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その日の2回目の
ショーが終わる頃には
ジョージはすっかり
疲れ果てていた
ゼビアスの豪華な
ショータイムで他のホストが
一週間かけて慣れていく振り付けを
ジョージは2日でマスターする
俗にいうダンスの
勘がいいのだ
音感や耳も良く
音を瞬時にして体で表現していく
それ故にすべてにおいて
やり直しが利かない
生の舞台では彼の才能は
最大限に発揮され
「 ゼビアス 」
のショーはほとんど
今やジョージが主役になっていた
「ジョージ!
さっきの舞台
振りつけを間違えただろ」
けたたましく
楽屋のドアを開けると
ゼビアスのオーナーの
慎二が少し怒り気味に入ってきた
黒髪オールバックに長身
スーツは全身アルマーニ
首元には24金のチェーンが
怪しげに光っている
下積みホストからわずか2年で
このゼビアスをミナミ1の
顔にしたぐらいのやり手オーナーだ
ダイヤモンドがちりばめられた
腕時計は自分の力を誇示するのが
好きな人間が好むデザインだ
ジョージはイライラし
無償に腹が立った
「疲れてるんだ!
もう2週間も休みなしで
踊らされている
頼むから 休ませてくれよ!」
ジョージはそう吐き捨てると
頭をかかえ机にうずくまった
そんなジョージの訴えなど
聞く耳ももたないといった感じで
ゼビアスのオーナー慎二はまくし立てる
「お前が疲れていようと
どうだろうと舞台に穴を
開けるわけにはいかないんだよ
なぜなら
俺の興味はひとつだけ!
客に金を払わせることだ!
お前が生きようが
死のうが俺にはまったく関係ない 」
慎二が力まかせにドアを閉めると
戸口の枠がカタカタ鳴った
傲慢にジョージを見下しながら
ドサリと向かえの
椅子の背にもたれた
「それから
今夜Kプロダクションの
社長が来るぞ
お前 指名だ!よかったな
今夜は社長の家にまで
行って奉仕してこい 」
ジョージは叫んだ
「かんべんしてくれよ!
あのババァに弄ばれるなら
殴られたほうがましなんだよ!
それに とても 口が臭いんだ!! 」
バシンっっ!
横頬を思いっきり叩かれ
ジョージがよろめく
「身の程をわきまえろっっ!!
島根から文無しで出てきて
住む所と仕事を与えてやったのは
いったい誰だ!
あの社長はかなり 太い客だぞ 」
ジョージは叩かれた
左頬をおさえ慎二を睨んだ
二人はしばらくにらみ合った
慎二は思った
近くで見ると
ジョージは本当に綺麗な
顔をしている・・・
そしてこうしてはむかって
来る若さが全身に
みなぎっている・・・
かつての自分もそうだった
自分が落とせない女は
この世には存在しないと
思えた時代もあった
そして
金に物をいわせて
この大阪に
続々と新店舗をオープンして行った
権力と金には困らないものの
ホストの寿命は短い
今は自分はもう
年をとりすぎていて
顔も皺が増え
酒の飲みすぎで
肌は毛穴が開き汚く
目は血走っている
自分に客はもう取れない・・・
このジョージのように
若くて粋の良い
ホストを餌にしてあとは
どれだけ稼がせれるか・・・・・
そして このジョージは
まだまだ使える
今やゼビアスには
無くてはならない存在だ
まだまだ
自分の手元に置いて
おかなければいけない
慎二の顔が少し柔和になった
「・・・・大げさに騒ぐな
これくらいお前だと
なんでもないだろ 」
「ああ そうだよな
誰かさんにずいぶん
しこまれたからな 」
一言ずつに悪意がこもっている
二人はにらみあった
先に目をそらせたのはジョージだった
「 なぁ・・・・・
よく考えてみろよ 」
慎二がなだめるように
ジョージの肩を抱いていった
「お前の夢はなんだ?
有名になりたいんだろ?
あの社長に気に入られると
俳優だろうがアイドルだろうが
お手のもんだ!
有名になってお前を
捨てた母親を見返してやるんだろ?」
子供思いの父親の
ように語りかける
「もういいかげん
判れよ
コネがいるんだこの世界には
そうだろう?
したたかになれよ
あの社長にうまく気に入られれば
お前にもでかい役が回ってくるだろう
そしたら
お前もたちまち有名になれる
俺だって
お前が有名になったら嬉しい
俺はお前の夢を
叶えてやりたいんだよ 」
ここぞとばかりに
優しくジョージにつめよる
ジョージの心は動く
ここまで苦労して
つかんだ座を簡単に
離したくないのは当たり前だった
ジョージは観念して
椅子に腰をおろした
「わかってくれて
うれしいよ・・・・・ 」
すっかり理解のある父親役を
演じている慎二は
ジョージの頭をなで
胸ポケットにビニールに
包まれた白い粉をすべらせた
ホストの中ではコカインを
常用するものは多かった
慎二の態度には少しも
悪びれた所はなかった
慎二の言葉は急に事務口調になった
「さぁ!
次の舞台まであと5分しかないぞ
行って
欲求不満の女どもを悩殺してこい
お前が今夜のおかずになるんだ!」
バタンとけたたましく
扉を開けて慎二が出て行った
入ってきた時と同様
ドアの枠が余震でカタカタ鳴った
ジョージは壁にもたれて
そのままズルズルと
しゃがみこみうずくまった
「くそったれ・・・・・・」
小さく悪態をつく
ジョージの中で絶望が
黒雲のように体を包み込み
おぞましい敵につかまれ
水底に引きずりこまれるように
今や ゆっくりと深く
彼を闇が包んでいった・・・・
しとしと
雨が降っていた・・・・・・
窓は部屋の湿気で
曇っていたが
手でふき取り
外を眺めると
ラブホテルと飲み屋の
ネオンが水滴に照らされ
キラキラ輝いていた
ここはミナミの
飲み屋街の真ん中にある
小さなマンションの一室・・・・・・
18畳一間
ユニットバス
電気式のコンロ
家具もなければテレビもない
ただ ただ だだっ広い
あるのは スツールに掛った
ホスト用のスーツが数着と
おそらくお客に
もらったであろう
バカ高そうな腕時計が数本
売れっ子ホストの部屋にしては
おそろしくシンプルだ
そう・・・・・・
ジョージの住む
このワンルームマンションに
あたしが転がり込んでから
既に一週間が過ぎていた
何の調和も考えずに
とりあえず間に合わせで
揃えたような
ソファ兼用の一人用ベッドが
なんとなくあたしの
テリトリーになっていた
そこにじっと座り何もせずに
ただ ひたすら
ジョージの帰りを待った
まるで飼い猫が
ご主人様を待つように
テレビもないこの部屋は
世間とかけ放されたような感じで
まるで精神と時の部屋みたい
に静まり返っていた
でもこの静けさが
何故かあたしの心を
とても落ち着かせた
聞こえるのは
外の車が通り過ぎる音と
時折 このマンションの住人が
ドアの前を歩いていく音
どこかの部屋の
ドアが閉まる音・・・・
道行く人の話し声
ここに来てからというものの
ずっと熱にうかされたみたい
自分がジョージと一緒に住んでるなんて
信じられなかった
一週間前の今日みたいな雨の日・・・
あたしは学園を飛び出した
ジョージ会いたさにホスト通いを
していたのを学園にバレたからだった
そして【売り】をしていたことも・・・・
行くあてのないあたしは
唯一の心の支え
ジョージに電話した
雨粒が肩に滲む・・・・
ジョージはずぶ濡れになっていた
あたしをこの部屋に連れてきた
ジョージは思いもよらない
言葉をあたしに言った
「いつまでも 居ていいよ」
時々学園のことや
学園に残されてきた
小さな子供達の事を思った
学園長はあたしを
探しているだろうか?
麻美の所にも行ったかもしれない
荷物も着替えも
全部置いてきてしまった
まさに体一つでここに来た
あたしが
唯一持っている物・・・・
【売り】のお客さんから
貰った携帯が何度か
着信を知らせた
着信番号は麻美のもあった
でもジョージからここを
誰にも教えないように
言われていたので
あたしは着信音を無視した
雨は小雨に変わっていた
時計はもう
朝の6時を指している
ここにきてすっかり
夜型に変わった
髪が伸びた・・・・・
枝毛を少しさいて遊んでいると
玄関の鍵がガチャガチャ鳴った
あたしは
飛び上がって玄関に急いだ
ジョージが帰ってきた
「お帰りなさい」
途端に気分が好調する!
勢いよく
扉が開いた途端
ジョージは玄関の壁にもたれた
足元がおぼつかない
今日もひどく酔っ払っている
そしてそのまま
ジョージは丸太の
ようにバタンと倒れた
あわてて駆け寄ると
グーグーいびきを
かいて寝てしまっている
逞しい体がぐったりと
横たわっている
光景に胸が痛んだ
この一週間ずっとこの調子だ
ジョージはひどく疲れていた
体が心配だ
かなり無理をしてるように見える
あたしは
今や丸太となった
ジョージをかついで
部屋まで引っ張ってきて
着ているスーツが
皺にならないように服を脱がす
スーツのシワをアイロンで伸ばす
またお店に着ていけるように
ここにきていつの間にか
これがあたしの仕事になっていた
ジョージの手には
コンビにで買ってきたであろう
菓子パンが入った袋があった
たぶんこれはあたしの食料だ
たった
これだけで幸せを感じる・・・
疲れてぐっすり眠り込んでいる
初めてあった時と変わらない
ハンサムなその頬をなでた
もう 高いお金を払って
お店に行かなくても
こうしてジョージは
あたしのもとに毎日帰ってくる
正確にはあたしが
ジョージのもとへ
転がり込んでいるんだけど・・・
誰にも連絡を取りたくなかった
麻美にも もちろん学園にも
学校にも行っていない
ジョージとのこの
時間を誰にも邪魔されたくなかった
静まりかえった
部屋で聞こえるのは
ジョージの寝息と
時計の分針の刻み込む音だけ
今はただ・・・・・
この閉ざされた世界で
ジョージの寝顔だけを見て
過ごしたい
たとえ それが
つかの間の幸せだとしても
「ありがとうございました~」
リンロン♪ リンロン♪
昼過ぎのコンビ二を
二人で後にしてから
あてもなくブラリブラリと歩く
今日は
ジョージのオフの日
コンビ二でアイスを
買ってもらって
あたしは食べ歩きながら
ジョージの後を着いて行く
目の前を歩くジョージは
首が伸びたダボダボのトレーナー
それにGパン
足元はサンダル
あまり
ファッションには
こだわらないタイプみたいだ
そして
頭はボサボサ
休みの日のジョージは
疲れ果て死人みたいに歩く
まるでボロ雑巾だ
これが
ミナミで人気の
ホストだとは誰も気付かないだろう
二人でぷらぷら歩いていると
フと
ジョージがあたしを見て言った
「そういえば ユカ
ずっとその服着てんね
何か新しいのを買いに行こうか 」
「本当?」
「ああ 首輪も必要かな?」
そう言って
少しジョージは笑みを浮かべた
よかった
今日は機嫌がいいみたい
今までお店でしか
会ったことがなかったから
プライベートな
ジョージを沢山知れて
あたしは舞い上がっていた
しかし
私生活のジョージは
おそろしく無口で
毎日機嫌が悪く疲れていた
そして
あたしのことはたぶん
捨て猫かペット
それぐらいにしか
思っていないみたいだ
そう・・・・・
あたしたちはSEXしていない・・・・・
キスさえも
男と女なんだから一緒に暮らすと
そうなるものだと思い込んでいた
ジョージは今までの
男の人とは全然違った
そして
今までの男性経験上
一緒にいるのに
SEXしないでいるこの関係に
あたしはとても不安になっていた
フラフラ歩く
ジョージの背中に何度も問いかける
ねぇ
あたしのこと
どう思っているの?
このままずっと
そばにいてもいいの?
あたし・・・・
ジョージのそばにずっといたいよ
プルルとジョージの
ポケットの携帯が鳴る
無表情でその電話を取るジョージ
「もしもし・・・
ええ 俺です 」
途端に営業の顔になる
5分後
あたしは家の鏡の前で身支度する
ジョージの背中を見つめていた
オフの日にも出かけるなんて
電話の相手は
よほどの太いお客に違いない
「ユカそこのロレックス取って 」
「これ? 」
「違う金の方 」
ジョージは髪とスーツを
ビシっと決めて
右腕に金のロレックスをつけた
最後にタスカニーの香水を
手首と首にふる
その佇まいに見入った
惚れ惚れするぐらい良い男だ
スーツを取り
袖を通して襟をもって引っ張り
肩に馴染ませる
こういう時のジョージは何か
得体のしれない者のように
思えて怖さを覚える
圧倒的な存在感
ホストの時のジョージは
回りになにやら
オーラを背負ってる
目を見張る容姿
ポカンと口を開け
そのまま閉じるのを忘れ
見入っていた
「 行ってくる 」
ジョージは
無表情のまま あたしの顎を
軽く上に上げた
開いていた口は閉じられた
バタンとドアが閉じられた
暗闇の部屋の中
あたしは うずくまって
ひたすらジョージの帰りを待つ
服は買ってもらえなかった
長い 長い 夜がはじまった
今はただ・・・・・
何も考えたくなかった
すべてがどうでもよかった
このままごとみたいな
同棲生活が今の
あたしにはすべてだった
いつまでも
この状態が続いてくれますように
そして
ジョージがあたしを
抱いてくれますように
ジョージの残り香とともに
祈るようにあたしは
目を閉じた・・・・・
「まだだよ
だめだめ目は閉じたまま
そう・・・・
ゆっくり僕を待って 」
隣にいる女の口に
ポッキーをひとつ刺し
ジョージは水割りを
グイっと一息飲んだ
「はやくう~♪
ジョージィ~♪
何してるの~? 」
女はすっかり
その気になっている
自分が端からそのポッキーを食べたら
その先にはこの女とKISS
することになる
「そ~れ
やっちゃえ♪
ジョージさぁん~♪ 」
隣ではやし立てる
ヘルプの新人ホスト
少し前まで自分も彼らのように
人気先輩ホストに
気に入ってもらおうと必死だった
今は反対の立場にいる
「こんなきれいな人と
ポッキーちゅうしたら
俺本気になっちゃうよ 」
ゼビアスの人気No1ホスト
の実力はさすがで
ジョージは客の女の好みを
瞬時に察し時にはこんな風に
かっこいい男をはべらせて
騒ぎたい客には
思いっきり楽しませる
すっかり気を良くした客は
湯水のように金を使う
・・・・・・・・・
「へぇ~
俺の母親があなた
みたいな人だったよ
俺が小学生の時に
死んじゃったけど・・・・ 」
そして 年配の女は涙ぐんだ
「そうだったの・・・・・
ごめんなさい
どんな言葉をかけていいか・・・」
「そんなっ!
泣かすつもりで
言ったんじゃないんだ
本当に・・・・・
なんて優しい人なんだ・・・・
あなたって人は・・・ 」
そっと
女の肩を抱く
この女もすっかり自分の虜だ
そしてこの女の財布の
中身が寂しくなるまで
搾り取れることだろう
今さらながら思うが
ここにくる客は自分の
嘘を意図も容易く信じて
あっさり騙される
それだけ世の中には
寂しい女が多いということだろうか
次のテーブルにつく
ロングヘアーのいかにも
キャリアウーマン風の
スーツを着た女が
バカでかいシャネルの
カバンを横に置いて座っていた
「今日こそ返事を
聞かせてもらうわよ!
ジョージ君! 」
女は切羽つまったように
ジョージに詰め寄る
「リツコさん!
来てくれたんだね!
でもいきなり怖いな 」
自分に会いに来てくれたのが
嬉しくてたまらないという顔で
ジョージは女の横に座った
この女は雑誌の
編集部に勤めていて
はじめは興味本意の
取材でこのゼビアスに来た
そして
自分は絶対ホストには
ハマらないと豪語していたが
そういう女ほどちょろく
今や毎週末にはリツコはこうして
ホイホイ通うようになっていた
女編集部のリツコは
メンソールのタバコをふかしながら
早口でまくしたてる
「ねぇ!
本当にジョージ君にも
悪い話じゃないでしょ
今日も編集長に駆けあったのよ
うちの編集部に来れば
雑誌のモデルとして働けるし
好きな芸能人にも会えるのよ 」
また はじまったよ・・・・・
もう少しで大きなため息を
ついてしまうところだった
りつこも悪い人間ではないのだが
この女は酔うと絡む癖と
やたらとケチな所は
どうにかならないものだろうか
「へぇ~ 楽しそうだね 」
リツコはジョージの
手を握り意地悪く言った
「大体 何よあの女
ジョージもジョーシよ!
あたしの目の前であんな女と
イチャイチャしてんじゃ
ないわよ! 」
追加・・・・
この嫉妬深い所もどうにかしてほしい
「俺もりつこさんと
同じの飲んでいい? 」
話を逸したくて
ニッコリ笑顔で聞いた
キャストのドリンクは
別料金になっているからだろう
りつこは少し嫌そうな顔をして頷いた
注文したショットの
シャンパンが運ばれて
きたので乾杯をした
「何か歌う?
それともデュエットする? 」
途端にリツコが不機嫌になった
「いい?
あたしはあなたと
話をしに来てるのよ
それが何よ!
カラオケ・カラオケって!!
そんなに
あたしと話するのが嫌なの?
さっき
あそこの女と散々歌ってたでしょ!!
あたしはあのBOXの女と
同じ扱いされてるワケ? 」
ああ
うるさい!
だったらもう二度と来んな!!
そう怒鳴りつけてやれたら
どんなに気分が良いだろう
しかし
そういうわけにも行かない
ジョージは真摯に反省してる
フリをしてリツコを熱く見つめた
「怒られてるのに・・・・
ダメだな俺・・・・
リツコさん・・・
怒った顔・・・・
マジ綺麗・・・ 」
途端にリツコの顔が赤くなる
唇の端が緩む
少し声が柔和になった
「ねぇ
真剣に考えて!
ジョージ君がこんな所で
終わるような男とは思えないのよ
うちに来ればいろんな
可能性が開けると思うの
あたし・・・・
真剣にジョージ君の事
心配してるのよ・・・ 」
そして 俺はあんたの
ペットになるのかよ?
ジョージは心の中でそうつぶやいた
この女もそろそろ
ここで遊ぶ金に尽きてきたか・・・・・
無理もない
初めの頃はドンペリを
ボウリングのピンがわりにして
遊ぶぐらい豪遊していたのに
一人者の40代を前にして
ガッツリ貯めた
貯金も乏しいだろう
そして
昨今の出版業界は
決して景気が良いとはいえない
かといって俺に
会えなくなるのも寂しい・・・・・
だから自分の所で
働かせて自分のペットに
する気か・・・・
プライドの高い女ほど
「金が無い」とは言えない
ここから
この女が自分ために
どれだけ金を作るかは
自分の腕にかかっている
「そんなに俺のことを
考えてくれるなんて・・・・・
嬉しいよ 」
力いっぱい抱きしめ
耳をキスする
少し鼻をすする
途端にリツコは赤くなる
思ってもいない時の抱擁ほど
寂しい女に効くものはない
バカみたいに硬直している
もうこの女の頭は思考停止だ
誰も見ていないのを確認してから
パンツの中に手を入れて
指を中に滑りこませた
濡れている
「ちょっ・・・・
ジョージ君・・・・
あっ・・・ダメ・・・ 」
ハッとしたように身を引く
リツコは息を上げて真っ赤だ
「ゴメン・・・思わず・・・
俺・・・・・
今夜はリツコさんの為に踊るね
だから
絶対目をそらさずに見ててね・・・」
「え
ええ・・・・・・
ずっと 見てるわ・・・・」
うっとりとリツコは
自分を見つめてる
ほら
この哀れなホストを
助けてやれるのは自分しかいない
リツコはおそらく
今後はカードローンに
手を出してでもうちの高い
テーブルチャージを
払ってくれるだろう
そして自分は笑顔で彼女を迎える
彼女が金を運んでくる間は
俺の笑顔は消えることはない
深く息を吸って
天を仰いだ
そこには
青空ではなく
暗い天井にミラーボールが
キラキラ回っていた
テーブルに並べられた
グラスにミラーボールの
光りが反射する
その光の筋は客やホスト
の顔を照らし
その顔が
まるでマスカレードの仮面
のように醜く歪む
すべてがバカバカしい・・・・
ミラーボールを眺め
ジョージはそう思った・・・・・
ジョージは化粧を落とし
熱いシャワーを頭から勢いよく
かぶった
朝日が昇る頃やっと長い
ゼビアスの営業は終わる
ジョージは一刻も早く家に帰り
眠りたかった
さんざん飲んだ酒のせいで
腹がチャポチャポ鳴っている
明日はおそらく
下痢になるだろう
自分の腸はこの毎日の
水分の大量摂取に
いつまで耐えられるだろうか
他のホスト達も次々と
着替えを済まして帰ってゆく
ジョージは何もかも
腹立たしかった
隣ではケンと
新人ホストが私服で
遊びに行く準備をしていた
別な場所でも相変わらず
セックスと麻薬の話ばかり
ジョージはうんざりしながら
逃げるように出ていこうとする
フとゴミ箱に
何かを捨てようとしている
ホストに目が止まった
「何捨ててんの?」
新人ホストに話しかける
「ああ これっスか?
客の女に貰ったンスけど
自分甘いもん嫌いなんスよ!
ジョージさん
良かったら食べますか? 」
「これ
ティラミス? 」
新人が持っているものは
小さな可愛い箱に
入ったティラミスだった
「マジ? そんじゃ 遠慮なく 」
ジョージは
ティラミスを受け取った
声をかけられた
新人ホストは嬉しくて
しかたがないといった感じで
ジョージの後をついてきた
「でも 知りませんでしたよ
ジョージさんが
甘いもん好きなんて 」
憧れのジョージに話しかけられて
すっかり舞い上がっている
新人ホストの頭を軽く
ポコンと叩いて
ジョージは笑った
「俺じゃねーよ 」
「ええ?彼女っスかぁ~~!!
初耳です 」
少しジョージの
顔が柔和になった
「そんなんじゃねーよ!
シバかれたいの? お前 」
「またまた~~♪
見たんですよ 俺達
ジョージさんがオフの日
女の子と歩いてるの♪ 」
ピタリと立ち止まり
ものすごい勢いで振り返り
ジョージは新人ホストの
顔をにらんだ
「・・いつ?・・・」
ジョージの気迫に
すっかり圧倒された
新人ホストは焦った
「え・・・えっ~と・・・・
ここのみんなで
焼肉行った帰りに・・・
ジョージさんと
女の子がコンビニから
出てくる所見たんス・・・ 」
初めてジョージは
新人ホストの顔を
マジマジと見た
そして
胸ぐらをつかんですごんだ
「誰とだれが見た?」
「ゆ・・・
ゆうやさんと
ひろし・・・さんと
けんごです・・・・
ジ・・・
ジョージさん・・・
くるしい・・・ 」
今や新人ホストは
ジョージに首を絞められて
顔が赤くなっていた
力が入った腕を緩める
ひろしと言えば
慎二の直属の部下だ
ジョージは嫌な予感がした
「お前 名前なんて~の?」
「コウジです!
ジョージさんと
同じ島根から来ました」
息を切らしニコッと
笑う新人ホストのコウジは
日本人離れした顔をしている
コイツは年配の女性客に
受けるかもしれないと
ジョージは思った
「すいません ジョージさん」
別のホストに呼び止められた
オーナーの慎二が
事務所で待っているらしい
なんというタイミングだ・・・・
ジョージはしかたなく
事務所に向かった
手のひらに
嫌な汗をかいている
ユカと歩いている所を
誰かに見られた・・・・
いまやジョージの嫌な予感は
これから起こる不幸への確信に
変わっていた
怒りのこもった
拳をたたきつけて
ジョージは勢いよく
事務所のドアを押し開けた
事務所には
オーナーの慎二
その横には
二人の中国人風の男が
室内に設置してある
ビリヤードをやっている
ジョージは吐き気を感じた
最近慎二が中国人と何やら
怪しげなことをしていると
噂する従業員もいた
今 ジョージはその
真実を目の当たりにしていた
ジョージは
中国人二人を見上げた
一人は小柄で真っ黒な
磨き上げた靴をはいていた
髪はポマードで
オールバックにし
テカテカひかっていて
まるで一昔前の
タップダンサーのようだ
もう一人の大柄な方の
片方の眉には
汚れたような痣があった
無表情でボクサーみたいに
首をポキポキ鳴らしている
慎二は黒の
革張りの社長椅子に座り
足を組み鷹のような
目でジョージをにらみつける
右手にはビリヤードのキューを
握りしめている
「急に呼び出してすまんな」
「いや・・・・いいです」
不安を押し隠すように
少し気遣いをしてみた
「お前気づいていないのか?
お前の専属のユウコが飛んだ 」
ジョージは驚いて目を見開いた
そうなのだ以前
毎日のように来ていた
ユウコが最近姿を
見せないので不信には思っていた
今晩あたり電話してみようと
思っていた所だった
今やジョージの背中には
じっとりと嫌な汗が流れていた
「ユウコの住所にも
当たったがもぬけの殻だったぞ
今朝から携帯もつながらない
それでな
ジョージ・・・・・ 」
ビリヤードの
キューを大切そうに
磨きながら信次が続けた
「大変言いにくいんだが
ユウコには掛け金があってな
お前も知っているだろう? 」
ツケってやつだ
ゼビアスでの支払いは
本来キャッシュだが
信頼している客だけ月末に
一括で支払いすることもできる
もっとも客が払えない場合
その担当ホストに
ツケがまわってくる
慎二はちらっと
中国人に一瞥をくれると
ふたたびジョージに
視線を移してこう言った
「ユウコの掛け金がしめて
500万 」
ジョージはおもわず大声を上げた
「そんなに?
うっうそだ!
そんなわけないっ!!」
その声が早いか
慎二の右隣で
ビリヤードをしていた
中国人の一人がジョージの
みぞおちに拳を
めり込ませるのが早かったか
ジョージは腹を抱えて
そのまま突っ伏した
どさっと地面を打ち
肺から空気がすべて
押し出されたみたいだった
あまりの痛さにジョージは喘いだ
「ユウコはうちの
北店舗のゼビアスでも
遊んでたんだよ 」
慎二は太い葉巻の先端を
カットし火をつけた
とたんに部屋中に甘い
葉巻の煙の香りが充満する
「まぁしかたないな・・・
客を飛ばすなんざ
一流ホストの名にすたる
というもんだな
お前がたるんでる証拠だ
今どき流行らんが
ユウコのツケはお前が
かぶることになる
ゼビアスの仕来たりだ 」
慎二はタイ産の葉巻を
また一口吸いとても
残念そうに言った
「そ・・・・・
そんな大金・・・・
俺がもってる訳ないだろう・・ 」
ジョージの声は息が
詰まってかすれていた
地べたにはいつくばっている
ジョージを中国人が壁に押さえつけ
ジョージの喉元を縛り上げる
「ぐえっ・・・・・・」
あえぎをもらすジョージ
慎二が近づき中国人に何やら
中国語で言っている
大柄の中国人がジョージを
勢い良く離した
慎二がジョージに詰め寄り
頬をぴしゃぴしゃ叩いた
「ものは相談だがな
ジョージ・・・・・
なんだか最近お前
孤児院から逃げてきた
子猫を飼っているそうだな・・・・
そいつに ひと稼ぎして
もらったらどうだろう?
そんな 金すぐに返せるぜ 」
慎二が訪ねた
咳き込みながら
ジョージは慎二を睨み
虚勢をはって言った
「ゆ・・・・
ユカに何させる気だ・・・・」
「おやおや・・・・
拾った子猫に対して
お前がそれほど思い入れを
持っているとは驚きだな 」
怒りと好奇心が
ないまぜになった表情が
ハンサムな浅黒い顔に浮かんでいる
「なぁに ちょっと
アルバイトを
してもらうだけだよ
孤児院出とは都合がいい
その子が消えても
誰も心配する連中はいないだろう」
ジョージは拳をにぎり
反撃をする覚悟を決めた
「ゆっ・・・・
ユカは関係ないっ!!
あいつとは何でもないっ!!」
慎二はジョージを眺め頭を振った
そして怒りを爆発させるような
大声で怒鳴った
「関係なくても
お前が女を囲っていると
いう噂が出ただけでも
こっちは大損害なんだよっ!! 」
ジョージが怒涛をあげて
大柄の中国人にかかっていった
大柄の中国人はジョージの
攻撃をひらりとかわし
満身の力を込めて
ジョージのこめかみに
拳を降りおろした
激しい衝撃に
ジョージは崩れ落ちた
「顔はやめろっ!
コイツは大事なうちの商品だ!!」
慎二が怒りながら
中国人に命じた
ジョージを見ながら続ける
「俺は今まで少しお前に
甘すぎたかもしれん
お前は少し身の程を
わきまえる必要がある」
慎二は子供に
道理を説くように言った
その口調とは裏腹に
信じられない力で
ジョージの顎を掴んだ
「だが心の痛みが大きければ
それがお前のためになる
なにかを手に入れる時
は代償がつきものなんだよ 」
慎二は落ち着いた口調で言った
「手に入れた物の価値は
ますます高くなる
この俺様からの
信頼ーえこひいきー
これは価値あるものだ 」
掴まれた顎のあまりの痛さに
意識を失ったとは言わないが
けれどしばらく我を
忘れていたのは間違いなかった
床に四つんばいになって
目線をあげると
ティラミスの箱が転がっていた
さっき叩きつけられた
時に手から転がったのだろう
慎二はジョージの目線の先の
この小さな箱に気づいた
「大丈夫だ
すべて上手くいく
俺の言う通りにしていれば」
そう言うと慎二は笑って
その箱を踏み潰した
ジョージの家に
転がり込んでから
もうはや
一ヶ月が過ぎようとしていた
それは静かな朝方
洗面所の人の気配で目が覚めた
ジョージが起きている・・・・・
洗面所で彼が注射針を
自分の腕に刺しているのを見た時
あたしはびっくりして
どう反応していいのか
わからなかった
何をしているのかは
あたしにもわかっていた・・・・・
あたしとジョージは
暫く見つめあったまま
重苦しい沈黙だけが流れた
「 それで 」
あたしは言った
「面白半分でやってるの?
それとも中毒患者なの? 」
彼は背中を向けて
洗面所の引き出しを開けて言った
そして
注射針の袋と剃刀の刃
秤、鏡、白い粉の入った薄い袋
チューインガムみたいな
べとべとしたものを
あたしに見せてこう言った
「 コカインだよ 」
あたしは白い粉の入った
袋を手に取り小首をかしげた
ジョージは袋をあけてひっくり返し
中にある粉を鏡の上に落とした
あたしはその鏡と一緒に
写ったものを凝視した
「しょっちゅうやってるの?」
「イヤなことを忘れたい時だけ」
「どうして言ってくれなかったの?」
あたしは両手でジョージの
顔をはさんで
そっとキスをした
理由はなかった
ただ そうしたかった
ジョージは抵抗しなかった
「どれくらいあれば
人は死ぬの? 」
「わからない・・・・・」
心細くジョージは言った
初めて見た顔だった
「わたしにも少しヤラせて・・・」
彼がどう出るか
試すつもりで言った
「 ダメ 」
「お店のお客さんもやってた人いるよ」
「女は嫌いだ うるさいし 臭い」
「あたしも女だよ」
「ユカは静かだから いい・・・」
と言ってジョージが
あたしに腕を回してきて
深いキスをしてきた
舌が入ってきた時は驚いた
そして
ゆっくりあたしを床に押し倒した
なぜかその態度が
わざとらしかった
彼の腕にある注射針の後・・・
小さな赤い点に触れた
その部分があまりに柔らかく
あまりに凶暴な所に心動かされた
ジョージのキスはだんだん
激しくなってきていた
こねくり、突き、引いて、また突く
・・・・SEXする気なの?・・・
心の中でそう思った
ジョージの手があたしの
パンツの中に入ってきた
やっぱり する気なんだ
彼が目を閉じる前に
あたしはその闇に映る
自分の姿を見つめ
彼の居るその場所に
行きたいと思った
「どうしたら
あなたを救えるの?・・・・」
なにげに聞いてみた
「そんなことしなくてもいい」
そういうと
ジョージは
あたしのパンツを脱がし
脚であたしの太ももを開かされた
ならば一緒に堕ちるまで・・・・・・
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あたしだけは
この人の闇に触れられる
あたしだけはこの人と
どこまでも一緒にいける
ジョージがあたしの中に入ってきた
「イく時・・・・・
イくって言えよ・・・・・」
四角くて白い天井
ゆれているジョージの肩
洗面所の床に
寝かせられているおかげで
ジョージが動くたびに
痛む腰と背中・・・・・
ねぇ・・・・・
マリア・・・・・
こんな時に幸せを感じる
あたしは罪深いのでしょうか?
あたしの魂は底知れぬ
深淵へ呑み込まれ
そこにはジョージとの
真実があるように錯覚した
ジョージのとのそれは
今までの誰よりも
神聖なものだった
そして あたしは叫んだ
「ああっ・・・・
ジョージ・・・・・
イッちゃうっ・・・・・ 」