「沈黙を破る勇気」
高校2年の結衣は、目立たない存在だった。
だが、クラスの西村という生徒は、彼女をターゲットにして毎日のように理不尽な罵声を浴びせていた。
「またミスかよ。お前、ほんとに使えねえな!」
「障害者かよ、お前の頭じゃ理解できないか」
「ゴミみたいに黙ってろ」
そんな言葉を聞くたび、結衣の胸は締め付けられ、涙が出そうになる。でも、誰も助けてくれなかった。
教師も、「まあまあ」としか言わず、結衣の心の傷は深まる一方だった。
ある日、結衣はふと思いつく。
「証拠を残せば、逃げられないかもしれない…」
スマホで西村の暴言や理不尽な行為を録画し、SNSやLINEで広めるのではなく、信頼できる教師に直接提出する計画を立てる。
放課後、結衣は勇気を振り絞り、校長室で録画データを見せる。
校長と教師は目を丸くし、すぐに西村を呼び出した。録画を見せられた西村は、言い訳もできず顔を真っ赤にする。
校長は静かに、しかし厳しく告げた。
「これは決して許される行為ではない。今後の処置は重くなる」
その日を境に、西村の理不尽ないじめはピタリと止まった。
結衣の勇気は、クラスメイトにも希望を与え、少しずつ周りの人間関係も変わっていく。
結衣は心の中でつぶやいた。
「声を上げることは怖かった。でも、黙っているよりずっと強かった」
結衣が勇気を振り絞って、西村の暴言や理不尽な行為の証拠を教師に提出した日から数週間。
西村は屈辱に燃えていた。クラス中に結衣の勇気が広まり、自分の恥が周囲に知られたことが耐えられなかったのだ。
「どうにかしてあの女を黙らせてやる…」
西村の頭の中は復讐の計画でいっぱいだった。
放課後、結衣が一人で帰宅する道を尾行し、スマホを取り上げようとしたり、カバンを荒らそうとしたりした。しかし、結衣はすでに用心しており、スマホは録画機能で常時録画中。さらに、通学路には防犯カメラもあった。
西村が手を伸ばす瞬間、録画と防犯カメラの映像が決定的な証拠となり、警察が駆けつける。
「あなた、窃盗未遂の現行犯です」
その言葉に、西村は顔を真っ青にし、言葉も出せなかった。
後日、学校と警察の調査で、これまでのいじめや暴言の数々もすべて確認され、西村は正式に指導と処分を受けることになった。
結衣は事件の後、クラスの中で孤立することなく、むしろ尊敬される存在となった。
「立ち向かう勇気が、自分を守る力になる」
そう心の中でつぶやき、少しだけ笑顔を取り戻した。
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