────”おとぎ話“。
その言葉を聞いて、何を想像する?
森の中にひっそりと建つレンガの家。
人気のない暗い洞窟。
それとも、一国の中心に建つ 大きなお城?
綺麗なお姫様や王子様、冒険好きな子供。
意地悪な叔母様や優しい王様。
それとも、人々から恐れ崇められる神様?
呪いや不思議な道具。
神秘的な魔法や魔術。
それとも、絆や愛の力?
悪戯好きな妖精、怖い魔物。
見たことのないヘンテコな動物。
それとも、力強く恐ろしいドラゴン?
物語も結末も、一つではないが一つしか選べない。 それは人生も同じ。
終わりの道は一つだ。
そして、終わりは始まりでもある。
揺らめく焔の中────新たなる物語が始まった。
暗闇から覚めて真っ先に視界に入ったのは、フィンチメガネをかけ、顎髭を長く伸ばした老人の顔。
湊鼠色のローブは所々黒ずんでいて、袖が少し焼けている。
息を切らしながらも足を止めることなく、老人は長い廊下の奥の部屋へ走りこみ、私の額に手を添え口を開いた。
「時が来れば、導きにより本は開かれるだろう。最後まで物語を綴れ。途切らせること無く。それが、使命であり代価だ。お前の辿る道が、救いと愛の”フェアリーテール”で幕を閉じると願う。新たな始まりへ向かうため、物語を終わらせよう。私は、必ず─────お前の元へかえる」
老人が手を離した瞬間、私は再び暗闇へ落ちた。