テラーノベル
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まずい……止まらない涙を左右の手首の包帯に吸い取らせていたら、湿布臭が目にしゅわって来た。
慌ててワンピースの半袖部分に涙を任せ始めると、また安心して涙が流れて来る。
「…真奈美さん……?」
あ、忘れていた……
篤久様が迎えに来てくれたのか……しまった……と思った時には、ぎゅっ……
私の前に膝をついた篤久様に抱きしめられていた。
「ご両親と話せた……?」
そう言いながら、篤久様は片手で私の後頭部をゆっくりと撫でる。
「…ご両親、大丈夫そうか?心配なら、今から会いに行く?送るよ?」
抱きしめられた引っ込んだ涙が、また溢れる……
「…っ…だぃ……じょ…ぶ……お母さん…が……大丈夫でうれし……」
「そうか、よかった。さすが真奈美さんのお母様だ」
「……ぉ…とさん……褒める……って……」
「うん?真奈美さんを褒めてくれたのか?」
コクン……コクンコクン……
「褒めたくなる頑張りだからね。わかってくれて安心したら涙が出たんだな……よかった。涙なんて流す間もなく頑張り続けたから……よかった」
ゼロ距離から私に届く篤久様の声は、とても心地いい。
「私を止めず……最後までやらせてくれて…ありがとうございました……」
「真奈美さんの思いは、俺が簡単に止めるような思いではなかったから、止めるべきじゃないと思った。途中、驚くこともあったけれど……」
「驚くこと…?」
私がそう聞き直すと、篤久様は抱きしめていた腕をほどいて、私の涙を指で拭った。
「あのドレス……どうしてブルーにした?」
「ぁ……」
そこか……
「3着候補があったので…」
「でも、その中でブルーに誘導しなかったか?」
「…どうしてそう思われます…?」
やっと止まった涙の留まる目じりを撫でた篤久様は
「ミシンの前で楽しむっていうよりは、戦闘モード…作戦実行っていう顔をしているように見えた。そのあと、大門ルールというものによって、あれがはじかれた……真奈美さんが、ひとつ小さな勝利を収めた瞬間だったんじゃないのか?」
私の頬に残る、薄い傷跡に触れた。
「…企業秘密っていうか、そんな感じです……偶然手に入れることが出来た情報を有益に使いました」
「ふっ……それも才能だな。2階行ける?上で、顔を洗って診察……歩ける?抱いて行こうか?」
「へ…ッ……?」
どういう意味……?
「こういう意味だけど……?」
篤久様は私のワンピースの下に腕を通し……
「ひゃ……っ…歩けます!階段も…ば、ば、ば、バッチリ、大丈夫…」
「ばばば…」
ドキドキ、あわあわする私の真似をした篤久様は、私を立たせると
「いつか抱いて歩くから」
と、謎の宣言をした。
抱いて歩く……?
コメント
12件
抱いて歩いてもらう日が楽しみね〜💕
もう好き好き光線が出まくってるのに、全然気が付かないのが良いわ😆
篤久さまジワジワジワジワ来てますな〜(≖ᴗ≖ )ニヤリ