テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
第5話読み終わったわ!あのDUPAガキのホバーボード、めっちゃスリルあってヤバかったね。でもユウが「遅刻は絶対にあり得ない」って選択したのがカッコよかった。エリサとの再会シーンも胸熱だし、マグネティックストームの世界観設定が細かくて引き込まれた。続き気になる〜🔥
<<マグネティックストーム発生中>>
「はい!大変申し訳ございませんでした!!」
モンシナ抜き3日目。「裏」を持たずに謝るのは勇気がいる。
「…わかったよ。そこまで愚直に謝られちゃあね。むしろ清々しい 苦笑。もういいよ。終了押してくれて。…友人にも君を推しておくよ。」
(やった!終わった!)
受領人に言われた通りに僕は”解消済み”を押す。すると途端に登録者数がひとつ増え、高評価もついた。
「あの…これ。」
「笑)まぁねぇ。君見てたら応援したくなっちゃってね。マテリアルステート検査も近いことだし…君も開拓者志望なんだろう?…間に合うと良いね。」
「はい!本当にありがとうございます。」
受領人と別れた後、僕は大きく伸びをした。
あのバスでの出会いから3日。今日はついに、エリサとの初デートの日だ。
彼女と付き合うことになってから、なんだか調子がいい。このままモンシナだってやめられそうだ。
僕はスクロールで(パーツ資産)を黙唱した。
ーよし!あと数回のギグで身体パーツが買えて晴れてマテリアルステート率達成だ!!
足取りも軽く、待ち合わせ場所のミラバースのゲートに”ジャンプ”しようとした、その時だった。
「おい君!」
さっきの受領人に呼び止められた。
「臨時BH(ブラックホール)ニュースやってるぞ。マグネティックストーム(磁気嵐)が来てるらしい。スクロール使用はやめたほうがいい。かぁ~…また半月は飛べないだろうなぁ。君の仕事にも影響出るんじゃないのかね?」
「ええっ!?」
僕は教えてくれたことへの感謝もそこそこに、試しにスクロールで(現在地:更新)をポップした。
が……。
(あ)
うわっ!なんだ!?自分の身体の再生が遅い。内臓、骨、皮膚…先に顔が再生されたからか、自分が”組み上がっていく”様子が見えた。
気持ち悪りィ。
でも、
なるほど…人ってこんなふうに出来てるんだな。
…いや、息。
息できない。
ー少しビビった。
「汗 あぁ…もうここまで…MS−マグネティックストームの影響が出てるのか。」
これからエリサと会うというのに!
原因は人類の”ジャンプ過多”。また宇宙の重力場が歪んでプロバイダの規制がかかったんだ。
まぁ前回は規制がなかったせいで下半身だけジャンプしたり、壁の中に再生したりで事故だらけだったからなぁ。
…あの頃は忙しかった。
ミリメシ(携帯食)を口に放り込みつつ3分程で着替えてスクロールを取り出す。
「”ミラバースまでの行き方”は…と。」
こうなるとこれも昔のスマホじゃないか。…不便すぎる。
「”ジャンプ”がなかった頃ってみんなこれで経済回してたんだよな…。」
”人間はAIより賢い”。
昔は本気でそう思ってたんだよな。
シナプスで頑張ってる人間が機械に勝てると思ってたんだから。
…僕はこの時代の方が好きだ。
「あ、ヤバい!今日はバスがバカ混むぞ!!」
どうでもいい時代回顧を置き去りに僕は全力で通りに走り出た。
<<通りにて>>
「あー…やっぱり。」
大通りに出た僕はすぐに絶望した。
すでにシャトルバスに拾って貰おうという人達で道沿いには長い列ができていた。
これじゃどう考えてもデートには間に合わない。
「あぁ終わった…。」
「何?お兄さん困ってんの?」
ん?後ろから誰かに声を掛けられた。
振り返るとデニムのジャージを着た3人組が立っていた。
…あまり普段関わらないタイプだ。
「な、どっか行くんなら送ってやるよ?バスの10倍出すんならね(笑」
そいつはそう言うと身体の後ろからホバーボードを出した…いわゆるスケートボードの浮くやつだ。
…これ違法じゃなかったっけ?
乗る訳がない。
「あーいや?遠慮するよ。ありがとう。それじゃ…」
彼らはニヤつきながら話した。
「お兄さん、あの列見てみなよ。もう2時間は動いてないぜ?ARGOもMSの対応に演算取られてこの状態ってあと2日は続くって言うぜ?
…あぁこの板(ホバーボード)の事か?これは未登録だから大丈夫だって。ARGO以前のものだしな。」
…未登録って。
あぁコイツら”DUPA(ドパ)ガキ”か。
詐欺、賭博、違法レース。
興奮するなら何でも金にする連中。
…関わらないほうがいい。
「ちなみにどこ行くつもり?」
リーダーっぽい人物がしつこく尋ねてきた。
僕はうるさいなぁと思いつつ、ついつい口が滑ってしまった。
「…ミラバースのゲートだけど。」
「10分切るぜ。」
「えっ?」
聞き間違えか?
「俺なら迷ってる間に送ってやるぜ、って言ってんだ。」
ギーク的思考開始0:00:00:00
(1:自分の足で最短ルートを走って1つ前のシャトルバスに追い付く、でも乗れない可能性がある。2:自力でたどり着く。約30分の遅れと息切れで会話どころじゃない。3:ジャンプする。仮に出来たとしてMSのせいで同じ形に再生される保証がない。4:高額だが街を知り尽くした彼等の話に乗る。)
ギーク的思考終了0:00:00:02
「なら…頼む。」
自分でも驚いたが、初デートで遅刻なんて”絶対”にあり得ない。
ー支払いは、まず半額分のコードをスキャンして、時間内に着いたらもう半分支払う。10分過ぎたら払わなくていいぞ、だそうだ。
令和期のピザの配達みたいだ。けど意外とちゃんとしてるんだな、コイツら。
「いや、その方が興奮するじゃんよ?」
…世の中には正しさではなく速さが基準で動く人がいるようだ。
「んじゃお兄さん。俺の後ろで捕まって…違うよ腰に手を巻くんだよ。肩なんかじゃ出た瞬間にスッ飛ばされるぞ。」
言われるがままにホバーボードの後ろから前のDUPAガキの腰を両腕でガッチリホールドした。
「そう、そうやって…痛ェな。なんだお兄さん、物凄ェ腕持ってんな!…まあいいか。行くぞ!」
僕
「あぁ…急いで!」
DUPAガキ
「い、 わ 、ず 、も、 が、 …な!!!」
それは正気とは思えないスピード、そして運転芸術。道じゃない場所を道とみなす発想力。靴の下、わずか5cm先の路面が全部マーブルに見えるし、まわりは…ショート動画のスワイプのように過ぎていく。しかも速すぎてボード上には重力が発生している。
…もう上も下もない。
「ひゃーははは!!」
DUPAガキはとっても楽しそう。
だが、僕の腹の中ではミリメシが暴れてる。
そして …着いた時には人生すべてが変わってしまった気がした。
「最高だったな!!」
目がキマったリーダーが側溝でリバースしている僕に同意を求めてくる。
…無理です。
「ストンピット!スティージー!!デュード!!」
仲間同士でのハイタッチと独特な言語で意思疎通した後、リーダーは僕の手首を掴んだ。
「んじゃ、お兄さん。残り半分を…”ピッ”…と、サンキュー。いや…腰が痛えよ 苦笑。掴まり方がまじヤベェ。こっちがゲロるかと思ったよ。…でもあんた凄ェな 笑。 俺たちみたいなの信用して普通に”使う”んだからよ。気前のいい俺達のパトロンさんにゃ次回分の”送料”はサービスしとくよ 笑。 購入履歴にアドレス貼っといたからまたなんかあったら呼びなよ。じゃぁまたな、凄ェ腕のお兄さん!!笑」
ははは…普通にカモられたって事か?
またな…だと?誰が使うか!!
あぁ…気持ち悪ぃ。
でも…
「ど、どうだ。間に合ったぞ…約束の時間!」
そして…
「お待たせ!ユウ!」
その僕の大切な人がミラバースのゲートからゆっくりと再生された。
(続く)
#SF
古流斬
4,070