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お久しぶりです!!OREOさんのこと大好きでずっと待ってました!! 合格おめでとうございます!! 今回の話も最高でした😭特にlrfwがヤバすぎるぐらい好きです…🤦🏻♀️ これからもOREOさんの小説が読めると思うとワクワクがとまりません!
りんさん!本当に待ってて下さりありがとうございます!!嬉しい限りで!前に書きかけのものがいくつかあるので、少し休んだらまた書こうと思います!
お久しぶりです〜😭✨ 合格おめでとうございます🎉 OREOさんのこと、ずっと待ってましたー!! ふわっちが…、久々のOREOさんのふわっちが、効きすぎて…。 受験等諸々、本当にお疲れさまでした!!! しばらくはゆっくりしてください…🙏
だいたい10000字
hrfw モーニングコールは貴方から
lrfw 路地裏ハプニング
fw+hsrb 井の中の蛸大海を知らず
hrfw モーニングコールは貴方から
hr.side
「不破さーん?起きてください!ご飯冷めちゃいますよ?」
「…んぅ」
最近の不破さんはちょっとだけ朝が弱い。
僕より起きるのが遅くなったってだけで、収録に間に合わない、とかでは無いけれど。
付き合いたての頃の不破さんは、僕よりもずっと早くに起きてて、髪も整えてあったし朝ごはんも出来てて、
「はるくん朝早くないんやね、かわええ」
なんて僕の寝癖をからかいながら、陽の光に当てられて微笑む彼が眩しかった。
本当にカッコよくて、夢を見てるのかと錯覚したし、だけどそんな不破さんは大人で、僕よりずっと素敵な人で、ちょっとだけほんとに少しだけ窮屈だった。
「おはよぉございます、不破さん」
既に用意されていた朝食がまた美味しくて、
もちさんも言ってたけど、不破さんのこの感じで料理できるのっていいな。
なんて感心して、
「どぉ?…おいしぃ?」
やっぱりまだ眠たいのか、怪しい滑舌で問う不破さんがいじらしかった。
だから別に今が嫌なんてことは全くなくて、
「ほら、起きるよ?不破さん。」
「…ん、ん〜、…はるぅ?」
今みたいにもぞもぞと眠気に抗う不破さんは、前までは見られなかったし。
ちょっとは気を許してくれてるのかな、なんて考えると頬が緩んじゃうくらい嬉しくて、
「うん、不破さんのはるですよ。」
「ご飯出来たんで一緒に食べませんか?」
今の不破さんが素なんだとしたら、最初は僕のことを意識してカッコつけてたと思うと凄く愛おしい。
「…いま、なんじ?」
ちょっと目つきの悪いとことか、初めの方は見れなかった寝癖だとか、不破さんの全部が可愛くて、
「…にやにやすんな、 ん…なに?なんかあったの、…はるくん?」
ぽすっ、と痛くない拳を飛ばして、その後ちょっと僕を心配しちゃう優しさの捨てきれない不破さん。
猫さんみたいだな、なんて思えばますます愛おしさが込み上げてきて、本当なら叫び出したいぐらい。
返事を返さない僕に不破さんが顔をかたむけて覗きのこんでくる。
「いたい?ごめん、…つよかったかも。」
…んもおぉ!何でそんなに可愛いことばっかしちゃうんですか?
全くもって痛くは無かったけど、そんなに分かりやすく落ち込まれるとついいじめたくなっちゃう。
寝起き特有の気怠げな感じがえっちで、
僕の心は弄ばれているといっても過言では無い。
でも今は、眠たい頭でぽやぽやしてる不破さんが可愛いので、いじめるのはまた後日にしておこう。
「痛くないですよ、ちょっと不破さんが可愛くて胸がいっぱいでした。」
平然を装ったけど、嘘はつかない。
隠し事はなるべくしないこと!
不破さんと付き合い始めて決めた約束で、何だかんだ守ってしまうものである。
「…そーなん」
「そーですよ、甲斐田の心は不破さんの言動ひとつに振り回されてるんですぅ!」
「たいへんやね」
「他人事!不破さんのせいです、よって…不破さん照れてます?」
「…てれとらん」
「いや、でもすごい顔赤いですよ?」
「あかくない」
じわじわと染まっていく不破さんが分かりやすくて、代謝がいいと赤くなりやすいのかな、とか
照れちゃったり動いたりするとすぐ赤くなっちゃうのが赤ちゃん見たいで可愛い。
それでも本人は必死に否定するから、そんな負けず嫌いな所も愛おしい。
寝起きの不破さんはいつもより語気が強くて、いつもより分かりやすくて好き。
いつもの不破さんも好きだけど、不破さんが泊まりに来てくれた時にしか見れないからこそ、このレアな感じがなんとも。
「可愛い」
「ん、しっとる」
いつもより甘い滑舌は、情事のことを思い出させた。
カッコつけてなくて、飾ってない不破さんはどこか幼くて、
無意識か分かんないけど、僕の手にぺたぺた触れてくる。
今これを指摘したら、拗ねちゃうから言わないけどね。
正直、僕を亡き者にしたいのかと疑ってしまうくらいにはあざとい。
「ごめん、最近はるくんに甘えとるかも」
遠慮がちに、でもしっかりと僕を見つめる不破さんの瞳。
口元に手をやり、少しごもって尻すぼみになる声。
ちょっと覚醒しつつある不破さんは、寝癖がついているにも関わらずカッコよかった。
僕なら速攻で笑いものにされるのに。
わざわざ謝ることではないと思うが、先輩としての意地があるのだろうか。
今は年下の特権で甘えてくれてもいいのにな。
意外と真面目で、大人な不破さんだから、引っかかるところがあるのかも。
周りが思うよりガサツで不器用な僕は、そんな不破さんに助けられていることを当の本人だけが知らない。
「謝らないでくださいよ、むしろ嬉しいんでもっと甘えてください。」
「嫌やないの?」
「なんで?凄い可愛いのに、それに僕も甘えちゃってますしね。」
「かわいいゆうな」
「んふふ、顔真っ赤。」
「うるさい、…最悪。はるのバカ。」
ろふまおでも配信でも見れない、アニキでもホストでもない不破さんは、僕だけの特権。
リスナーのみんなにも、ライバーにだって見せたくない不破さんの一面。
小さな独占欲が満たされて、幸せを噛み締める。
「今日もかわいいね、不破さん。」
僕の作ったご飯はもう冷めてるだろうけど、まだ不破さんの温もりを感じていたかった。
「ねぇ、いちゃいちゃしません?収録までまだ時間ありますし、」
「んや、腹減った。先、食わん?」
少し考える素振りを見せてから発された言葉は、すぐには飲み込めなかった。
「…断るの!?、え?…不破さんっ?!今の流れでそれは無いってぇぇ”!」
lrfw(未満) 路地裏ハプニング
lr.side
「あれ、湊じゃん。」
仕事帰りに通った歌舞伎町で、路地裏に吸い込まれる人影を見た。
銀髪に散りばめられた紫と強いピンクの差し色は見覚えのありすぎる配色。
「…みなと、か。湊よな、?やっぱり。」
「よく考えんでもあの色似合うの湊だけか、流石に。」
ホストにキャバ嬢に顔を武器とする人間の住まうこの街ではちょっとくらい人違いの可能性も考えた。
それでも、あんだけ奇抜な色は歌舞伎町どころかエデンでもそう見かけない。
分かり易すぎてもはや怖いまであるもんな。
かなり急いだように見えた人影が、事件の匂いを感じさせた。
さすがの俺も見逃せない。
流石の嗅覚、さすが俺。
「ここで駆けつけたら俺ヒーローか。」
心配と八割くらいの好奇心で後をつけることにした。
…
「やばいやばい、まじで人多い。」
すぐそこなのに、中々進めないのがイライラする。
キャバの勧誘に何度も引っかかり、挙句にホストからも声をかけられる始末。
1人歩く歌舞伎町は、傍から見れば大分浮いているのか、取り敢えずこの街としては良いカモなんだろう。
「これ、湊が独りじゃなかったらまじ気まずいけど。うわ、やらかしたか?俺、」
普段なら、不審者として通報されかねない独り言も賑やかな街に吸い込まれていく。
「あ”ー、到着。…マジで疲れた、やべぇわ歌舞伎町。」
なんでこんなに意地になっているのかも分からず、取り敢えず目的の路地に入る。
「…て…!…っや!」
「み…ん……よって!………ね」
外からは全く聞こえなかったが、誰が叫ぶような声が聞こえた。
「やっべぇ、まじの事件か?」
思ったよりも長い路地はしっかり犯罪の香りがする。
俺の管轄では無いけど、少しマークしておく必要があるか、
「…やめろって、まじでっ。ほんまに無理やから!」
「湊くんは僕の恋人でしょ?冷たいこと言わないでよ〜」
「だから違うって…言いよるやんか、話聞けって!」
「恥ずかしがらないでいいよ?、暴れると湊くんが痛いだけだからね。」
「んぁっ…、ちょ、変なとこ触んなやっ。」
「湊くん、可愛いね。かわいいよ湊くん。」
「、っ ほんまやめて!…っふ、やだっ!」
「湊くん、鍛えてる割に力ないよね!抑えやすくて助かるよ〜」
「んむっ…っあ、ふ 」
「…は?、え 」
普通にやばい、どんな?
見慣れた顔が、ってか湊が。居るにはいた。
ただ状況が状況で、
てか襲われてね? キスしてない?
いやまじで有り得ん。
湊が、泣いてるように見えたから。
だから俺も、助けてやりたいって、そう思った。
「おっさんストップ、それ合意じゃないよな?」
務めて優しく制止の言葉をかけて、
それでも、綺麗な湊が汚される感覚に無性に腹が立った。
「チッ…なんだよ、誰だよお前!邪魔すんなよ!良いとこだったのに!」
やっと湊から離れた男は中年で、太ってはいるが上背がある、そんなやつだった。
真っ赤になってこっちを見るそいつの顔面を蹴り飛ばしてやりたくなったが、
「…ろーれん?、何でここおるん。」
湊の一言で、頭の熱が冷めていくような、そんな気がした。
「今それ聞くま?」
「…まぁ、ちょっと俺に助けられてよ。」
頭に血が上っているのはお互い様だが、湊が正気な分、幾分か俺は冷静だった。
「僕は湊くんの恋人なんだ!お前にどうこう言われる筋合いなんてない!」
あんだけ否定されて尚そう思えるのは、多分薬やってるタイプなんだと思う。
そうだよな、頭回んなくなるよな?
自分の思い通りになるって、本気で思っちゃうんだもんな。
「いや、あるよ。あんた、薬やってるでしょ?俺、警察だからさ、悪いやつは取り締まるのが仕事なんだよね。」
日本に居る時の為に偽造として作った警察手帳。
役に立つ日が来るとは思わなかったが、途端に、おっさんの顔が青ざめていくのがわかる。
「違う、合意だ!湊くんと僕は恋人で、そうだ、それに僕は薬なんかやってない!」
「…や、辞めてくれ、!金なら、金はいくらでもだす、…頼む!」
何に怯えるのかも分からないが、サツに何らかの記憶があるのだろう。
けれど、途端にしどろもどろになる此奴が、俺は不愉快で堪らなかった。
「…殺してやりてぇ、日本の法律とかまじ不便すぎだろ。」
自身の呟きに、口元の煙草が落ちていたことに気づいた。
…ガンッ
「ッがぁっ…」
突然、薄気味悪い笑みを浮かべて媚びを売っていたそいつが、白目を向いて倒れた。
目の前で泡を吹いて、…は?
え、俺まさかの言霊使えたか、まじかまじか。
…うん、まぁ死んでないしセーフか。
本当は誰か分かっていた。
そうなるだろうと、知っていた。
「…湊」
…
「みなと、大丈夫?」
「…..」
呼びかけても反応のない湊を眺めて、暫くして我に返ったのか、
「っは…ぁ、ローレン。ごめん、警察呼んだから、…もう大丈夫。」
俺も警察だけどね、とは言えなかった。
引き攣ったような、明らかに無理した笑みを、湊が浮かべていたから。
大丈夫ならその顔やめろよ。
「…ごめん、っはは、これ過剰防衛になるんかな?ごめん、ろれ、迷惑かけてごめんな。」
謝らなくいいよって言いたかった。
湊は悪くないって。
「大丈夫、こいつ死んでないし。」
結局、言えたのはこの一言だけだった。
「ごめん、巻き込んだ。」
だからさ、違うって。
巻き込んだ、なんて悲しいこと言わなくていいのに。
違うだろ。湊は間違ってない。ってそう言ってやりたかった。
大丈夫じゃないって言ってくれれば、 助けられるのに。
「男に襲われるって、…やばいよな。っは、…はず。」
もう大丈夫って言ってあげたかった。
恥ずかしいことなんかじゃないって。
俺がいるからもう意地はらなくたっていいって、
「巻き込んでない。」
不器用な俺は、全部飲み込んで一言出すのが精一杯で。
「…っ、え?」
湊に伝えたいことが、伝わらないもどかしさに焦った。
「だから!巻き込んでないって、俺が追っかけてきちゃっただけ!」
伝えないと、
「湊がかっけー男なのも、良い奴なのも知ってるけど、俺たち友達だから!」
「ひとりで我慢するんじゃなくてさ、」
あんなやつ受け入れなくていいじゃん。
「俺らにもっと迷惑かけて頼って、喧嘩するくらいが丁度良くない?」
迷惑だなんて寂しいこと言うなよ。
「俺、後輩だし頼りないかも知んないけどさ?やっぱり心配なんだよ。」
頭の中の5割も伝えられてないけど、次早に詰め込んだ言葉は届いているだろうか。
恥ずかしくなって、途中から顔が下がっていたのに気づいた。
「…そっか、ありがとぉ」
顔を上げた時、そう言って崩れる湊を既のところで捕まえる。
「っあぶ…」
「…ふ、ごめん、安心した。」
眉を下げて笑う彼に、肩の力が抜ける。
「もぉー、マジでビビるから!さっきだって湊泣いててまじで心臓どっか行ったし。」
「うん、ごめんな?ローレン。ほんまありがと、まじで怖かった。」
安心したような顔で笑う湊は泣いていて、震える手で涙を拭う姿から、目が離せなかった。
「ごめん、今泣き虫かも。ろれ、まじでありがと。本当に。」
噛み締めるような湊の言葉に少しだけ貰いそうになった。
「みな、っん…」
「んむっ…っふ、んんっ…ッはぁ」
慰めた方が良いかな、とか思った俺の言葉を遮って、
「んふふ、しょーどくぅ!」
なんて甘い声とともに舌を出す湊に完全にしてやられた。
「っ、おま、」
「まじか、これで俺ら付き合ってないのまじか。」
「んー…でも嫌やない、やろ?」
確かに嫌では無かったのが事実だし、 こんなやつだから男も落としちゃうんだろうな。
「助けてくれて、ありがと。ちょっとかっこよかったよ。」
小さく紡がれた言葉は、真っ直ぐと俺に刺さって、
「ちょっと素直なの珍しーね。」
なんてからかってみたけど、
「ローレン顔赤いやん、嬉しかった?」
そう言われてしまえば、やっぱり湊には敵わない。
俺は湊より、ちょこっとだけ大人だから、湊の耳も赤いよ。なんて指摘はしないでやる。
この後、付き合っちゃう?とかまたとんでもない爆弾を落とす湊に満更でもない俺がいたのは内緒。
fw+hsrb 井の中の蛸大海を知らず
fw.side
深夜2時、我らが歌舞伎町でデモが起こった。
「んぇっ、何、…?」
ホスト業も比較的はやく終わって、眠たいのにエナドリを最早癖のようにかっさらって、
しがないホストがコンビニ袋をぶら下げていただけに過ぎない。
どかん、とでかい音がして、振り向いたらビルが傾いていた。
ぱらぱらと落ちる砂煙に混じる鉄の塊が、なんだか綺麗に見えて、
いつになく賑やかな街だった。
ホストにキャバクラ、薬に宗教。
ハマるものは人それぞれだったが、皆何かに縋って生きていた。
今は皆、そんなもの投げ捨てて逃げ惑う、混沌に満ちた悲鳴の嵐。
何時もは俺に猫を撫でたような声で腕を回す姫も、俺には目もくれないで横切った。
そんな、どこの組織かも、誰が主犯なのかも分からない、ただひたすらに大規模な事件だった。
多分ニュースに取り上げられるだろうし、新聞にだって載るだろう。
俺も片隅ぐらいには載るかもしれない。
hsrb.side
「…なんで湊さんが居るんですか?」
『ほしるべ…くん』
「あ、はい。星導です。」
え、いや…なんで?
多分、湊さんが一番状況を呑み込めていないだろうけど、
一応、お決まりの台詞を吐いてみる。
何故お前がここに。っての、一度は言ってみたくないですか?…知らないけど。
それよりも、
なんでこんな事件現場真っ只中に居るのかは分からないけれど。
こんなに街は荒れ果ててるのに、変に凪んだ彼は一言で言うなら、異質。
特に思い詰めたような顔をしている訳でも、パニックに陥っている訳でもない。
ただひたすらな無だった。
なんだか無性に寒気がして、これ、関わらない方が良かったかも、とかね。
俺は全部忘れて、何1つ持っていないから、何となく彼の真髄に近いのかもしれない。
「…取り敢えず、俺に全部任せてください。」
「俺はヒーローですから、守りきってみせますよ。多分。」
『んぇ、なんか一気に不安感じるんやけど…まぁ、星導くんなら安心かぁ。』
「えぇー…やりづらっ。」
流石ヒーローとでも言うような眩しい笑顔が、夜の街を生きている人間だとは思えなかった。
こんなに、眩しいと思える程綺麗な笑みなのに、その奥には何も無いように見えて少しだけ怖かった。
ほんとに彼自身が笑っている筈なのに、触れてみると唯の仮面だった、みたいな 。
華やかな人だな、と思うのは、煌びやかな衣装でも、端正な顔立ちによるものでも無いと思う。
きっと彼の真髄が、人を惹きつける何かを纏っているのだ。
現に、俺のオトモが引っ付いて離れない。
それにこんなにきらきらしてる人、俺には到底真似できない。
いいな、俺も、この人みたいに成れたらいいのに。
ちょっと…だけ、羨ましい。
…多分だけど。
湊さんは面倒事に巻き込まれやすいタイプだ。
だって、こんなに無防備なら、ぱくっと食べれちゃいそうだし。
ほら、こんな風にね。
バチッ
「ぁ”、え?」
『っぇ?!…何事?』
やばぁ、
「い”っ~“…ぅ”、… 」
あー、ぐるぐるする。
これ、俺とはちょっとだけ相性が悪かったのかも。
「んっ”…っは、ぁ”は…は、」
なんだ。
そっか、そうだよね。やっぱり、1人だと危ないなんて、俺じゃなくても分かるか。
宇宙をも弾く神の加護。
これだけなら俺でも壊せちゃうけど、…
そっか。
これなら、心配ご無用って訳ですね。
「あーあ、欠けちゃった。」
夜中に起こったデモ活動。
今日非番なんですけど。
配信枠だって立てちゃったのに、遅刻したらどうしてくれるんだ。
「はぁ、こんな夜更けにバナナかよ!って言いたくなりません?小柳くんが。」
「俺かよ、意味わかんねぇし。…てかお前、疲れてんなら任務誰かに変わってこいよ。」
「ひでー顔。」
「えぇ、…んー、疲れてはない、けど。」
…びっくりした。
小柳くんって変なところで鋭いよね。
いや、でもそんなに深刻な訳でもないし、
別にいいや。
「けど?」
「いや、良いよ。…なんでもない。」
「…そーかよ、別にいいけどさ。」
「小柳くんこそ、現場まで向かいます?俺、主犯の位置は分かってますよ。」
「おい、お前偉すぎ。」
「でしょ?褒めても何も出ませんけど。」
「ふーん?」
「なら俺が向かうわ。 あっちの避難誘導は頼んだ。」
「え、良いんですか?なんか今日優しくて怖。」
「は?なんか言ってね?」
「あはっ、じゃあ頼みますね。呉々も怪我はしないでくださいよ?」
「報告書の量が5割増しになるので、」
「わーってるって。」
「位置はデバイスに送ったんで、何かあったら教えて下さい。」
fw.side
凄い音がして、振り返ると星導くんの顔が割れてた。
この亀裂って結構深いんだな、とか。
「……」
『…』
『…あのさ、…その、大丈夫なん?』
「…え、何がですか?」
『何って、顔の、…ヒビ?』
『さっきもでかい音したし、痛くないん?』
目元を覆い隠すような亀裂を、画面越し以外で見たのは初めてだった。
なんでもない事のようにそのヒビをなぞる姿が妙に絵になっていて。
「…ごめんなさい、不気味ですよね。…それと、さっきの音は俺のせいなので、気にしないでください。…痛くもないです。」
彼が、眉を下げて笑う姿ことが癖になっているように見えた。
下手な笑顔だと思う。
でもそれが、助けを呼べない彼なりのSOSになれたのが救いだと、そう思った。
彼が自虐のように重ねる言葉には、これまでの活動にあたっての風評だと窺える。
『そっか、痛いのは顔やないね。』
「、…え?」
これは最近、知ったことだけど。
ヒーローは、あんまり儲けられんらしい。
一番身体を張って一般市民を守るヒーローも所詮はボランティアの様なものなんやって。
俺は昔、テレビで見たヒーローに憧れたことがあった。
大きな背中が眩しくて、俺もそんな風になりたかった。
でも、大人になれば単純で、稼ぎは必要だし、
…何より、命を懸けてまで知らない誰かの為に動けなかった。
そんな底なしのお人好しにはなれんから、せめて、俺が好きな皆に優しい人でありたいと思った。
なにも、 俺が間違っとるとは思わんし、お人好しの彼らが可笑しい訳でも無いけど、
少しだけ彼らが羨ましかった。
俺は俺が好きだから、ちゃんと自分を守る方法も知ってるけど、
それを知らない彼に少しだけ、コツ を教えてあげてもいいかもしれない。
だって、本当に助けが必要な時、助けを求めるのがヒーローであってはいけないなんてこと、ないんやから。
あっちで戦っとる子も、彼なりに、星導くんを気にかけてたんとちゃうかな。
『星導くん、ここ。痛いやろ?』
助けたい皆に石投げられて、それでも笑ってないと、ってそんなの苦しいよな。
「え、…なんで、 」
『女の子、庇っとったやろ?足、引きずっとったし。』
俺は星導くんのこと、あんま知らんけど、それでも、ヒーローを見てきたから。
『俺、知っとるよ。みんな、笑顔が良いよな。』
『皆が笑って、笑顔をくれるん。そしたら俺も嬉しいから。』
『ヒーローの子達は優しいから、みんな助けんと、って思うんやろうけどさ。』
『全部抱えてたらきっと苦しいよ。』
「っでも、」
『さっきのビル、傾いとった。あれ、星導くんやろ?』
「ぁ、う…」
『倒れんかったから、下におった人、生きとるよ。』
『俺の店も潰れんかった。』
「でも、俺、が…テロを起こしたんじゃないかっ…て、言われ、て。」
「頑張っても、あんな顔っ、…されるくらいなら…俺はヒーローなんてっ、。」
『…ちゃんと、見とるよ。やからさ、今くらいは弱くなったって、…いいんやない?』
『皆は無理やけどさ、頑張っとるとこ、ちゃんと見とるから。』
『見てや、あそこにおる子。さっきの子やで。星導くんのおかげで、今も生きとる。』
『諦めんとってよ、俺の憧れたヒーロー。』
皆が笑ってくれることが好き。
だからみんなを好きになりたいけど、多分俺には無理だから、
俺の事を好きでいてくれる人に優しい人でありたい。
「…は、ぃ…”、」
ごめんな。これはただのお節介かもしれん。
俺、泣かんといてって、人の話を聞くのがすきだった。
形は違えど、俺も誰かのヒーローになりたかったから。
今も尚、彼の触手は俺の周りを覆っていて、ヒーローである彼が涙を流すことはなかったけど。
泣いてもいいんだよ、なんて俺が言えた口では無いから、
宇宙と同じ年月を生きる彼が、人として傷つくことの出来る救いを奪わないであげて欲しい。
傷口からじわじわと染まる赤を見て、彼もまた、人なんだと実感する。
『また、助けてよ。ヒーロー。』
だって、頑張っとる人が報われんなんて、そんなの酷いやんか。
not本編
お久しぶりでございます!
受験も終わり、無事、合格致しました。
まだ私の小説を見に来てくださる方が居ると幸いです。
ふわっちの短編と言いつつ、最後の話でるべメインみたいになって申し訳ないです。
久々だし、仕方ないやつだな、と思って生暖かい目で見て下さい。
リクエストもお待ちしてます!