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恋白兎
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TOP4、最俺、ppの8人はいつもと同じように笑っていた。
少なくとも、最初はそうだった。
「じゃあ、始めようぜ」
テーブルの中央に置かれたカードを、一人ずつ引いていく。
8人は、昔からの友人だった。
休日に集まって遊ぶこともあれば、誰かの家で夜遅くまでくだらない話をすることもある。
だからこそ、このゲームは面白いと思っていた。
――リアル人狼ゲーム。
8人の中に一人だけ、人間のふりをした人狼がいる。
昼は全員で話し合い、怪しい人物を一人”処刑”する。
夜になれば、人狼が一人を襲う。
最後まで人狼を見つけられなければ、人狼の勝ち。
「おい、顔に出過ぎだろ」
「え?」
向かいに座っていたkyくんが笑った。
名前を呼ばれて、僕は慌ててカードを胸元に伏せた。
「何が?」
「いや、なんか緊張してるな〜って」
「だって人狼ゲーム久しぶりだもん」
「まあ、最初はそんなもんか」
彼はいつものように笑った。
何も変わらない。
いつもの彼だった。
――だから、誰も気づかなかった。
彼のカードに描かれていたのが、人狼のマークだったことに。
一日目の夜。
照明が落ちる。
人狼だけが目を開ける。
俺はゆっくりと顔を上げた。
薄暗い部屋の中で、眠っている7人を見渡す。
誰を選ぶか。
それだけだった。
なのに。
視線が一人のところで止まった。
︎pp︎︎
ppは小さく寝返りを打った。
しばらく動かなかった。
そして俺は、――別の人物を選んだ。
「……一人、いなくなった」
朝。
その事実を知った瞬間、空気が変わった。
昨日まで笑っていた友人が、一人減っている。
ゲームだと分かっていても、妙な恐怖が胸に残った。
「誰だと思う?」
「昨日の投票、ちょっと怪しかったのは……」
話し合いが始まる。
疑い。
弁明。
反論。
そして、投票。
また一人が脱落する。
夜になる。
また一人がいなくなる。
昼になる。
また一人を疑う。
それを繰り返した。
そして。
6人。
5人。
4人。
3人。
気づけば、残っているのは3人だけだった。
kyくん
ltさん
そして僕
「……おかしい」
僕は呟いた。
「何が?」
「人狼、まだいるよね」
「いるだろうな」
彼は淡々と答えた。
隣にいたltさんが、僕たち2人を交互に見る。
「じゃあ、どっち?」
「僕はkyくんじゃないと思う」
僕は言った。
理由はなかった。
ただ、ずっと一緒にいたから。
彼が人狼だなんて、考えたくなかった。
「じゃあ、ppは?」
「僕は違う」
「……俺も違う」
沈黙。
結局、投票はltさんに集中した。
そして――。
kyくんが最後の一人になった。
その瞬間。
ゲームの勝敗を知らせる音が鳴った。
人狼の勝利。
僕は、意味が分からなかった。
「……え?」
彼が顔を上げる。
そして。
ゆっくりと笑った。
「……俺だった」
背筋が凍った。
「……嘘」
「本当」
「じゃあ……ずっと?」
「ああ」
kyくんは立ち上がった。
僕は反射的に一歩後ろへ下がった。
「待って」
彼が近づいてくる。
一歩。
また一歩。
さっきまで仲の良い友達だったはずなのに。
今は、その一歩が怖い。
「……来ないで」
思わず声が震えた。
彼の足が止まる。
そして、僕を見た。
その目は、いつもの優しい目ではなかった。
鋭い。
静かで。
何を考えているのか分からない。
私は思わず息を止めた。
――もしかして。
今から襲われる。
そう思った。
「……怖い?」
「……少し」
「そうか」
彼は目を逸らさなかった。
むしろ、じっと僕を見つめている。
その視線だけで、身体が動かなくなりそうだった。
「俺が人狼だって分かったら、やっぱり怖いよな」
「だって……」
僕は小さく呟いた。
「僕を殺せば、終わりなんでしょ?」
彼は答えなかった。
長い沈黙。
そして――。
「そうだな」
低い声だった。
「お前をやれば、俺の勝ちだ」
その言葉に、胸が締めつけられる。
彼が一歩近づく。
僕はまた一歩下がった。
背中が壁に当たった。
「……やめて」
彼は目の前まで来た。
逃げ道はない。
鋭い目が、僕を見つめている。
今にも何かされる。
そう思った。
けれど。
彼は何もしなかった。
「……でも」
彼の声が、少しだけ柔らかくなった。
「お前は、やらない」
「……え?」
「お前だけは殺さない」
僕は目を見開いた。
「なんで……?」
「分からない」
彼は苦笑した。
「ゲームだから、勝つためならそうするべきなんだろうけどな」
そして、少しだけ視線を落とした。
「でも、できなかった」
「……」
「ずっと一緒にいたから」
胸の奥がざわついた。
彼は人狼だった。
みんなを騙していた。
仲間を一人ずつ殺した。
それなのに。
僕だけは殺さないと言う。
「じゃあ……どうするの?」
彼は少し考えた。
そして、僕の目を見る。
「2人で出る」
「……え?」
「このゲーム、俺はもう勝った」
「でも……僕を残したら……」
「勝敗なんてどうでもいい」
kyくんはそう言った。
「お前はやらない」
その言葉には、妙な強さがあった。
「2人でここから出よう」
僕は彼を見つめた。
怖い。
今でも怖い。
目の前にいるのは、最後まで正体を隠し続けた人狼なのだから。
でも。
同時に、分かってしまった。
この人は僕を傷つけるつもりがない。
「……本当に?」
「ああ」
「途中で気が変わったりしない?」
「しない」
「絶対?」
「絶対」
彼はそう言って、手を差し出した。
僕はすぐには取れなかった。
しばらくその手を見つめる。
そして――。
恐る恐る、その手を取った。
kyくんは何も言わなかった。
ただ、静かに扉へ向かって歩き出した。
僕もその後ろをついていく。
廊下は暗い。
誰もいない。
さっきまで8人で笑っていた場所なのに、今は2人しかいない。
扉の前で、彼が立ち止まった。
「……なあ」
「何?」
「俺のこと、まだ怖い?」
僕は少し考えた。
「……怖いよ」
「そっか」
「でも」
僕は彼を見た。
「今は……一人でいる方が怖いかも」
彼は一瞬だけ驚いた顔をした。
それから、小さく笑った。
「じゃあ、行こう」
「うん」
扉が開く。
朝の光が差し込んできた。
ぼくは目を細める。
その隣には、人狼だったkyくんがいる。
最後まで騙し続けた人。
僕を殺せば勝てた人。
それでも、僕を選ばなかった人。
2人は何も言わずに歩き出した。
ゲームの勝者と敗者。
人狼と人間。
本来なら、決して並んで歩くはずのない2人だった。
それでも――。
この日だけは。
2人で、生きて帰ることを選んだ。
… 𝗍𝗁𝖾 𝖾𝗇𝖽
コメント
1件
めっちゃ読み終わったあとの余韻がヤバい…!!😭💕 人狼ゲームのピリピリした空気が最初から最後まで続いてて、最後のkyくんの「お前だけは♡♡♡ない」に完全に心持ってかれたよ…。 ずっと一緒にいたから、って理由が切なくてエモすぎる…。勝者と敗者が並んで歩くラスト、めっちゃ好き。続きすごく気になる!!🌸