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ある時、信じられないような失態は起きる。なんなら裏切られることもあるし、生憎私たちは人間だから失敗する時だってある。信じていたものは平気で嘘をついて、信頼が無くなるほど絶望に陥るんだ。
傍にいればいるで不快に感じる時もあるのにやっぱり好きで、離れて欲しくないけど、四六時中全てを愛せと言われてもそこまで愛せる自信はない。この関係性が終わってしまうのが嫌なのに、そのような歌をいつも聞いてしまう。
でも、素直になれない私は気持ちを伝えられない。付き合いだけは長いから普段の行動から察して欲しい。でも、私があくびをする意味は知らないで欲しい。
小学校に進学する準備をしている頃、親の仕事の関係で引っ越すことになった。
その時、引っ越した家の隣に住んでいるのが今の彼氏、瑠依だった。
何をするにもどこに行くにも一緒で高校も大学も就職先も全部同じだった。
そんな彼からの好意は気づいていたけど知らないフリをしていた。そんな竹馬の友である瑠衣は私の23歳の誕生日の時に告白をしてきた。
期待に応えるように私は返事をしたけど、最近では私の方が彼のことを好きで好きで、愛してやまない。_
「美乃里。」
私のことを呼ぶあなたの声が好き。私はその声を聞いてすぐに振り返る。
小さい頃よりもすごく伸びた身長と色っぽくしっかりとしたかっこいい顔立ち、ちゃんと守ってくれそうなその身体。成長したんだなって改めて実感するよ。
「ごめんな、待たせたよね。行こっか。」
「全然待ってないよ。大丈夫。」
彼ほど紳士的な人が他にいても私は彼を選んでいる。
記念日になると毎回必ずそう思える。
「今日も楽しかったよ。ありがとう」
「俺も、楽しかった。次の記念日はもっといい所連れていくから。」
「うん、楽しみにしてる。」
別れ際みたいな会話をしても住んでる所は一緒。でも、初心の気持ちを忘れることがなく、いつも私は彼の言葉に心が揺れる。
私たちの家に帰ると”この世界に2人だけ”という雰囲気になる。
そうなった途端、彼は私に抱き着きいつもの決まり文句を言う。
「今日…良い?」
丁寧に、貴重品を扱うかのように優しくしてくれるそんな行為は愛されてると実感できた。
なのに私はそんな時でも素直になれず「好き」と中々言えない。
「美乃里っ、好き、愛してる。」
「…わたしもっ、」
微かに、でも確かに彼に聞こえるようにそう言う。そして、2人で眠りにつき朝を待つ。_
「おはよう。」
珍しく、彼が先に起きていた。並べられている色とりどりな朝食と昨日脱ぎ捨てられたままだった服はちゃんと畳まれていた。
「おはよ。朝ごはんも、服もありがとう。 」
「全然良いよ。」
この優しさは私だけに向けて欲しい。他の女のとこになんか行かないで_
ある日突然惨事は起きる。
仕事が終わり息抜きとして帰りに1人で居酒屋に入る。
1、2本飲んだら帰ろうと思ったが、聞き覚えのある 声と聞き慣れた名前が私の鼓膜まできちんと伝わってくる。
「瑠衣さん、さっきの話ほんとですからね。」
瑠衣と同じ部署の女の人の声だった。
「でも、俺彼女いるから…」
「えー、吊れないなぁ。一晩だけでも…」
ほんのわずかに自分が腹立っているのが分かった。
言い寄られて、どうせすぐ他のところにいってしまうんだ_
私は2人にバレないように会計をし、家へ帰った
「ただいま。」
「おかえり。誰かと飲んできたの?」
「あぁ、ちょっと…」
私が帰った30分後くらいに帰ってきた瑠衣には淫らな行為をした感じは無いが女物の香水の匂いが漂う。
「同じ部署の…女の人と飲んでたんだよね?」
「…なんの事だよ。」
「私もその場にいたんだ。まあ、聞き覚えのある声がしてきてすぐ帰ったけど。」
私たち二人の間で嘘は絶対無し、と付き合う時に決めた。
あっさりこんな裏切られてしまうとは思わなかった。嘘をつくなら、私のための私が喜ぶ嘘をついて欲しかった。
「ごめん、ごめんな。なんもそういう事はしてないから安心してほしい。」
「うん知ってるよ。知ってるから早くお風呂入ってきて。ちょうど沸いたから。」
「わかった。もうアイツの連絡先も消しとくよ。 」
瑠衣が着ている服にクソみたいな私以外の女の香水の匂いが付いているのが気に食わない。上書きして、もっともっと私が1番瑠衣に愛されてて瑠衣から愛されてるって証明しなきゃ。
瑠衣が寝る頃、こっそりと瑠衣の鎖骨にキスをした。
何日か経ち、あの気まずかった雰囲気もなくなってきた頃、仕事が安定してきたので少し休憩を取る事にした。
私が社内の休憩室に入ろうとした時だった。
先客がいて、男女の影が見えたと思って身を潜めて見ていた。
瑠衣とクソ女だった。
女は瑠衣に寄りかかり首元にキスをした。咄嗟に女を引き剥がした瑠衣は逃げるようにこちら側にある扉へと向かってくる。
一瞬だった。
逃げ出してきた瑠衣と目が合い、すぐに私は目を背けた。
「美乃里…?」
「見ないで、触んないでっ、どうせ瑠衣は私から離れていくんだ…」
「美乃里、違う、俺は美乃里しか_」
手を差し伸べてくる瑠衣の手を振り払い私は立ち上がって自分の部署へ戻った。
その日は体調不良と言い早退が許されたので早めに帰った。
「美乃里っ、美乃里… 」
帰ってきた瑠衣が慌てて私に駆け寄る。
「ごめん、俺…」
瑠衣が帰ってくるまで涙が枯れるほど泣いていた私を瑠衣は抱き締めた。
瑠衣の体温が心地よく、壊れていた涙腺も徐々に戻っていく感覚がして私は瑠衣を抱き締め返した。
「美乃里。お願いだから離れていかないでほしい。」
他の女に身体触らせたくせに、その瑠衣の執着が頭に来た。
「もう全部分かってるから…でも、私以外にもう身体触らせないでね。」
「うん、触らせない。美乃里だけの俺だから。」
この日の夜はお互い愛を確かめ合うかのような少し激しい夜だった。
ちゃんと瑠衣の私っていう印は付いたのにまだ何か心の奥にあるモヤは晴れなかった。
でも、人間誰しも失敗はあると自分に言い聞かせ、モヤを閉ざした。
それでも、あの女は諦めなかった。
もう瑠衣に近寄れないと知った女は瑠衣に関する噂を社内に広めた。
その度に私は”嘘”と分かっていても瑠衣に確かめた。ちゃんと否定をしてくれるのが嬉しくて、私以外の女の影なんて全くなくて変な噂が広まったとしても、私は安心しきれていた_
「美乃里ちゃん、聞いた?瑠衣さんって夜がすごく激しいってこと…」
また新しい噂かと思った。
「またそれデマでしょ?誰に聞いたの?」
「またあの人からの噂らしい。今回動画送られてきてるんだよね…」
「え…?」
強制的に見せられたその動画は明らかにクソ女と瑠衣が行為している動画だった。
顔が青ざめていく。
ただ瑠衣に確かめれば真実は分かる。なのに今までとは違った証拠のある噂で一瞬にして閉ざされていたモヤが溢れてきた。
私、裏切られたんだ。
「瑠衣、別れたい。」
久しぶりに遅く帰ってきた私に瑠衣が抱き着こうとした瞬間言葉を放った。
「なに、何で」
「あの噂。あのクソ女と一晩過ごしたんだね。」
「なんの事だよそれ…!」
ほかの女に触れたその手で今まで私を抱き締めてたと思うと吐き気がした。
なんで私、瑠衣にこんなに悩まされないといけないの?
「すっとぼけたって無駄だから。お願い、私と別れて。」
「無理、俺やっと美乃里と付き合えたのに。こんなあっさり終わるなんて嫌だ…」
「そんなに私のこと好きなら、私の事も考えてよ!もう辛いの、ずっと悩んで…クソ女をどうやって諦めさせようかとか、何してもモテる瑠衣が嫌い… 」
好きとは言わないのに嫌いとはハッキリ言えてしまう私が嫌だ。
「とにかく、私は1ヶ月以内にここ出るから。 」
「は、ちょっと待てよ 」
瑠衣の言葉を遮るように私はお風呂にすぐ入り瑠衣とは別々の部屋で寝た。
そんな日々が続き、やっと新居が見つかり瑠衣と最後に話し合った。
「俺、なんもしてあげられなくてごめん。美乃里が大好きだから自分でも理解できないほど執着してた」
「私も好きって全然言ってあげられなくてごめん。全て受け入れてあげられなくてごめん。全て愛せなくてごめん。」
しばらく沈黙が続いた。出てきそうな涙をあくびをして誤魔化した。
「なんでこんな時にあくびするんだよ」
意味なんて聞いてこないで。もっと泣きたくなってしまう。
「荷造りしてて眠くてさ。」
「なんだそれっ」
瑠衣が笑ったのを見て私もつられて笑う。
引越しトラックが全部荷物を運び終わってそろそろお別れの時間となった。
「さよなら。楽しかったよ、またね。 」
「俺も。まぁまた明日、さよなら。」
そして私たちは笑って2人別れた。
時間が経てば復縁をしたくなるけど関係性は多分今のまま。もっと瑠衣に夢中になる恋がしたかった。街中を歩く私はマカロニえんぴつの「ミスター・ブルースカイ」を聴いていた。胸が苦しくなるほど、今の私にぴったりの歌詞だった_
小学校に進学する準備をしている頃、親の仕事の関係で引っ越してきた女の子がいた。
俺の家の隣に住むことになり、すぐ打ち解けて仲が良くなった。ずっとその子に夢中だった。どこに行くも一緒で正直気味悪がられても仕方ないと思ってたけどその子が23歳の誕生日の日に告白したら付き合えた。
でも、つい最近になって別れた。
「美乃里…美乃里…」
彼女がいた時の家は彼女色に染まっていたのに1つも彼女に関するものが残っていない。
こうなったのも俺のせいなんだな。
部屋では自分の泣く声が響いていた。
でも泣いているのは美乃里のせいでは無いから、ただ、 泣いて美乃里を忘れたかったけど忘れられない。俺が泣いているのは夜のせいにしよう。別れたくないっていうのは美乃里には届いて無かったんだ。
生憎、美乃里は俺のことを骨まで愛してはくれてなかった。そんなことはどうでもいいけど。美乃里と一緒にいられるだけで至福だった。
同じ部署の女に一晩を過ごしたというデマを流されたのが原因で別れた。
美乃里と会社が同じでたまに顔を合わすだけで泣きそうになるのに、クソ女が俺に縋ってくるのは気持ちが悪かった。そして今いる会社を辞め、転職した。
美乃里のいない、新しい環境に慣れてはきたものの、美乃里と過した日々が大好きだった。都会の人は冷たくて、美乃里と俺の間に何があったのかなんて誰も興味がない。俺の過去なんてどうでもいいみたいだ。
なんとか、美乃里を忘れようと他の人と付き合ってもその関係はすぐ終わる。余計に過去の、美乃里との思い出を思い出してしまって胸が痛くなる。そんなことならいっそ幻だったって言って消えてくれないか何とも思った。
美乃里と別れる時、「まぁ、また明日。」と言ったのが自分に刺さる。別れる時は晴れ晴れした気持ちで別れたくて表では笑ってたのに、美乃里の顔が切なくて、どのように別れればいいか分からなかった。どうか、別れるから、美乃里を納得させてあげられないでこういう結末にさせた俺を許して欲しい。
「やっぱり美乃里が好きだ。」
また泣いては涙が止まらなくて、今までの事を忘れるなんて自分には出来なくて。
まだ美乃里のことを捨て切れない。
復縁したい。
復縁したら次は絶対離さない。
「この思い、いつか美乃里に届いてほしい。」
切り替えるために泣いて涙が止まらなくなった情けない俺をもう一度、好きになってくれませんか?
ミスター・ブルースカイからオマージュさせた作品でした。マカロニえんぴつさん、ライブ行くほど大好きです😘