テラーノベル
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付き合って2年、大学生活にも慣れてたまに忙しい先生と待ち合わせてデートする。
勉強にサークルにアルバイトと忙しいけど先生の存在は今も、いや前よりずっと大きくなっていてなくてはならない存在になっていた。
「ごめん、お待たせっ」
背が高くて金髪が似合う素敵な人。
俺のものだってみんなに言いふらしたくなるけど誰かと聞かれた時に言っていいのかとためらってしまった。
卒業したとはいえ先生は今も教師でどこかで良くない噂になって仕事に迷惑なんじゃ?とちらりと見ると先生はさっと元教師だと俺の代わりに答えてくれた。
少しだけそれがきゅっと胸に来て友達と離れたあと久しぶりに会った先生に甘えるようにしてしまった。
もっともっと早く大人になりたいのに、先生の前だとつい甘えてしまうからいけないと思う。
カッコいいと思ってほしい、いつだってドキドキしてほしい。
けどたまに天然でやってるのか先生の発言にドキドキしっぱなしで、その夜も久しぶりに泊まれることになった俺は大人ぶって理解あるフリで理性を保っていたのに、先生からしたい、なんて言われたら一瞬でその理性は崩れ去った。
久しぶりに触れる柔らかい肌、細くて綺麗な髪も俺と一緒のボディソープの匂いも全部が俺を夢中にさせる。
「好き、大好き」
何度伝えても足りないくらいのこの気持ちをなんて表したらいいんだろう。
優しくて綺麗で可愛くて···今でも昔元貴が言った言葉がチラつく時がある。
『女子も結構ほんとに好きとか思ってる子多いみたいで人気あるし、先生からも人気ありそうだし』
卒業したあとのことはわからないけど今も変わりないんじゃないかなと思っている。
久しぶりに抱き合うとやっぱり夢中になるくらい先生は魅力的で堪らなかった。いつもすぐに俺は気持ちよくなってしまって先生のことちゃんと満足させてあげてるか不安になる。
けど先生の反応も言葉もいつだって本当のようでそれを確認するたびに好きだーって叫びたくなるくらい幸せだった。先生にもそれぎ伝わってると思っていた。
それからも忙しい日々が続いて、けど毎日ちゃんとメッセージをやり取りしたりしていた。
それなのに、ある夜から既読にならなくて。寝ちゃったのかなっておもったけど次の日も1日中返事はないし、電話にも出てくれない。
けどようやく次の日既読になって何かあったわけじゃないんだとホッとしたけど夕方まで返事はなくてなんで突然こうなったのかわからない俺は焦って家に行く。
何度かインターホンを鳴らしても出ない。こんな時に使うことになるなんて、と合鍵で部屋に入ったけど夕方だしまだ帰っていないだけだった。
仕事中かなと鍵を締めて高校に向かう。
先生に会いたい。
俺なにかした?
なんで返事くれないの?
苛立ちを押さえて門のところで待っていると部活を終えた生徒たちが次々と出てくる。
「気をつけて帰るんだよ」
「りょうちゃん先生送ってって〜一緒に帰ろうよ」
「先生ももう帰れる?」
「まだ仕事あるからね、ほら早く帰りなさい」
「はーいっ」
「またね先生〜!」
生徒が出てきたと同時に外から声をかける。
「先生!」
「わ、若井くん?!なんで···」
なんで、じゃない。
とりあえず元気そうで安心したけど。
「···なんで返事くれないの?俺、なんかした?」
「···ごめん、ここじゃあれだから、家で待っててもらってもいい?仕事ちょっと片付けたら帰るから」
「わかった。待ってるから」
目を合わさない先生にやっぱり何かあったんだって不安になりながら来た道を戻る。
先生がいない部屋はなんだか落ち着かなくてソワソワしてしまう。
ガチャリ、と鍵が開く音がして先生が帰ってきた。
「···ごめん、遅くなって」
「別に、俺が勝手に来ただけだし。それよりなんで返事くれないの?」
「···それは···」
「俺なにかした?それかやましいことでもあるの?」
つい責めるようなトーンで先生に詰め寄る。不安が押し寄せて俺を苛立たせていた。
「・・・やましいのはそっちじゃないの?」
「は?どういうこと?」
先生は言ったことを後悔しているのかなんでもない、と首を振る。
俺にやましいことなんてないんだけど。先生しか好きじゃないし、他の人なんて考えたこともない。
「なんでもない」
「なんでもなくないでしょ?はっきり言ってよ!何考えてるかわからないから」
「も・・・もうやだ、いやだ」
先生の目に涙が浮かんで、それをゴシゴシと擦り顔を隠す。
嫌、と言われて心臓がきゅっとなる。
「こんな気持ちになりたくない、若井くんが好きなのに苦しい・・・いやだ・・・一緒に居たくない」
先生の口からそんな言葉が出るなんて思わなくてショックを受ける。
まさか・・・別れるなんて言わないよな?焦りが俺を襲う。
「涼架さん・・・何があった?ちゃんと聞かせて、俺は涼架さんのこと好きだよ。一緒に居たいよ、返事が来ないだけで焦ってこんなふうにしてごめん。けど心配で・・・俺も辛い・・・」
そっと先生を抱きしめてそっと頭を撫でると顔を肩に押し付けて腕を俺の背中にまわしてくれた。
「・・・少し前の夜、若井くんの家に行ったら外で女の子と話してるの聞いちゃったんだ。好きって言われてるところ。そのあと抱き合ってるのも見た」
「えっ?!あの時・・・?あれは・・・確かに告白されたし、抱きつかれた。けど俺は断ったし何にもしてないから。え・・・それで、怒って・・・た?」
「・・・嫉妬してた。若井くんがちゃんと断ってたのを聞いてもモヤモヤしてぐちゃぐちゃで···こんな自分が嫌になった。こんな感情知らなかったから。いっそ離れたら楽になるかと思って···」
あの時確か、泊まるとか泊めたとかそんな話をしていた。それもきっと聞いてたんだ···男が多くて誓って何もないけどあの女の子を家に入れたのは事実で···そのせいで俺は先生をここまで傷つけてしまったんだ。
「ごめん、ごめんなさい···軽率だった···。もう2度としない、だから別れるなんて言わないで!涼架さんに捨てられたら俺···どうしたらいいかわかんないよ···」
どうしよう、どうしたらいい?
あんなに追いかけて追いかけて手に入れて、ずっと大切にしてた。けど俺の行動で傷つけてて···でも先生がいなくなるのは無理だよ。
勝手なことばかりが頭の中でぐるぐるとしている。
抱きしめる腕は先生を逃がすまいとより力が入っていった。
「···離して、くるしい」
「嫌だ、居なくなったら困る。別れるなんて言わないで、お願い」
「だからっ、別れるなんて言えないってば!言わないから離して!」
腕の中でもがいて離れた瞬間ハァハァと息をする先生は顔を赤くして俺の胸元をどんっ、と叩く。
割と本気で痛い。
「い゛っ···」
「別れるとか言えないから苦しいのに!わかってるよ若井くんが悪くないのも!けど仕方ないでしょ、嫉妬するし同じ年の子が羨ましいし、わかってるけど恋人だって紹介してほしいとか思っちゃうんだから!合鍵くらいなんかで若井くんのことを束縛する権利もないのに···もっと欲しくなる自分が嫌なんだってば!」
本人はめちゃくちゃ本気で悩んで怒っていると思うんだけど、少し俺を叩く力は強いけどうるうるとした瞳で頬を染めてそんなこと言ってるのは···。
「いや、可愛すぎるよ、涼架さん」
「はぁっ?!僕は真面目に言ってるんだけど!」
「ごめん、けど本当に可愛すぎるし好きすぎてやばい」
今度は優しく包むように抱きしめると、先生はそのまま抱かれてくれて腕の中でふぅ、と小さく息を吐いた。
「俺だってこんな素敵な人が俺の恋人だって言いたいよ、けどヘンな噂で仕事に影響したら困ると思って。それに生徒とか他の先生に今もモテてるんだろうなとか考えてちょっと返事ないくらいでもしかしてなんてカッコ悪く焦って家に行っていなくて学校行って探して···余裕がなくて嫉妬するのは俺も一緒。それくらい好き 」
「···本当に?嫌いになってない?他の人のところになんて行かない?」
「行くわけないよ、俺には涼架さんしかいない」
泣いて、おっきな声で怒って、大好きの裏返しみたいなことを言って、甘えるようなその姿が本来の先生なのかもしれない。
「付き合ったときに離さないって言ったでしょ?ずっと一緒にいてって言ったのは涼架さんだよ。その気持ちって変わった?」
「変わらない···ずっと一緒にいてほしい」
「良かった。俺も変わらないから」
今度は先生がぎゅっと俺を強く抱きしめてくれる。
ちょっと苦しいくらいのそれが想いの強さだと思うことにする。
「俺が悪かったのは間違いないから気をつける···でも、先生ももっと今みたいに怒ってよ、言ってくれないとさ」
「嫌だよ、本当はこんなこと言いたいわけじゃないから···」
「そういう涼架さんも好き、それに限界が来て泣かれて嫌とか言われる方がキツイ」
「···はい、ごめんなさい」
これからもまたこんな風にすれ違ったり喧嘩もするだろうけど、それもまた乗り越えていきたいから。
涙で濡れた頬にキスをすると涼架さんのほうから唇にキスをしてくれる。
「仲直り?」
「···うん」
ようやく少し笑ってくれて心底ほっとした。はぁ良かった、と肩に頭を乗せると優しく頭を撫でてくれる。
「···次こんなことがあったら僕も他の人を泊めるから、しかも2人きり」
「いや!それはだめ、絶対だめ!男も女もだめ、俺怒るよ」
「ふふ···そんな相手いないよ、冗談です」
先生が少し勝ったような表情で笑う。
絶対俺の方が好きってわかっててからかってるでしょ?
「今日、泊まってもいい?もっと仲直りしたいから」
恥ずかしそうに、うんって言って先生は笑った。
泣き顔も怒った顔も好きだけどやっぱりこの笑顔が一番好きだ。
「若井くん、好き···」
耳元で甘く囁かれて、今日は寝かさないと心に決めた。
いつも身体が辛いかなとか考えてストップをかけるけど···先生にはしっかり愛されてるって嫌ってほどわかって貰わないと。
「俺も大好き。今日は寝かさないから」
低い声で耳元で囁く。
いっぱい先生からの好きが聞きたい。
「いっぱいして、ね。こんなに好きになった人は若井くんだけだから···愛してる」
やっぱり先生には敵いそうもない。
でもそれでいいから。
いっぱいこれからも俺に愛させて。
短編 End.
コメント
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短編出すって聞いてから、もう一度じっくりと一週間かけて最初から読み直していました。 細かく描写するところと時間が経過するところの緩急がものすごい上手で、読んでいるとついつい惹き込まれます。個人的に年上受けがものすごいツボで一人称僕なのも含めて読みながらめっちゃ食らってきゃあきゃあいいながら読んでました。
幸せになるお話ありがとうございました💙💛
先生と俺の日々大好きすぎて短編だしてくれるのうれしすぎますって!!!