aknが病んじゃう話。
fwakです。
推しを病ませるの大好き。
____歌えなくなった。
というよりは、配信を付けれなくなった。
ある日のことだった。
いつも通り、…というか、今日はゲリラ配信をしようと思ってツイート無しで配信をつけようとした。
立ち作業のまま機材に触れ、パソコンの電源を入れ、配信の準備が整ったところで椅子に座ろうとした。
「…____ッ!!!」
激しい動悸が俺を襲う。
今まで感じたことないくらいの動悸だった。
頭の中に心拍音が響く。身体が熱い、気持ち悪い。目の前がグラグラする。
これは倒れる…そう思った俺は咄嗟にスマホを持って配信部屋から寝室まで行く。
寝室につき、ベッドに倒れ込んだ。
「ッは、…はぁ……ぁ?」
だが、そんな激しかった動悸も、ベッドに倒れ横になったらおさまった。
…ただの気の迷い?気のせいだったのかな。
そう思った俺は、再び配信部屋に戻った。
配信部屋に戻り、再度椅子に座ろうとした。
「___ッぁ゛、!!」
再び激しい動悸。
これは、ダメなやつだ。
すぐさま立ちあがった俺は、寝室に戻ろうとする。
ふらり、と身体が傾いたかと思ったら気づいた時には俺の身体はフローリングに叩きつけられていた。
ドシンッと大きな音が鳴った。
痛い。結構強く身体を打った。
でも、はやくこの部屋から出ないと…
うつ伏せになり、匍匐前進の形で扉へ向かう。
ズリズリと足を引きづりながら、硬い床にぶつけて肘が痛くならないよう一応気を遣う。
やっとの思いで部屋から出ると、少し気持ちが楽になった。
再び寝室に戻りベッドに寝転がる。
「……ぁ~…また、かぁ…」
この症状が起きるのは初めてじゃない。
何年か前にも、なったことがある。
配信が嫌になったわけじゃない。
ただ、気持ちが追いつかなくて、おいつかなくて。
どうしても、モニターの前に座るとどうしようもない不安に駆られて。
俺のリスナーがいい人達が多いのは知っている。
アンチが一握りしかいないのも知っている。
でも、それでも元々自己肯定感の低い自分はここに居ていいのかとたまに考えてしまう。
一度考えたら止まらない。
負の感情とはそういうものである。
「…はいしん、やすも……」
マネージャーに連絡を入れ、了承がすぐ届いたのでツイートを行う。
【 三枝明那🌶
突然ですが、しばらく配信休止します。
長くても1か月だから待っててください。
ねむねむにゃんこちゃんなのだ 】
「…あ、顔文字入れてないや…だる…」
もうツイートボタンを押してしまったのでどうしようもないが。
…しばらくは配信関係のことを考えないようにしよう。
エゴサもしない、マネとか仕事以外の連絡は…取らなくてもいっか。
「……しんどい、つらい、むり…このまま消えたい…
おれなんて、なんの価値もないのに…」
なんて思っていると、スマホの着信が鳴る。
メッセージではなく電話のようだ。
「だれ………ぇ、ふわ、ッ」
着信画面の名前を見ると、俺の親友で…好きな人である、不破湊からだった。
思いもしない人からの着信だったため、慌てたのが仇になったのか画面内の緑のボタンが押ささってしまった。
『__明那、今家?』
「ふわっち……い、え…だけど……」
『今から行くから。合鍵いつもの所だよね?』
「エッ!!?は、はい…ッまって、ふわっちくるの?まッ」
ポロンッ なんて音を立てて通話は切れてしまった。
…ふわっち、来るの?俺の所に?なんで?
絶対めんどくさいのわかってるじゃん。ふわっちにとって俺はただの親友じゃん。ただの男友達じゃん。
__前、こうなった時もふわっちは会いに来てくれた。
その当時は、何の告知も無く急に配信を休止した。
あの時はマネージャーさんですら連絡を取らなかったから尚更心配されてたんだと思う。
俺が配信を休止してから、というかSNSの投稿をしなくなった日から三日後にふわっちから連絡が来たのだ。
その時は大慌てで俺の家に来てたなぁ…
なんて昔のことを考えていると、遠くの方ドアノブの開かれる音がした。
バタバタと足音を立てて、寝室の扉が開けられる。
「___ッあきな!!!」
ふわっちダ。
仕事帰りだろうか。
元気な姿を見れて嬉しい。なんでふわっちここに来たんだろう。
「ふわ、ッ」
ベッドから身体を起こして、ふわっちの方を見ると
それはそれは大事なものを抱えるかのようにしてふわっちに抱きしめられる。
それも、凄く優しく。
「あきにゃ~、もうだいじょうぶだぞぉ…ゆっくり休もうな」
「……うん、ッうん……」
「あきにゃが話してもいいなら話してほしいけど……」
ふわっちは、俺のことを抱きしめながら頭を撫でてくれる。
綺麗な、ふわっちの手。
頭頂部から後頭部にかけてゆっくり、何度も撫でられる。
鼻の奥はツーンとなった。
目の前が歪みながらも、俺はふわっちに先ほどあった出来事を話したのだった。
「あきなが休むなら、俺も休むわ!!」
「…ッえ!!?なんで!ふわっちは関係な、」
「___好きな人が俺の知らない所で苦しむのは、泣くのは嫌だから。」
肩を並べて座っている。
そう言った時、顔だけこちらを向けたふわっちはとても真剣な表情だった。
力強い瞳で見つめられ、一瞬息を忘れてしまう。
「……なに、それ…」
「………明那、俺は本気やぞ。
だから、1ヶ月ゆっくり休んで、復帰配信一緒にやろうぜ」
ふわっ…と優しく笑った。
その顔があまりにも綺麗できれいで、俺なんかよりふわっちの方が消えちゃいそうだった。
…別に、ふわっちの言葉を信じていないわけじゃない。
でも、No.1ホストだよ?超人気ライバーだよ?正直…というか、そんな凄い人に好かれてるのが信じられない。
ふわっちに、好意を持たれている。
あの、ふわっちに。
「……おれも、」
「…明那、?」
「おれも、好きだよ。ふわっち。」
彼の瞳に、俺はどう映っていただろうか。
言ったこっちがなんだか恥ずかしくなってしまい、ふわっちに抱き着いた。
抱き着く寸前、ふと見た彼の顔は今までに見たことがないくらい顔が赤く染まっていた。
それから1ヶ月が経った。
休止期間中、ふわっちと何度かデートをしたり、飯屋海岸に行ったり、旅行に行ったり…
配信のことが頭に入らないくらい濃厚な時間を過ごした。
楽しかった思い出ばかりで、沢山笑って…あんなに酷かったメンタルも復活してきた。
そんな中、とうとう配信復帰日を迎えた。
「明那、こっちは大丈夫よ」
「おっけー、俺も大丈夫!つけるね」
【 復帰配信 ~With 不破湊~ 】
そんな名目でつけた配信は、一気にリスナーが集まっていく。
目に入るのは温かいコメントばかりだった。
俺は、ちゃんとここにいれている。【三枝明那】として、この椅子に座れている。
「…お久しぶりです!!!!!復帰配信です。はい、なんと隣に不破湊も居ます」
「不破湊で~~~す!あきにゃのリスナーさんお邪魔してます~ッあ、俺のリスナーも居る?お久~」
俺の隣に椅子を持ち込んで同じ高さくらいになるように座っているふわっち。
俺の左手はふわっちの右手と繋がれている。
…一応利き手なんだけどなぁ
「まぁいろいろあったよねこの1ヶ月」
「んなぁ~、いろいろあったなぁ」
「『なにがあったか聞いてもいい?』…うわ優し!」
「言えるといったら…俺とあきにゃずっと一緒に居たことくらいやな?」
「確かに。てかそれ以外言えないわ」
「にゃはは、体調不良とかじゃないんでね、そこは安心していただいて。」
リスナーのコメントを拾いながら配信が進んでいく。
気づけば2時間ちかく経とうとしていた。雑談だけで。
やっぱりふわっちの隣は呼吸がしやすい。安心できる。こんなに息がしやすいだなんて。
でも、この配信が終わったらふわっち帰っちゃうよな…今までしてきた配信の中でいつも以上に安心してるのに…
左手に伝わるふわっちの温もりが嬉しい。
心が温まる。これも安心材料なのかな。
でもそっか、この配信が終わったらふわっちは…
俺は、また一人で配信をしないといけなくて…。
やだ
やだ、やだやだやだ。
ふわっちが居ないとか、やだ。ふわっちの居ない配信とかできない。
俺にはできない。もう、ふわっちが居ない時の配信をどうやっていたかなんて覚えてもいない。
やだよふわっち、俺どうしたらいいの。
「ふふ……明那?どしたの」
「…ぁ、ッな、んもないよ!?空中に浮いてた埃追っかけてた」
「なにそれ」
また、優しく笑うふわっち。
その度に胸が締め付けられる。
このふわっちは、俺しか知らないふわっちなのに
それでも、俺は配信中のふわっちはあまりしらない。
見れるときは見れるが、見れない時の方が多いから。
ホストをしている時のふわっちも、知らない。
知る勇気がないから。なかったから。
俺如きが、ふわっちのいろんなことを知っていいのか。
俺よりもっと良い人がふわっちの良き理解者になって、一緒にいてあげたらいいのにって。
そう思う。
けど、そう思うけど俺の隣にはふわっちが居てほしい。
ねぇ、ふわっち。
ふわっちは、おれいがいの人がいなくても、生きていけるよね…?
綺麗な横顔を目のみで見つめて、配信に集中をした。
俺だけをあいして、おれだけをみて、ふわっち。
この1ヶ月
明那が配信のことを思い出さないようにずっと一緒にいた。
仕事?勿論休んだよ。俺は、ね。
なんのための【バーチャルホスト】だと思ってるの?
その場凌ぎくらいなら、偽りの俺を置いてしまえばいいでしょ?
金づるなんかより明那の方が大事なんだから。
この1ヶ月、幸せしか感じられないようにした。
俺の隣がどれだけ安心するのかも痛感させた。
いっぱい、いっぱい愛した。
感じたこともない快感にワケわかんなくなってる明那かわいかったなぁ…
大きな瞳をまん丸とさせて、言葉にもならない声で喘いでた。
時折不規則に跳ねる身体はマジで、最高だった。
想像以上の破壊力だった。
俺の隣以外は悪だって、居心地が悪いんだって、教え込ませた。
明那に気づかれないように。
明那が俺以外要らないって思ってくれるように。
だから、明那が配信を休止するって言った時はチャンスだと思った。
明那が俺のことを好きなのはわかってたから、あとは俺の傍に置くだけ。
あぁ~~~、俺の恋人ってなんでこんなに単純なんだろう。
初対面の人とか、あんまり関わりない人には相手に気づかれない程度に警戒心をむき出しにしているのに
心を許している人には甘いのだ。
だから、こんな俺に掴まっちゃうんだよ、明那。
可哀想な明那。
こんな俺に掴まって。
でも、安心してね。
明那には俺が必要だし、俺にも明那が必要。
明那は俺が居ないと生きていけないし、俺にも明那が居ないと生きていけない。
俺たちは出会うべくして出会ったんだ。
ずうっといっしょにいようね。明那。
配信がきちんと切れたことを確認した明那。
俺の方を向いて、感謝の気持ちを伝えてくれた。
そんな明那の頬を両手で挟んで、優しくキスをする。
それだけで顔を赤く染める明那。本当に可愛い。初心だな、可愛い。明那がかわいい。
「ん、っ…ふ、ふわっち…?」
「…なぁ、明那。」
「俺と、一緒に暮らそう。」
そう告げると、嬉しそうに明那は微笑んだ。
___君の行動も、言動も、全部知ってるよ。ずっと見てるからね。
かわいい、俺の猫ちゃん。
絶対に消えさせないよ。
俺だけが、明那の本当の価値を知っていればいいんだから。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!