テラーノベル
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俺の母は
「大丈夫、あなたはもっと強くなれる。強くなれる力がある⋯。私の、自慢の子ですよ。
後は、頼みました」
そう言って安らかに眠った。
母の死を受け止めれず狂った父は酒を飲み暴れに暴れた。最初は僕を殴るだけで良かったんだ。
しかし次第にそれは悪化して弟にまで手を出そうとした。
僕は弟を守りながら父の気が済むまで殴られ続ける。
そんな日々だ。今日だって、何度も気絶しそうになりながらなんとか意識を繋ぎ止めている。
…殴られ続けて何時間経っただろう。弟は泣き疲れて眠っていた。
父は殴る手を止め、タバコに火をつけた。終わってくれるのかと油断したその時。
「お前、稼いでこい」
「……は?」
「だから、稼いでこいって言ってんだよ」
(…自分の気が済むまで息子を殴っておいて出てきた言葉がそれか)
「僕、もうバイトしてて家に金入れてるのにそれじゃ足らないの?」
「ぜんっぜん足りねえな」
「……そうですか」
「ハッ、なんだその目つき。少なくとも親を見る目じゃねえな」
「…ああ、無意識にしちゃってたみたい」
ガンッ!!
腹を足で蹴られる。痛い、いたい。
「…イラつくイラつくイラつく!!!!
お前なんかいらねえわ!家から出ていけ!!」
「……僕、まだ中学生だよ。中学生が金もない中、一人で過ごせないよ」
父は間髪入れず
「あっそ、ならそのまま死ね」
なんてことを言う。
それこそ、『親が子供に言うことでは無い』じゃないか。ああ、腹が立つ。
今までも何回か家を出ようとしたり、警察に連絡することを検討した事はあった。だけどそんな事したって、どうせ施設に入れられてポイだ。
(せめて高校生になってから。大丈夫、きっとどうにかなる)
そう言い聞かせて、自分を奮い立たせた。
◇◇◇◇
どうやら僕は弟を自室に連れて行ったっきりそのまま寝てしまっていたようだ。布団を捲り腕の中を除くと、やはりと言うべきか、弟がいた。
すやすやと心地良さそうに眠る弟を申し訳ないながら揺さぶると、『ぅーん…』と唸りながら目を擦り、開けた。そして僕を見た瞬間――
「うわあああぁぁぁぁんううう!!!」
「え…、」
号泣した。
目線は僕の体だ。治療せずに寝たから、動くと血がドパドパと出てくる。きっとそれが刺激的すぎたんだろう。
「大丈夫、一回落ち着こ、ね?」
ニコッと笑って見せた。けれど泣き声はやまない。
…あれ?
いつも僕か弟が泣いていると父が文句を言いに来るのに。なんでこんなに静かなの?
ついに見破られた??とかも思ったけど、それ以上に何か嫌な予感がして、リビングに走った。
◇◇◇◇
結論から言うと、父はいた。
目線は―― 母の棺だ。
死んだ母に一体何をするって言うんだろう。
…嫌だ、何か、見てはいけない気が――
バシンッ!!!
父は、母の死体の、頬を叩いた。
僕は絶句した。ここにいてはいけない。そう思って、何も持たず家を出た。
夢中で、ひたすら走った。
「はぁッ―!! はッ、はッ、…」
周りを見るとたくさんの人。みんな、明らかに僕を見ている。
もう僕はダメだ。ここで、人生終わるんだ。
学校に通って見たかった。デパートとか、公園に遊びに連れて行ってほしかった。友達がほしかった。
…誰かの暖かさが、ほしかった。
…弟のことも、幸せにできなかった。僕は、どれだけ出来損ないなんだろう。どうしてこうも、何も出来ない?どうして…。
『なあ、大丈夫?』
「……」
『俺ん家近くやから、入り?』
「……」
『だんまり?大丈夫よ、お兄さん何もせえへんから!』
「…っ、」
違う。走りすぎて、肺に空気が入らなくて。声を出したくても、過呼吸気味になるだけで…。
あ、意識が――
◇◇◇◇
コメント
1件
あーーさん、読ませていただきました……冒頭の母の言葉から、もう切なくて胸がぎゅっとなりました。弟を守りながら暴力に耐える主人公の姿に、自分のことのように苦しくなりました。「せめて高校生になってから」と自分を奮い立たせる強さと、最後に道端で倒れるまで追い詰められる弱さの両方が、本当に生々しくて。見知らぬお兄さんの「大丈夫?」に、少しだけ救われる気がしました。続き、気になります……
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ナギサノサナギ
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