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1件
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きっと俺はお前に恋をしてしまった。
出られるはずのないこの場所で
永遠に終わらないこの時間の中で
するはずのない
できるはずにない恋を…
一定に動く時計の音
無機質な機械の音
白い壁にほとんど何も置かれていない部屋
扉を空けた先には同じように無機質な部屋がいくつかあるだけだった。
青 お疲れ様。
ずいぶんと疲れてるな。
桃 んー。なかなかうまくいかなくてねー。
そんな会話をする相手は白衣を着た20代の男。
白衣のに合わない首元のネックレスにかかる指輪がキラキラと光る。
青 …
指輪。
いつも大切そうに身に着けている。
何年も何十年もいや、それ以上に一緒にいるような気がするがこいつのことは正直あまり知らない。
それでも。
指輪が煌めくたび、揺れるたび胸が苦しくなるような呼吸が浅くなるような。
俺の中の黒く渦巻いた気持ちが溢れそうになる。
桃 どうしたの?
そんなに見つめられたら流石に照れるよ
なんて言いながらパソコンに何かを打ち始める。
青 そういえば…桃は研究者やろ?
俺は被験者なのに別に何もしとらんけど
ええんか?
桃 ッ…うん大丈夫。
なんて言うが一瞬あいつの肩が震えたのは気のせいだろうか。
青 だって俺…子供の時から…ずっと…?
自分で言って言葉が詰まる。
青 なぁ…俺っていつからここにいるんや?
桃 …
青 だって確かに記憶があるうちにはずっと
お前がいる。
いつだってだ。
でもおかしいよな。
俺がもしも生まれたときからここにいた
なら…お前はいつから…
言っていて気分が悪くなった。
昔聞いたことがある。
桃はAIの研究をしていると。
考えたくもないのに学校に行っていないはずなのに嫌というほど思考が回る。
記憶の断片や無数の数式 が俺の頭を駆け巡る。
そのくせにどうしても自分の幼少期の頃は思い出せなくて。
あいつが小さな身体で俺を見ていたことなんてなくて。
それなのにどうしてもいつも記憶にもあいつはいて。
考えたくない。
そんなはずがない。
それでも消せない可能性。
俺がAIである可能性。
青 なぁ…俺って人間やんな…?
だって…
だって…!!!
そんなはずが…ッ
桃 …
青 何か言えよ…
何か言えって…なぁッ!!!
頼むから…否定してくれよ
大量の情報を持っているこの頭でも これ以外の可能性は思いつかなくて。
桃 …失敗だった。
青 は…ッ?
重たそうに口を開いたかと思えば出てきた言葉は俺の胸を引き裂いてきて。
桃 ごめん。
俺が青を作った。
AIに感情を持たせたらどうなるか。
でも失敗だった。
感情なんか持たせるべきじゃなかった。
青 ちょっと待てって…
どういう意味だよ…
そう言いながらも 皮肉なことに俺の頭はその言葉を処理していて。
ただ心だけが置いていかれていた。
桃 …青は…俺のこと好き?
急に何を言い出したかと思った。
それでももうぶつけてやろうと思った。
青 好きや。
こんな冷たい空間でお前だけはいつだっ
て暖かかったからな。
お前がいてくれればそれだけで良かった
から。
それなのに…
現実はこんなんなんか。
俺の声は震えていた。
視界はぼやけていた。
はっきりと見えないあいつの顔はなんとも言えない笑みをしていた
青 …ッ
背筋が凍った。
あいつは楽しそうにしていた。
確実に喜んでいた。
青 何…笑って…
俺は本気で…ッ
桃 そっか…
そっかぁ。
俺のこと好きなんだ?
嬉しいなぁ。
何を言い出すかと思えば意味のわからないことばかりを言い始めた。
桃 俺も好きだよ
青 え…ッ?
桃 青を創ってる時ね胸が高鳴ったの。
俺ずっと実験してたし。
こんな感覚初めてだった…
これが恋なんだって思った。
なんだ。
人間じゃないこと嫌がってたし。
もう俺のこと嫌いになっちゃったかと思
ったよ…
でも好きなら話が変わってくる。
実験は大成功だ。
あははッ!!
怖かった。
俺が見たことある桃はもういなくて。
狂っいると思った。
それでも本能が叫んだ
—ここから逃げるのは不可能だ—
桃 急に辺りを見回してどうしたの?
逃げようなんて考えてないよね?
考えても無駄だけど。
青 扉は…ッ
桃 ないよ。ここは俺と2人きりの場所♡
考えてみなよ。
俺がここから出たことがあった?
青 ッ…!
桃はいつも俺といた。
片時も離れることなく。
仕事だってここにいた。
席を外したってここから直結する別の部屋にいるだけだった。
当然人間がこんな場所で生活するなんて不可能だ。
桃 気づいたってもう遅いんだよ。
ねぇ俺らを縛る時間も、危害を及ぼす
ような奴らもいない。
永遠にここからは出られない。
青にはもう俺しかいないんだから。
永遠の時を過ごそう?
俺と一緒に。
首元に揺れる指輪にはあいつの誕生日が彫られていた。
機体 桃 製造日 1/5 製造者 黒
機体 青 製造日 12/2 製造者 桃