が溢れたきんとき。
久しぶりに口を開いて言葉を発する。
「…愛してる」